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犬島に一目惚れした。

さて、また番外編です。

今回は犬島。わりとノリで行った島だったんですが、良すぎて良すぎて完全に"推し"島になってしまいました。

結論からいうと、ちょっと良すぎたので来月か再来月に数週間滞在したいと考えています。そんな完全に一目惚れした犬島について。

あ、わし同担歓迎なので大丈夫ですよ。あなたも安心して犬島を"推し"てくださいw

とりあえず犬島の基本データを。

【犬島基本データ】岡山市東部、宝伝の沖約3kmに浮かぶ岡山市唯一の有人島。銅の精錬所跡を再生した「犬島精錬所美術館」や、犬島の集落で展開される「家プロジェクト」など、アートの島として注目を集める。(引用:岡山観光WEB)

いやまぁ、確かにざっくりまとめりゃその通りなんだけども…。でもね、犬島の魅力は単にアートだけではないです。さて、今回はそんな犬島の魅力の話を


とはいえ、犬島を語るに当たって『犬島精錬所美術館』これはやはり欠かせません。チケットセンターから真っ直ぐにこの美術館に誘導されることからもわかるように、この美術館は現代の犬島の【顔】です。

チケット売り場からの眺め。既に美しさが溢れている。

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銅の精錬の残りカスであるカラミ(鉄60%ガラス40%程度)を固めて作ったカラミ煉瓦の迷路のような道を抜けて、美術館のエントランスへ。
入場の前にこの空間を散策させることで、美術館への興味を高めていくわけです。いい設計ですね。

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天気も相まって最高以外の感想が出てこない。なんかもう既に泣きそう。


こちらが精錬所美術館。

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1909年から始まった犬島の銅精錬産業は、価格の暴落により僅か10年でその幕を閉じます。

美術館のシンボルである煙突は、創業の末期に作られたもので、殆ど使われることなく綺麗な形で残っていたそうです。故に、この煙突を中心に美術館の建設が行われました。

この美術館も内部の撮影は禁止ですが、ご心配なく。この美術館の本当の美しさは、その設計にあります。写真などなくて大丈夫。

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これは美術館のコンセプトアートです。

左側が【暖】の空間。ガラス張りの温室のような空間に、床は蓄熱するカラミ煉瓦。冬でも多くの熱エネルギーを蓄えることができます。

右側が【冷】の空間。光の届かない地下であり、常に鍾乳洞のようにひんやりとしています。夏でもしっかりと冷気を蓄える空間です。

そしてその中心の空間は、【暖】と【冷】のバランスが取れた部屋。通年で快適な温度を保ちます。

煙突は、空気を循環させる役割を担っています。煙突の根元の空間もガラスで覆われた温室状態となっており、煙突内の空気は常に外気よりも高温になるように設計されています。この高温の空気が煙突から外に排出されることにより、美術館全体で、常に【暖】と【冷】の空気の流れができます。

従って、窓の開閉のみで、年中快適な温度を保つことができています。そして、それぞれの空間にそれに適した作品が展示されることにより、美術館として完璧な状態に仕上がっているわけです。

…どう?美しくない?わしはこの美術館、3周しました。設計も作品も素晴らしすぎて。無駄がないということは最高に美しいということです。全てが噛み合っている。まるで完璧な証明を見ているようです。美しい…美しすぎる…。

ちなみにトイレはこんな感じ。何故か後ろ向きの便器。

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座ってみると

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丁度目の前にあのコンセプトアートが。
トイレを前向きに配置し、扉に描いてもいいはずです。しかし、あえて利便性捨ててトイレを後ろ向きにし、カラミ煉瓦にコンセプトアートを。こうすることで、改めてレンガをこの美術館の一部として捉えることができるわけです。色もいいですねぇ。
トイレひとつとってもこの雰囲気のよさ。素晴らしさしかない。

更に、この美術館は産業遺構としての側面もきちんと担っています。美術館の周囲をぐるっと一周するコースが設けられており、かつての精錬所の雰囲気をしっかりと感じることができます。

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自分はこれまで、少なくはない数の廃墟、特に鉱山や炭鉱といった廃墟を巡ってきました。廃墟探索というのは、基本は無断侵入です。まぁ違法ですね。それでもそこにあったものの姿が見たくて、時には朝4時に人目を避けるように侵入してその姿を見てきました。

ここはそんな廃墟のイメージを覆す島です。もちろん管理はされていますが、【残していこう】という意志が強く感じられる遺構です。

廃墟というのは朽ちていくのが当たり前で、あそこついに取り壊されたってーとか、震災であの階段ついに崩落したーとか、最近荒らされて落書きがすごいーとか。

そういう無法地帯が普通なわけです。逆に観光地になっているところなんかはツアーになっていたり、やたら人気がでていたり、なんかこうじゃない感がある。

犬島はそのバランスが非常にいい。飾らず、気取らず、そのままの姿を見せていこうという試みが美術館の雰囲気も含めて綺麗に成立している。

廃墟オタクとしてはかなり満点に近い遺構です。まぁ人が少なくてほぼ貸し切りで見られたってのもあるかとは思いますが。

それでも、それを含めてこの美術館は本当に"完璧"だったわけです。


このコンセプトからもわかるように、犬島は“環境に負荷をかけない“ことを第一に考えた島です。
かつて精錬所からの煙外によって自然を失ってきた島だからこそ、持続可能な生活に力を入れているのです。

このコンセプトは、美術館以外にも適応されています。
その象徴的な施設が、美術館から見て島の反対側にある『犬島 くらしの植物園』です。

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ここは、2016年から運用されている“作っていく植物園“です。
草むしりや収穫等、来場者が参加しながら作り上げていく参加型植物園。

ハーブや野菜はもちろんのこと、鶏が飼育されていたり

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トイレはもちろんコンポジット

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シンクからの排水は傾斜土槽によって浄水され、やがて海に流れ出ます。

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傾斜土槽とは、土壌の浄化機能を人工的に再現したものです。槽の中には、微生物やミミズの棲家となる多孔質のスポンジ等が入っており、1日約150Lの浄化能力があります。

できるだけ環境に負荷を与えないように、アートだけの島にならないように、犬島の将来のための取り組みを行なっているのが、この植物園です。


自分はここで1時間ほど草むしりをさせてもらいました。

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仕事の終わりにはしそジュースをご馳走に。

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とても美味しい。。。

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ここにくる前から、家庭菜園や自給自足の生活について、少し理解や知識を深めたいと思っていました。将来どうするかは置いておいて、経験としてそういうものが欲しいのです。

経験が増えれば、それだけ生き方の選択肢も増えます。それは生きやすさに繋がるわけで。

でも、どこでその体験をするかというのは重要です。
スーパーもホームセンターも近くにある、amazonもすぐに届く、そんな土地でそのような生活をしても、それは本当に必要に迫られているというわけではないのではないか。本当に必要とされている土地で、そういう生活をしてみたい。


犬島の持つコンセプトと、自給自足の生活、それらは非常にしっくりきたのでした。


犬島は、精錬所の前は採石が主な産業であり、その為に島の多くが削られてほとんど日陰ができないという環境にあります。
現在でも、採石は犬島の貴重な産業です。
(瀬戸内の島はいい石が取れる島が多く、採石を主要産業にしている島が結構ある。)

海岸を歩くと、石多くを見ます。
植物園の近くには採石場もあり、その様子が伺えます。

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瀬戸内の島はアートを押出している島が多いですが、そんなのはせいぜいここ数十年です。有人島である以上、それ以前に何かしらの産業があったはず。
島を見るときには、その元からあった産業についても目を向けないといけないなと思いました。


そんな採石の事業も含めて、犬島はとても美しい島です。

海岸も美しい。

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町中も美しい

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人によってどう感じるのかは異なると思いますが、自分はこの島の雰囲気も、人も、すごく好きだなと感じました。

歩くにつれて、島の思想を知るにつれて、ここで暮らしてみたいと思うのでした。

何が好きと言われたらわりと直感になってしまうのですが…。はたしてこの直感はあっているのか否か…。


植物園の管理人さんと連絡を交換したので、来月か再来月あたり、また来てみようと思います。少し長めに滞在してみて、色々考えてみます。

犬島、ほんとにいいところなので是非行って欲しい。

ではまた~。






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