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オタクは妖怪美術館に行け。

四国旅の途中だが、妖怪美術館が想像以上に良かったので個別に紹介する。
小豆島だからといってオリーブとか素麺とか言っている場合じゃない。
オタクは妖怪美術館に行くべきなのだ。その理由を書いていく。

まず、妖怪美術館は小豆島にある妖怪をテーマにした美術館だ。小豆島出身の妖怪画家、柳生忠平さんが館長を務める。
詳しい説明や施設紹介はHPをみてもらった方が早いのでそちらにお任せする。

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最初はこの妖怪美術館はあまり行く気がなかった。というのも、口コミがそこまでいいわけでもなく(値段が高いという意見が多い)、かつ写真ではそんなに魅力が伝わってこなかったからだ。

ネットを見ても基本的には妖怪のフィギュアの写真が並ぶだけなので、余程妖怪や異形の類が好きな人でもない限り、ネットの事前情報だけでは「絶対に行きたい!!」とはならないのではなかろうか。

しかし自分の過去ジャンルが妖怪ウォッチであることや、妖怪を題材にした好きな漫画(『あやつき』/寺田亜太朗)があることから、折角なので行っておくかとなったわけです。


そんな期待値で行ったが、間違いなく最高の傑作美術館だった。感銘を受けた点を語っていきたいと思う。

妖怪美術館は受付兼物販の建物から始まり、展示は1号館から4号館までそれぞれ別の建物で展開される。(特別展の5号館もあるがコロナの影響で閉館中。また、小野川直樹さんの折り鶴美術館も一緒に行くのをお勧めする。)



この1〜4号館が、迷路の町と言われるほどの狭い路地が入り組んだ土庄の一角に配置されており、美術館を巡ると街の中も散策できるという仕組みである。(といっても本当に狭い範囲に配置されているのでそこまで散策という感じはしないが)

さて、前置きはこれくらいにして良かったポイントを挙げていこう。


いい点その1。
【無人スタイルの展示】

美術館では通常建物ごとに受付や係員の人がおり、言い方は悪いが監視されていることが多い。ところが、妖怪美術館は人がいるのは受付の建物のみ。
パンフレットに5桁のパスワードが記されており、1〜4号館を含めた全ての建物がキー入力での入場になる。一応隠しておいたが、多分毎日パスワードは変わるんだろう。

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この無人スタイルがとてもいい。一見普通の蔵や空き家のボロい扉に厳重なキーがついているミスマッチ感が既に最高なのに、そこに自分だけが知っているパスワードで入る楽しさ。オタク心が刺激される。

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秘密のパスワードを貰うってのは幾つになっても楽しい。

美術館の入り口がこの裏路地の奥というだけでもうわくわくする。表に扉を設置もできた筈なのにあえての裏口入場。非常にわかっている。

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自分のペースで先に進める、何時間いてもいい。館から館に移動する際に路地で迷うのも一興。心置きなく自分の妖怪世界に入り込めるシステム、これはかなりポイントが高い。

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いい点その2。
【世界観の徹底】
この妖怪美術館は、「小豆島は妖怪が集まる島」という設定の元に成り立っている。この“妖怪はすぐそこにいるよ“という世界観への徹底が素晴らしい。

この世界観を徹底させるために、妖怪美術館は音声ガイドに従って進むことが推奨されている。パンフレットにQRコードがあり、それを最初に読み込んでスタート。その為にフリーWi-Fiも完備。

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音声ガイドは主に妖怪が語りかけてくるスタイル。スタートからエンディングまで、約3分ほどの音声が全部で26用意されており、それだけで1時間を超える大ボリュームだ。
話しかけてくるといってもただのナレーションではなく、SEや音楽、複数妖怪の会話や突然のイベントと、音声だけでも飽きさせない工夫が続く。
ただやりましたという感じではない。歩きながら、作品を見ながら、鑑賞の中で世界観を作り上げていく。声優も脚本も非常にきっちりしているのがわかる。これはちゃんと練られた創作、本気の妖怪創作なのだ。 

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徹底振りは音声だけではない。小道具もいい。
3号館の内容は時期によって変わるみたいだが、今回は妖怪オリンピック2020という題材の展示であった。88年に一度開かれる妖怪の大運動会という設定だ。これもまたすごかった。

何がすごいって、こんなポスターや

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紀元前1500年からの妖怪オリンピックの詳細が書かれた年表

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架空の新聞記事まで

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これ、絶対オタクが超楽しんで作ったやつじゃん!!
わかる、架空のイベントの記事やポスター作るの超楽しいよね!!
イベントのノベルティでキャラが生きてる世界のグッズ作るの楽しいもんね!!
新聞記事風のペーパー俺も今度やろう!!

そう、自分がオタクであるからこそ、妖怪大好きオタクが楽しんで作った感がダイレクトに刺さってちょっと泣いちゃうのだ。


細部までこだわっているからこそ
道で迷っても、「妖怪の仕業じゃぁ仕方ないなぁ〜」
どこかで物音がしたら、「妖怪の話し声かな?」
路地を覗いては、「ここに妖怪が隠れているかもしれない」
といった風に空想世界にどっぷり浸れるのだ。

徹底した世界観で空想に没入させる。体験型美術館として大成功と言えるだろう。

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ここまで徹底された創作を前に“子供なら楽しめるけど大人はちょっと.....“とかいうレビューをしてしまう人とはお友達になれない。そんなだから大人は妖怪が見えないとか言われてしまうのだ。
(まぁそういう設定は創作としては美味しいんだけども...ウィスケー大人別れ妄想とか散々しましたし....)

本気の創作には本気の没入で応えるべき。
オタクとオタクの約束だ。


いい点その3。
【造形が最高】
これはちょっと人を選ぶかもしれない点なんだが、立体物の造形がめちゃくちゃにいい。
妖怪美術館は作品としては妖怪のフィギュアが大半だ。そんな中で造形が最高ということは、大半が最高ということだ。

わしはプラモやフィギュアといった立体物が好きで、AFVのジオラマやらをよく作っていた。もちろんワンフェスやホビーショーにも行っていた。そんなわけで立体を見るのは非常に好きなのだ。

見て、この河童。イケメンすぎ。ガレキ15000円でお迎えしたい。

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絡新婦エッチすぎ。襲われたい。

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こんな沢山並んでる人形もひとつひとつよく見ると…

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象頭美女。美麗にも程がある。

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単眼双子。可愛いでしかない。

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着物にガスマスク。性癖の塊か?

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オリンピックを監視する千里眼ちゃん。やだ、可愛いやん。。。。

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尻拭い。やだ、やっぱり可愛い。。。

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救護班の天狗。お前はカッコいい。手当てして。ついでに結婚して。

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こんなのが無数にある。
ひとつひとつに作者がいて、その妖怪の姿を想像し、粘土を捏ね、素材を考え、塗料の色を作ったのだ。本気で妖怪と向き合って、時間をかけて本気の立体を作ったのだ。空想を現実にする為に。

練られた設定にクオリティの高い造形。面白くないわけがない。
反対に造形に全く興味がない人にとっては、ふ〜ん気味悪...で終わってしまうのかもしれない。ホビーショーでも興味なさそうな人はつまらなそうだもんな〜。青島のデコトラシリーズとか見るの好きよ、わしは。

そんなわけで、妖怪美術館は立体好きさんにもお勧めなのである。

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ー以上がわしが妖怪美術館をオタクにお勧めする理由である。
展示内容はそんなに詳しく説明しない。自分で行ってみてほしい。
体験型美術館とは行ってみないとわからないものなのだ。
今日は自分以外は一人しかお客さんを見なかった。お陰でゆっくり3時間以上見ていられたが、少し寂しい気もする。

オタクはいいものを布教したい。
この記事で興味が出てくれたオタクが居れば幸いである。
是非小豆島に妖怪に会いに行ってほしい。






ただ一つ不満があるとすれば

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看板で魅力が出せていない!!
もっといいところなんだ妖怪美術館は!!



おしまい



旅の費用にさせていただきます!