いきもの

雨が降ってきた。
ざんざんと降ってきた。
なりやむ様子がなかったので、ぼくは傘を持たずに外に飛び出して雨を飲んだ。
鉄の味がした。
雨は鉄だったのかと思った。

傘を持った人が良かったらこれどうぞと差し出してくれたけど、雨に濡れていたいんで大丈夫ですと言って返したら変な顔をして傘を持った人は立ち去った。

そうか、ぼくは雨に濡れていたいんだ、
と自分の言葉でぼくは気がついた。

雨は止む気配がない。
このままずーっとずーっと降り続けばいいのにと思う。
このままずーっとずーっと降り続けば、地球は水浸しだ。
ノアの方舟の話は本当だったのかもしれない。
またそうなればいいのにと思った途端に雨はやんだ。
傘を持っていた人たちは、傘をたたんで、その傘を持ちにくそうに運んでいる。
ほうら、やっぱり傘を持たなくて良かったとぼくはほくそ笑む。

今度は太陽が照りつける。
太陽が照りつけても誰も傘を差さない。
見えないだけで、太陽からも何か降ってきているのかもしれないのに。
ぼくは雨は好きだけど、太陽の見えない何かは嫌いだから、日陰を選んで歩き続ける。

また雨が降ればいいのになと思うぼくはきっと前世はカエルだったんだ。
その時の記憶がぼくを太陽から遠ざけようとする。

今もカエルのままだったらいいのに。
そしたら学校なんていかなくてすむ。
でもまてよ、カエルの学校って曲があったような、、、と思ったけれどメダカの学校だったと気付いてぼくは一人で大笑いした。
でもメダカの学校があるくらいなんだからカエルの学校もあるに違いない。
宿題もあるのかな、先生もいるんだろうな。
みんなとちょっとでも違うと仲間外れにされて、意地悪される。
ボスカエルがみんなを牛耳るのだ。

そんなことを考えてたら、人間もそんなに変わらないかなと思ってきた。
他の生き物はどうだろう。ありなんかは?
いや、でも小さすぎてすぐ踏み潰されちゃう。
じゃあ象は?象は群れで生活するらしいからきっと象間関係が大変そうだ。

他にも色々考えてみたけど、どの生き物も大変そうでため息が出た。
どんな生き物でもきっとみんなそれなりに大変なんだなぁ。
そう思いながら空を見上げると、見えない太陽の何かがぼくにたくさん降り注いでいた。
雨は降りそうになかった。

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