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人間関係スキルの基本は挨拶よな。っていう話

今から10数年前、私が山雅サポーターとしてアルウィンに通い出す直前に胸スポンサー様の工場に業務請け負い会社に採用されて勤めていた時の印象的というか今でも忘れられないエピソードがあります。
今日Twitterでこんな引用RTを宇都宮徹壱さんがされていて以前から書き残したいと思っていたので(このタイミングで書かねば)と書き始めた次第です。


まあ真ん中をバッサリ切り落として乱暴に頭と尻を繋いだら
「挨拶をしたら人間関係が良くなったよ」って話なんだけどそれだけじゃあまりに味気ないからもうちょっとしっかり説明したいと思います。

思い出せる感じだと当時こんなメンバーで働いていました。

おれ:
アラフォー独身、そこそこ長く倉庫業の会社で働いていたが失業、たまたま出来る分野の求人があって訪問した業務請負会社の窓口のおじさんにうまいこと言われてE社で新しく立ち上げるプリンター製造ラインの部門リーダーの一人になった。製造業未経験。
タケ:
クセの強いメンバーの中でもトップの扱いにくさを持つ元半グレ界隈にいたという以外は経歴謎。
何故かおれの事を「兄貴」と呼び慕ってくるので何かと面倒をみる事になっている。
基本いつも不機嫌顔の札幌出身アラサー。
アカミネ:
その姓の示す通り沖縄出身の20代。
工場に来る前は歌舞伎町でホストをしていたというが工場にいる女性たちへの接しかたをみると疑わしい。やっぱりよく聞くと指名が全然とれず稼げなかったそうだ。
なにかと物事をガンダムに例えたがるが繋げ方が強引で周囲にはまるで伝わらないがそれを止める気配はない。製造業未経験。
マル:
難しいアカミネのガンダム例え話を理解できて翻訳してくれる数少ない仲間。地元出身
家業不振のために働きにきた。
演歌歌手の雰囲気をもつアラサー
製造業未経験。
ウシ:
同じく地元出身。
その名の通り図体は大きい。この中で一番若い。
雰囲気に流されやすいお調子者。
シゲさん:
北海道から採用されてきたメンバー。
自営でかなり調子いい時もあったようだが投資に失敗しマンションを売り払って借金を返済して単身で流れてきた。
このメンバーの中で一番常識があるひと。
製造業未経験。

ね?見事に寄せ集めですわ笑
ついでに言うとE社の社員さんも寄せ集めで「こないだまで守衛所にいて、いきなりあの工場行けって言われて来たけどこれから何すりゃいいだ?」って方もいて仰天しました。

そんな全国から集められた従業員が一番多い時では200名以上が同じフロアにそれぞれ役割を持ってプリンターの製造に関わっていました。

作っていたのは家庭用のではなくプロユースに耐えうる大型プリンターで、昼はE社の社員と派遣社員で、夜は我々請負い会社で、と人員が入れ替わりながら生産することになっていました。

一番多く人員を要するのは組み立てラインに固定で入って流れ作業を行う部署で大多数のメンバーがそこ、その次が完成品をテストする部署、一番少ないのが僕たちの「物流」と呼ばれる部署で大体二十数名、唯一男のみの構成でした。

その中で優男と言えるのはおれと演歌歌手の雰囲気を持つマルくらいでまあ全員が集まるとイカツイ班でして。
そんなつもりは全然ないんだけど他の男女混合のグループからは

「なんかこわい人たち」
「なに考えてるか分かんない」

と見られていて、
それがまた僕たちの(そんなんじゃねーのによぉ)
(俺たちがいなきゃお前らだって生産出来ねーのに、なんで嫌われるんだろう?)みたいな切り離された気分がどんどん蔓延していきました。

僕自身が柄にもないリーダーとして現場に向かう時に抱いた「だったら仲間たちの為に影ひなたなく動く自分の考える理想のリーダー」を演じて働いてみよう!としていた気持ちも理想は理想なのか?と折れそうになった時も正直ありました。

メンバーもやさぐれてきているのを宥めるのが僕の仕事みたいな感じで、
特にガキ大将的な存在なので目をつけられやすいタケや元ホストなのに話す時に訛りが気になるのか挙動不審になるアカミネ、ただデカイってだけで目立っちゃうウシなんかはしょっちゅう名指しで職長から「注意喚起」みたいなのを伝えられてカバーしていたのですが…

ある日喫煙所にいる時に揃ってやってきたそいつらから「アニキ、俺ら相談したんすけどもういっすよ。俺ら庇うとアニキまで仕事しにくくなっちゃうじゃないすか」と言ってきて。
「どーせ俺らみたいなのこういう場所には馴染まないんすよ」とまで。

イヤイヤちょっと待て!と
それは聞き捨てならんぞ!と。
「どーせ」ってのはなんだ!
今までお前らが我慢して馴染もうとしてきたの自分で否定するな!と。
今お前らが不貞腐れて、拗ねて投げ出したら
「ほら見ろ。ああいうのは駄目な奴らなんだ。」って言われんだぞ!
周りはお前らの事を見てんだよ!
どう振る舞うのかを。

ちょっとの事で拗ねてグレちまうのか、
それとも腐らずに前向きに来るのかを。
「見てますかね?」
「見てるさ!少なくとも俺は見てるわ!」
自分でもびっくりするようなセリフが止めどなく口から出てきました。
でもじ多分それはずっと俺が掛けて欲しかった言葉だったんだと思います。
(こっぱずかしいけど続けます)

確かにずっと俺がかばうのも限界あるからなんとかしなきゃ、とも思っててさ。
ほんでだ、とりあえず今このフロアで実に評判が悪い俺らのイメージを一旦は認めて、だ。
その上でどう逆転に繋げるか考えようじゃねーか。と
俺たちみたいなのがさ、道端で猫を助けてたら一気に「実はいい人!」てなるじゃん?

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あれやったらどうだ?
「いやアニキ、それ猫見つけんの難しいす」
まぁそうだよなぁ

じゃまずは挨拶だな
今ちゃんと挨拶できてる奴ら少ないじゃん
仕事が出来るどうこう以前にまずは挨拶だろ?
それに人に挨拶されて嫌な気持ちしねえだろ?
そもそもが。
俺らそっからスタートし直そうや。

はい、ようやく長い前振りを経て挨拶に辿り着きました笑
そして「どうせやるなら物流係全員でやろうや」とみんなを集めて
「自分らのイメージは自分らで守ろう!」
とハッパを掛けてイメージチェンジ作戦が始まったのです。

以下ミーティング時の質問より
Q「嫌いな奴もいるんですが、そいつにもするんですか?」
Aもちろんします。君がそいつを嫌ってることはそいつも気づいてます。だからこそ挨拶、です。
ケンカも人間関係も先手必勝です。

Q「誰に挨拶すればいいのかわかりません」
Aこの工場に入ってから会う人全員です。他の現場だとか関係なく全員です。区別してたら漏れがでますよね?もし君だけが挨拶されなかったら寂しいでしょ?だから全員です。

Q「こっちが挨拶しても無視する人がいます。ムカつくんですがそれでもやらなきゃ駄目ですか?」
Aそういうやついますよね。ただもしかするとこっちのやり方が気づきにくかったのかもしれないからすぐにキレないであげようね。
それでも無視が続くんならそいつが悪いです。
ほっとこう!
俺らは人として正しい事をしてるだけです!

こんな感じでちょっと強引かつ効果が出るのかどうか半信半疑で始めたのですが…
もう改めて書くまでもないけどみるみる目に見えて関係が良くなっていきましたね。
そりゃそうだよね、みんな知らない人ばかりの職場に地元を離れて働くためだけに知らない土地に来てるんだから不安だったんだよね。
君が相手を不安に感じる時、相手もこっちを不安に見てるんだ

イケメンのマル以外が部品を持っていくと露骨にいやな顔をしていてみんなが
「あそこやりにくいからマルがおばちゃん説得してよ」
とか言われてた難所もみんなと話せるようになって一気に雪解けして
「あんたたち仕事いつも楽しそうでいいわね!」なんて言われてヨッシャ!ってなったし、
仲間のシゲさんからも、
「いやー最初は職場選び失敗したなぁなんて思ってたんだけどさ、良かったよここに来て」って言われたのも地元の人間としての役割を果たせた気持ちでうれしかったなぁ。

この成功体験は自分自身の勝手に拗ねてやってきた生き方に気づかされるきっかけになりました。
この現場自体はその後海外生産へとシフトしてしまい、あの面倒くさいまるで僕自身の合わせ鏡みたいな奴らとは解散以来それきりですが今でも「あいつらちゃんとやってっかなぁ」なんて思い出す人生のターニングポイントでした。

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