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いらんもんに愛をこめて


置き場所にこまる置き物をもらった。

ここタイに住んでいるとよく見かける類の置き物だけど
もらったのは初めてだ。

近所の人にもらったと言うタイ人の同居人に
そうよかったねと答えながら、そっと箱に戻した。

飾るつもりなど ないのだ。

サイズの合わない箱に苦戦している私を制して
あの正面の棚に飾ろう
と同居人である友人は言う。

飾る気か

あの、北欧風ナチュラルステキ雑貨で整えた
あの棚にこの黄金のねずみを。

友人はさらに言う。
せっかく厚意でくれた贈り物なんだから飾らなきゃ

正論。
いやしかし、論は正だが 認識が誤だ。
大きく誤っている。

人は厚意でねずみの置き物を贈るだろうか。
うし年に。


この場合の正しい認識は
子年にもらったねずみの置き物、
丑年になってもういらんから誰かにやろう
ってことでうちに持ち込まれた。
だと思う。

だって書いてあるし

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HAPPY NEW YEAR 2020


この場合の正解は
そっと箱に戻す だったはずなのに
結局友人の正論に負けて
去年のねずみはあの棚に落ち着くことになった。

もうあかんわ

しかしその翌日、金のねずみは宣言通り
財を招くことになる。

今年になってタイでもまた深刻化してきた
新型コロナウイルスの影響か、
半年近くほぼ売り上げがなかったうちの店に、
(同居人と共に中古車販売店を営んでいます)
久々にお客さんが訪れて
ポンとキャッシュで一台お買い上げくださった。

やっと手に入った現金収入!

本当はねずみの置き場所に困るよりも
もっとずっと深刻な
もうあかんわ 状態だったんだけど
ちょっとあかんくなくなった。

そしてこの件により、
私は認識を改めることにした。

キャッシュが手に入るなり考えを変えるなんて
文字通り現金な人間だと自分でも思うが、
いらんもん押し付けられた
と思い込むよりも
厚意で贈ってくれたんだ
と想像するほうがずっと、
今後気分よく過ごせるはずだ。

客が全く来ないうちの店を心配してくれたご近所さん。
応援したくとも 車を買ってくれるわけにもいかず、
思案していたところ目に留まった金のねずみ。

ああ、そういえば去年
うちにこの置き物を飾ってから、
不思議と収入が増えたんだった。
財を招く金の鼠。

そうだ。 このねずみを贈ろう。

こうした経緯(想像)でうちにやって来たこの置き物。
だったらあの棚に
きちんと居場所をつくってあげるのが正解だ。

ちょっと休んでいきますか ねずみさん。



思いのこもった贈り物はありがたい。

来年になったら私も
誰かのために贈ろうと思う。
とら年に
このねずみを

思いをこめて。




誰かもらって。






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