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音を繋ぐ場 金沢蓄音機館を訪ねて【蓮ノ空舞台巡礼】

はじめに

2月29日、イオンシネマ金沢フォーラスにてFes×LIVEを観た後にPleasure Feather 乙宗梢さんのカードが実装され、その背景に目を奪われました。

蓮ノ休日の貴重なデート風景

インターネットに流れてきた情報によると、どうやらそこは金沢蓄音器館という施設とのこと。金沢巡礼中であった私は早速翌3月1日に訪問し、この施設がこれまで繋いできたもの・想いに感激し、3月25日、4月13日、4月29日とこれまでに合計4度訪れました。今回は、そんな金沢蓄音器館を紹介したいと思います。

※:当館内には撮影禁止のマークが書かれた看板がありますが、スタッフの方に写真撮影が問題ないこと、及び撮影した写真を用いてインターネットで紹介記事を作成しても問題ないことを確認しております。

金沢蓄音器館について

金沢蓄音器館は初代館長である八日市屋浩志氏が集めた蓄音器540台、SPレコード(LP・EPレコードより一世代前のレコード)約2万枚のコレクションを、金沢市が譲り受けることで開かれた博物館です。そのコレクションのきっかけは、ゴミ置き場から持ち帰った蓄音器を集め、自分の手で修理したことであるとのこと。そこから数多くの寄贈があり、今に至っています。

1階にて展示される数多くの蓄音器

当館では電気を用いない蓄音器の仕組みや歴史の解説、LPレコードの視聴コーナー、アンティークのように綺麗に置かれた蓄音器の展示などもされていますが、特筆すべきは開館日の11:00、14:00、16:00の3度行われる聴き比べ実演コーナーでしょう。

2階の聴き比べコーナーが蓮ノ休日のイラストと対応しています

蓄音器の聴き比べ

本コーナーでは約30分間、館長をはじめとしたスタッフの方の解説のもと、10台の蓄音器の奏でる音楽を楽しむことができます。

まず初めに聴けるのは、あのエジソンが発明した円筒の形のレコード(蝋管レコード)です。曲目は1860年に作られたOld Black Joe。ノイズ混じりながらも、十分な迫力のある演奏にはただ驚くばかりです。それとともに、100年以上昔の演奏を今この瞬間に聴けること自体に素朴な感動を覚えました。

続けて、蓄音器・レコードの規格をめぐるエジソン陣営・ライバルのベルリナー陣営の争いの説明とともに、エジソン社製のレコードであるダイヤモンドディスクの視聴をします。ダイヤモンド・ディスクはその名の通り針にダイヤモンドが用いられており、100年以上経った今でも素晴らしい音を奏でていました。しかし、この規格争いはより安く、より有名な人の曲を販売したベルリナー陣営が勝利したとのことで、現代の規格争いにも通じるものを感じました。

エジソン社製のダイヤモンドディスク(左)と蝋管式レコード(右)

その後も、日本製の蓄音器で昔懐かしの日本の民謡を聞いたり、「蓄音器の王様」と呼ばれた蓄音器「クレデンザ」などを楽しんだりすることができます。こうして蓄音器の奏でる音を聴くと、不思議と当時の人たちが演奏していた姿が脳裏に浮かびます。

その中でも私が魅了されたのはマーク IXという名のイギリス製の蓄音器です。こちらはラッパがロンドンの電話帳を用いて作られた紙製のものとなっております。どデカいラッパから聞こえる音はまるで立体音響のような迫力を持っていました。
この蓄音器はソニー創業者の盛田昭夫氏が愛用していたものであり、盛田昭夫氏のご長女が当館の「聴き比べ」を体験し、寄贈されたとのことです。

ロンドンの電話帳でできた紙ラッパ

この他にも、どうやってレコードのカビを取るのかなど、蓄音器にまつわる話をユーモアたっぷりに聞くことができ、とても面白い時間を過ごすことができました。

音を繋いでいく想い

前述の盛田昭夫氏の愛した蓄音器の他にも、金沢蓄音器館には多くの蓄音器・レコードが寄贈され、大事に手入れ・保管されています。

そのうちの一つが、旧加賀藩前田家第17代当主の前田利建氏の愛用した蓄音器です。こちらは、蓄音器の王様「クレデンザ」を電気式に改造したものです。この蓄音器が金沢蓄音器館に来た当初は、何ヶ所も電気部品が壊れており再生できませんでしたが、技術者の方の協力のもと、当時と同じ音を奏でるべく時間をかけて修理されました。

旧加賀藩の殿様が愛した蓄音器の王様

ここにあるそれぞれの蓄音器が、作られてから現在に至るまで様々な物語を経て、ここに保管されているのでしょう。思うに、金沢蓄音器館には、100年以上の昔から続く、蓄音器を開発する人々、音を奏でる人々、そして蓄音器を愛する人々の想いが集まり、当館を訪れる私たちまで繋いでくれているのではないでしょうか?

蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの103期12月度Fes×LIVEにて、部長である乙宗梢さんが「時代を超えた想いのつながりを私たちは『伝統』と呼んでいます」と仰りました。

古くからのものが数多く残る古都・金沢には様々な伝統が息づいています。乙宗梢さんの言葉を借りると、100年以上続く音の記録・再生にかける想いを繋ぐ金沢蓄音器館も、金沢及び音楽における大事な伝統の担い手であると感じました。

103期12月度Fes×LIVEにて伝統について語る乙宗梢さん
なお、12月9日に蓮ノ空を知った私はここで完全に好き好きクラブのみなさんの一員となりました。

終わりに

3月25日の聴き比べ後、私の隣の席にいた女性がスタッフの方に言いました。

「祖父母が昔流していた曲を聴くことができて懐かしい気持ちになった」

伝統を繋いでいく先に何があるのでしょうか。大きなことではないかもしれませんが、このようなささやかな奇跡とも呼べる出会いをもたらすことも、伝統の持つ役割のひとつではないかと、隣でその言葉を聞いた私は思いました。

レコードは蓄音器の針によって演奏の度削られるため、いつかは聴くことができなくなってしまいます。しかし、蓄音器は本来音を奏でる機械であり、その魅力を伝えるために金沢蓄音器館では限りある貴重な体験を提供しています。蓮ノ空の舞台のひとつであり、また、「加賀友禅こらぼ」のスタンプラリーのスポットのひとつにもなっていますので、まだ来たことのない方は是非とも訪ねてみてはどうでしょうか?


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