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はじめての漫画〜鳥山明先生を偲んで〜

 鳥山明先生の突然の訃報を聞き、悔やまれてならない。世界中の人々に愛された珠玉の作品達を思っては、本当に寂しくなる。享年68歳とは、くしくもわが父と同じ。早すぎる旅立ちに、関係者やご親族もさぞかしご心痛だろう。
 
 私が初めて読んだ漫画はDr.スランプだった。きっかけは、親戚のお兄さんが少年ジャンプとコミックを買い揃える人だった事。それで私はもっぱら少年漫画ばかり読むに至ったのだが、本棚にズラリと並ぶコミックの中から最初に選んだのが、当時アニメ化されて見慣れていたアラレちゃんだった。とにかく夢中で読んだが、中でもよく覚えているのは、単行本にあった、本編の間に載っていた先生の「こぼれ話」だった。

 ドクターマシリトとは厳しい編集の方の事だとか、恋愛ドロドロは苦手なのでせんべい博士の結婚逸話はできるだけ省いた、など。鳥山先生のお人柄が偲ばれて、子供心に親近感を持った。そんな「こぼれ話」の中に、先生の子供の頃のエピソードがあった。
 
 先生は子供の頃から絵をよく描いていたそうだが、とりわけよく描いたのは、その時自分が欲しかった物だった。ある時は馬が欲しくなり、ずっと馬を描いていた、と。そうして絵が上達していったのかな、と振り返っておられた。

 先生の絵を目にするたびにこのエピソードを思い出した。描く事を生業になさって高名になられてもなお、優れた描写からは、どこか優しさやユーモア、茶目っ気が感じられた。純粋に楽しんで描いておられたとも感じられる絵は、いつも魅力的だった。もう新たに生み出されないという悲しみに慣れるには、世界はもうしばらく時間がかかりそうだ。
 
 これまでどれほど多くの人々に素敵な物語をもたらし、幸せを与えて下さった事でしょう。
 そのご功績を讃えるとともに、心より感謝を申し上げ、ご冥福をお祈りしいたします。

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