恋傷(れんしょう)

『恋傷(れんしょう)』
一人用声劇台本(不問 1)
声劇台本置き場…https://taltal3014.lsv.jp/app/public/script/detail/1912

《登場人物》
・火に魅了された人(一人称の変更OK)


《本編》

ふと思い出すことがある。

あんなに綺麗なのに触ると怪我をしてしまう。

『綺麗な薔薇には棘がある』なんて言葉があるけど正しくそうだと思う。

僕はそれに触れてみたいといつも思っていた。

「わかってるよ!危ないことくらい。それでも僕はこの手で触れてみたいんだ。」

僕は周りの制止も聞かず、手を伸ばした。

「あつっ…!!!」

触れた瞬間、僕の手に走る痛み。

痛みと手に出来た傷が確かに触ったのだと証明してくれている。

「怪我をするって分かっていて触るなんて、頭の可笑しい奴だとでも言いたげだな?僕は触れることが出来てとても幸せなんだ。この気持ちは誰にも否定させやしない。」

僕の周りにいた人たちは少しずつ姿を消していった。

やがて僕の周りには君しかいなくなっていた。

「皆君に触れるのは可笑しいっていうんだ。怪我をするのがわかっていたって美しい存在に触れてみたいと思うのは自然なことだと思うんだけどなぁ…。」

理解されなくたっていい。だって僕自身も皆の事わからないから。
「ねぇ、僕君とハグしたいんだけど…どう思う?怪我じゃすまなくなるのはわかってるんだけどさ…。」

君と長く触れていたい…でもその分だけ君と一緒にいられる時間は無くなっていく。

「死んでもいいって心から思った時には君を全身で感じたい。いいかな?」

風に揺れる君はいつにも増して魅力的で僕は引き込まれるように見つめ続けた。

僕が周りの人とは違うことくらい自分が一番理解してる。それでも僕は、あの子の魅力に抗うなんて無理なんだ。

「僕ね、どうせ死ぬなら君に包まれて死にたいなーって思うんだ。」

いつものように返事はない。それでも僕の心は満たされている。そこに変わらず君がいてくれている。それだけでこんなにも幸せを感じられる。

「僕は多くを望み過ぎてるのかな?今でも幸せなのに、もっと君に触れたいって考えてる。」

ある日…突然君が消えた。

僕のことを心配した両親が君のことを消した。

「え?心配?何を心配することがあったんだよ…。どうしてあの子を殺したんだ…!」

なんの罪もない君を…殺した。そんな両親なんて消えてしまえばいい。

「ねぇ、僕のこと助けてくれるよね?」

僕は君と一緒に家を灰にした。

また君と会えた。守ってあげられなくてごめん。そんな僕でも君は許してくれる?

もうずっと君と一緒に居たい。また離れ離れになるのは嫌だ。

「僕、君とこれからもずっと一緒に居たい。」

そっと触れた君は今までにない色で僕の体を包んで一緒に消えていった。

「死んだって構わない。君のことを最後まで感じていられるなら、幸せだよ。」

END


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