祝辞

2017年4月に東海大学入学式で祝辞を述べさせていただきました。公開するまでもないと思っていたのですが、幸いなことに問い合わせが最近多くなったので、残しておきます。

祝辞 -the sky is the limit-

新入生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。また、ご家族、ご関係者のみなさまにもお祝い申し上げます。

15年前、私はみなさんと同じ場所に座り、航空宇宙学科に入学しました。

4年次に、東海大学に航空操縦学専攻が設立され、その説明会に行ったことで、パイロットになることが私の目標となりました。そこから10年と少し、現在は、日本では10人程しかいない、女性の機長として、人を運び、繋ぐ仕事をしています。日本全体を考えても、女性のパイロットは、まだ1パーセントもいないのが現状です。

正直な話をすると、入学当時の私の髪の色はオレンジ色で、音楽が好きで、その頃は、将来は音楽関係の仕事につけたらいいなと考えていました。

航空宇宙学科に入学したのは、空が好きという単純な理由で、明確に空に関わる仕事を目標にしていたわけではなく、当時の私は、まさか自分が将来パイロットになるとは考えてもいませんでした。

私がパイロットを目指すことになったのは、あるきっかけがあったからです。 

大学生活の中で、いろんなことに目を向け、勉強や研究ももちろんですが、時に旅をし、時に仲間と語り合い、新しい視野を得たことで、成長した一方、自分自身がブレたような気がしたり、そのことで悩んだりしていました。

丁度、先のことを悩み、途方に暮れていた4年次、たまたまそのタイミングで、パイロットのコースが大学内にできるという話を聞き、たまたま、友人に誘われていった説明会で、自分の仕事にしようと思えるパイロットという職業に出会いました。

 きっかけは思いも寄らないタイミングでおとずれます。

もし、コースの設立があと一年遅かったら、もし友人が説明会に誘ってくれなかったら、私はパイロットを目指すことはなかったかもしれません。

それでも今、その偶然が重なり、そのきっかけをチャンスとして掴むことができたからこそ、現在、航空会社で機長として、働くことができています。

これから、みなさんは大学生活に入ります。

大学生でいる期間は、人生の中でも一番、自分のためだけに時間を使うことができる期間です。もちろん大学を出てからも時間は作ることはできますが、自分のためだけに、全ての時間や情熱を注げるのは、大学生である期間だけです。

大学生活のなかでは、きっかけとなる出会いが幾つもあります。

それは人との出会いであったり、物事との出会いであったりします。

その出会いを、きっかけとしてチャンスに変えて活かしていけるかは、みなさんそれぞれにかかっています。

 また、出会いは、受け身でいるだけでは、きっかけにすることはできません。

世界情勢も大きく変化する中で、2020年には東京オリンピックがあり、みなさんは大学生活の中でオリンピックを経験します。日本が大きく変化するタイミングに、大学生として、それを肌で感じ、一番動きやすい立場にいるということです。

今、世界は大きく変わりつつあります。この数年で今ままでなかった職業が生まれた様に、職業さえも自分で作れる時代になりました。

この先、自分で興味があることにはどんどん挑戦をして、好きなことに出会えるように動くこと。そして、一つでも夢中になれるものと出会えたら、全力で、打ち込んでみてください。それは、勉強や研究、またはスポーツや音楽、ファッションやゲームでもなんでも構いません。

今、ここにいるみなさんはエネルギーであふれています。

そして、大学生だからこそ様々な変化を取り入れ、活かす柔軟性があります。次に繋げていくことができます。今、エネルギーであふれているみなさんが、それを活かさない手はありません。それを重ねていくことで、今、想像もしていない未来がつかめるかもしれません。挑戦し、変化し、成長し、前に進むこと、これを重ねて自分を成長させてください。

東海大学は操縦学専攻も含め、専門的な学科や専攻がとても多く、その中では、同志と呼べるような友人に出会えるかもしれません。

一方で、東海大学は総合大学であり、他学部他学科の学生と共通科目で交流する機会があり、また他学部他学科の授業を受けることもできます。

自分で選んだ専門を学ぶ場所だからこそ、総合大学の良さを活かして全く違う専門を学ぶ学生と多く話をして、視野を広げて欲しいと思います。

大学で学ぶということは、単に、勉学を行うことだけではありません。

学ぶということは、つまり、自分を育てることです。

みなさんが、大学で何を学ぶかは、みなさん次第です。時間があるからこそ、将来への不安など、多くの悩み、考えることがあると思います。それを乗り越えるには、仲間という友人たちの支えがとても大切になります。行き詰まった時には、語りあうことを恐れず、まっすぐに向き合ってのりこえてください。

 思う存分学び、思う存分楽しみ、思う存分悩み、思う存分好きなことを探し、思う存分行動に移してください。

 自ら考え、創意工夫をして実行し、その経験を自分の糧にしていく。そして成長した自分を、更に活かして欲しいと思います。

それではみなさん!

空って、何色だと思いますか?

青色?白色?それとも透明ですか?色々ありますね。想像して見てください

私は、普段、空で仕事をしていますが、

飛行機から見る、虹ってどんな形をしていると思いますか?

半円ですか?楕円ですか?まっすぐですか?

空からは、まんまるの虹も、場所によってはまっすぐのさえ虹も見えることがあります。

自分のいる場所や環境によって見え方も大きく変わります。

では、空ってどこから、どこまででしょうか?

手のひらから、体育館の天井までしょうか?

この体育館の上から、大気圏まででしょうか?

実は空って、無限なんですね。

 

飛行機が飛ぶ3万フィートの空でも、それより上を、見上げればそこには空があります。

そうです。空はどこまでも無限に広がっています。

ここで、みなさんにぴったりの言葉があります。

The sky is the limit. 直訳すると、空がリミット、空の高さが制限となります。

つまり、制限がないということです。

そして、この言葉には、可能性は無限大という意味があります。

まさに、今の皆さんを表しています。

皆さんの可能性はこれから大きく広がっています。

空を大きくするも小さくするも、みなさんそれが、決めていくことです。

The sky is the limit.

壁にぶつかった時、行き止まった時、空を見上げてこの言葉を思い出してください。

You can do it, the sky is the limit.

この言葉をもちまして、みなさまへのお祝いの言葉と致します。

ありがとうございました。



東海大学工学部航空宇宙学科卒

松宮 純恵




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