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【短歌】文語の定型短歌を詠む

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自作の文語定型短歌をまとめるためにマガジンを作りました。今までに創作したものから定期的に note に横書きしてマガジンに追加します。初出は『橄欖《かんらん》』誌ですが、一部を修…
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#天窓

【短歌】薪束の|文語の定型短歌を詠む 32

天窓を覆ひし雪の垂れ絹を透かし射し入る朝の光は 昨夜また新たに降りし雪の上に鹿の番ひの足跡のあり 暖炉の火首尾良く熾きて疾く立ちて良きにそのまま眺めて居りぬ 薪束の陰に隠れて眠りゐし越年蜻蛉覚めて飛び上ぐ 陽光に氷柱きらめく昼下がり夫の薪割る音響く森 2014年1月詠 『橄欖』2014年4月号 初出

【短歌】月光|文語の定型短歌を詠む 29

天窓の長方形のそのままに白き月影食卓に落つ 就寝前たしかに消灯せし筈と訝るほどに月光の射す 唐松も赤松も栗も黒一色 グリム童話の夜の森なり 怖きほど美しき月に狼の遠吠え響く心の耳に 仏蘭西語ラ・リュヌは女性 独逸語のモントは男性 ムーンはどちら **************** 日本語の「月影」の「影」が英語の shadow ではなく、月の光のことだと知ったのはいつだったろう。その時の衝撃だけは覚えている。