マガジンのカバー画像

【短歌】文語の定型短歌を詠む

39
自作の文語定型短歌をまとめるためにマガジンを作りました。今までに創作したものから定期的に note に横書きしてマガジンに追加します。初出は『橄欖《かんらん》』誌ですが、一部を修…
運営しているクリエイター

#異邦人

【短歌】リラの花|文語の定型短歌を詠む 2

*子どもの頃に住んでいた欧州の街の初夏の思い出を詠む リラの花ほころび初めて暖かき光を充たす風の都に 母の縫ひし碧き木綿のワンピース胸高鳴りて初めてを着る 黒髪を伸ばしし我を追ひ越して少年ちらりと振り返りたり 「外つ国の君へ」と記せし文受くもこの街にては吾ぞ異邦人 飛び来たる燕の跡を目で追へば大聖堂の塔のそびゆる 登下校の途中にいつも見ていた Votivkirche (Votive Church) 初出:「橄欖」2011年6月号 一部を加筆修正しています。