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【短歌】文語の定型短歌を詠む

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自作の文語定型短歌をまとめるためにマガジンを作りました。今までに創作したものから定期的に note に横書きしてマガジンに追加します。初出は『橄欖《かんらん》』誌ですが、一部を修…
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2023年1月の記事一覧

【短歌】凌霄花|文語の定型短歌を詠む38

通勤に走る東名高速の防音壁に凌霄咲きぬ 凌霄が視界に入り今年もまた期末試験の季節と思ふ 濃緑の葉と凌霄花に数週間コンクリートの肌装はる 凌霄の連想毎年同じなり期末の準備と目黒の母と 凌霄花揺るる彼の庭 母のこと 弟のこと 姪たちのこと 2014年7月詠 『橄欖』2014年10月号 初出 目黒の実家は大正時代に母の祖父、私の曾祖父が買った家である。海軍工廠のあった横須賀から上京し、目黒の海軍技術研究所に赴任することが決まった時に、通勤に便利な場所で探した家だった。

【短歌】青森に|文語の定型短歌を詠む 37

心の臓突如止まりて帰天せりペトロ川村英成神父 厨房に響きし異音に馳せ入れば砕けしグラスと川村神父 七日前神父の立てし昼ミサに最後と識らず与りし我 青森に生まれ育ちし人なれば言葉少なに温かき人 謙遜と祈祷と奉仕に生きたまへり 聖ベネディクトの良き弟子たりし 2013年11月詠 『橄欖』2014年9月号(特別付録の2月号)初出 Father Kawamura が心臓発作で倒れたという英語のメールは三位一体ベネディクト修道院長のローマン神父様からだった。I heard

【短歌】一人たりとも|文語の定型短歌を詠む 36

短歌 すみ 採点の英作文に見出しぬ憲法改正を是とする論を アメリカに憧れる子ら数多をり歴史の闇を知らざりしまま 戦争を仕掛ける者は常に言ふ生命守ると平和の為と 学生らを見るたび思ふ戦地には一人たりとも送らざらんと 戦前の教師ら戦時の教師らの葛藤を想ふ日々が来るとは 2014年5月詠 『橄欖』2014年8月号初出