【短歌】犠牲|文語の定型短歌を詠む 33
雌仔山羊は長じ仔山羊を二頭産む 巡る生命の美しきかな
胎内に消えしひとつの生命あり 骸冷めゆく早さのあはれ
疾く知らば或いは死産を救へしや 解なき問ひを繰りて悩めり
死産の仔抱き不識を悔やみつつ「犠牲」の字義を噛み砕きをり
生と死の境に一条光るもの 山羊の生命に人の生命に
2014年2月詠 『橄欖』2014年5月号初出
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ヤギを育てていたのは当時長坂に住んでいた友人である。
子ヤギのオスとメスを一頭ずつ育て、二頭