その理由

雪やでい

コンコンと・・・






俺の父ちゃんはトゥクトゥクの達人なんだ!毎年、冬になると「ジャポンを回転させる」と呟いてトゥクトゥクに乗り、野山を駆け巡るんだ

その翌日、山へ行くと激情の轍がそこには無数に刻印されていて、それを見る度、父ちゃんの背中が大きくなっていくよ!

「父ちゃん、トゥクトゥクをさ、俺も運転してえんだ!」

🛺🧔🏻‍♂️=3<おみゃーにはまだはえーよい、トゥクトゥクと学びを積み、トゥクトゥクのような着実な一歩を踏める、そんな男になれい

「分かったよ泣」

父ちゃんは頑なにトゥクトゥクを運転することを拒否した、トゥクトゥクにはきっと歴史と順序が緻密に、そして複雑に練り込まれているんだと思う

今日も父ちゃんはトゥクトゥクで山へ向かう、俺はこっそり後をつけ、父ちゃんが何をしているのか見にいくことにした

「父ちゃん・・・」

父ちゃんよ、トゥクトゥクで何を

「父ちゃん・・・」

トゥクトゥク・・・

「父ちゃん・・・」

父ちゃん

「父ちゃん」

父ちゃんはトゥクトゥクに轢かれていた、父ちゃんはトゥクトゥクを運転していなかった、そうだ、どうして後をつけて行こうなんて考えが頭に浮かんだのか、どうして、背中が大きく見えるのか、俺は全て分かっていたのだと思う

🧔🏻‍♂️🛺=3<幼心を否定されたことがある、とある夜の公園での出来事だ、あの時、俺はこう言った、「幼心を忘れたか・・・ククク・・・」と、そしたらソイツはこう言った「忘れたよ、そんなもんは」と、俺は鉄に塗れたくっさい手を睨むことしかできなかったよ

「父ちゃんは、きっと夢を大切にする人なんだよ、夢を大切にするってことは、同時に嘘を通すことにもなるけれど、でも、父ちゃんはそれを承知でトゥクトゥクと関わっていたんだ」

その日から父ちゃんが消えた、役目を終える前に嘘がバレてしまったからだ、自宅には錆びたスコップを圧死させるような勢いでもたれかかるトゥクトゥクがただ一つある

「思えば、枕を濡らす夜というのは父ちゃんが教えてくれたことだった、しかし、それを好んではいなかった父ちゃんがそこにはいた、教えるということは必要なことに違いないのに、一体何故・・・」

冬も本格的に始まって、いよいよ家にはコタツがお出ましだ、夜ご飯にはアツアツの豚汁に静かに佇むホッケ、横に大盛りの大根おろしがあった

「父ちゃんは夢を守るには完璧を追求し過ぎたと思う、そして優しすぎるよ」

今年は久方ぶりに雪が降った、音もなく、何の予兆もなく、ただただ、この地に降り注いだ



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