【MTT】トラップレンジの研究 前編

▼導入


今回は、MTTの特にスタックが浅くなるにつれしばしば用いられる概念となる"トラップレンジ"について検証していきます。

MTTにおいては、レーキがなくアンティがあるため、幅広いレンジで参加することが肯定されます。
そしてこの参加レンジというのは、必ずしもレイズインに限らず、様々なポジションからコールドコールで入っていくことが往々にしてあります

しかしながら、コールで多くのハンドを入るからこそ、コールレンジのバランスを取る必要があり、
例えばミドルポケットやスーテッドコネクター系のハンドでだけコールしていると、簡単にレンジがキャップされてしまいますね。
そこでAKやQQ等、コールレンジにも非常に強いレンジを残しておく必要があるわけです。

また、MTTにおいては、特に中終盤ではエフェクティブが浅いことが多く、
AAのようなハンドを持っててコール止めをしたとしても、容易にポストフロップ以降にオールインまで行けるため、ポットを大きくする必要性もやや落ちる
形になります。
こういった背景からも、よりコールで参加するという選択肢が肯定されやすくなるわけですね。

このような前提を踏まえて今回は、ESやポジションごとに発生するトラップレンジの検証を行っていこうと思います。

▼検証方法


GTOwizardのレンジを参考に、結論の変化に影響を与えるであろう各ポジション関係・エフェクティブを変えながら、トラップレンジの変化を見ていきます。

▽ES
・100BB
・50BB
・35BB
・20BB
・14BB

▽ポジション関係
・UTG vs UTG+1
・HJ vs BTN
・CO vs BB

これらについて、35BB以上の場合は3bet potとSRP、そのほかはSRPに限定して検証していきます。

▼検証

(1)SRPのケース

①ES100BBの状況


さて、まずはトーナメント開始直後を想定して、ES100BBの状況で強いハンドをコール止めすることがどれだけあるかを見てみましょう。

UTGvsUTG+1

まずはUTGvsUTG+1のレンジですが、ES100BBながら既にKKすらもコール止めするレンジがあります

やはりトーナメントはコールで参加したいハンドも多く、単純に強いハンドを全部レイズしてしまっていると、残ったコールレンジが後ろのポジションからゆるくスクイーズが返ってくると降りざるを得ないレンジが多くなりすぎてしまうので、
バックレイズを返すことができるレンジも含めてコールレンジを構成する必要があるということですね。

HJvsBTN

HJvsBTNくらい後ろのレンジになってくると、スクイーズが来る可能性も残り人数的に下がることから、トラップレンジの必要性はやや下がってきます。
しかしながら、まだAKやQQといったハンドでは一部コール頻度が残っているところは注目ですね。

COvsBB

同様の理屈で、BBになるとスクイーズがないので基本的に3betに十分なハンドは全て3betで返していっています。

まとめると、ES100BBでトラップレンジを残す意図としては、スクイーズへの対応という意味合いが大きく、どこまでトラップレンジを残すかは残り人数にかなり依存するといえそうですね。

②ES50BBの状況

続いては、トーナメントが中盤に差し掛かる50BBあたりではどうでしょうか。

UTGvsUTG+1

エフェクティブが50BBになると、アーリーポジションではそもそものコール頻度自体が上がり、必然それにあわせて、強いレンジも相応にコールレンジに残しておく必要が出てくるようです。
そのため、極小頻度ですがAAすらもコール頻度が発生し、AK・QQあたりにいたってはコール頻度の方が高いことがわかりますね。


HJvsBTN

一方、HJvsBTNにおいては、意外にもほとんど100BBのレンジと変わりません。

COvsBBでもその傾向はかわらず、やはり影響を与える要素としてはいかに後ろからのスクイーズの危険性があるかというところが大きそうです。

(2)3betpotのケース

続いて、facing to 3betのシチュエーションについても確認してみましょう。

他のプレイヤーは全てフォールドをした仮定においては、特にスクイーズへの対応というのは考える必要がありません。

こういったケースにおける考え方について、ES100BB・50BBそれぞれの場合を見ていきましょう。

①ES100BB

UTG vs UTG+1

アーリーポジション同士の関係では、AA・KK・AKsといったナッツ級のハンドは基本的に4betをピュアに返しています。

QQ、AKoあたりからはコール頻度もでてきますが、これはナッツのトラップレンジというよりかは、このポジション・スタック関係で4betをピュアに返すにはシンプルにエクイティが足りないというところに起因していそうです。

HJ vs BTN


HJvsBTNくらいになるとよりわかりやすく、QQ・AKoあたりはコール頻度がだいぶ下がります。やはりここもスクイーズというのは関係ないので、単純にエクイティの問題が大きそうですね。

CO vs BB

唯一例外的なのが、OOPから3betを受けた場合です。
この場合はAA・KKのようなハンドですらも相応にコール止めの頻度があり、まさにトラップレンジという考え方になりそうですね。

やはりレイトポジション同士で、MTTのようなシチュエーションだと、エクイティがそれほど高くないハンドも含めかなりコールで粘らざるをえないレンジも多く、そこに合わせてナッツ級も混ぜ込みレンジをキャップさせないこと。
またより考えるべきは、コールした際にはSPRが4を切る上に、ポストフロップでポジションがあるため、コール止めをしても容易にポストフロップで入りきることも多いために、トラップレンジを設けることが正当化されてくるのでしょう。

②ES50BB

続いて、ES50BBになるとどうでしょうか。
ES50BBでは、基本的に3betコールをすると、IPからの3betであってもフロップのSPRが3を切ってくるので、よりトラップレンジを設けることが肯定されそうです。
具体的に見ていきましょう。

UTG vs UTG+1
HJ vs BTN
CO vs BB

一気に並べてみましたが、facing inposition raiseという観点で見ると、
このエフェクティブになってもあまりプレミアをスロープレーすることはないようですね。
一方でOOPからの3betに対しては、AA・KKのようなプレミアはピュアにコール止めになっています。

こういったところから、トラップレンジの構築にはIP-OOPの関係がかなり影響を与えていることがわかります。

▼本日のまとめ

・ESが深い段階では、それほどトラップレンジを設ける必要性というのは浅い段階と比べると大きくないが、後ろの人数によってトラップレンジの有用性が異なる
・3bet potであっても、vs IPのケースではあまりトラップレンジを設ける傾向は見受けられない
・ポジションの有無というのは大きな点であり、特に3bet pot以上でSPRが小さくなると、トラップレンジを設けるかに非常に大きな影響を与えることになる

次回は、ES35BB以下という、いよいよ本格的にトラップレンジが用いられるシチュエーションを深ぼっていきたいと思います。

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