リバー トリプルポットのブラフレンジ検証(某キャッシュゲームより)
▼導入
今回はおふざけのように見えて、個人的にすごく気になったので検証してみます。
ある動画がアップロードされて以降、Twitterは大盛り上がり、僕のTLにもいろんな切り抜きやネタ画像が連日流れてきました。
そして日本人の温床であるKKpokerにおいては、これとあわせてリバートリプルポット(ブラフがあるとは言っていない)がちょっとした流行になっているようにも見受けられました。
これではいけません。日本のポーカー界にみじんも貢献はしていませんが、単純に本来あるべきリバートリプルポット戦略というのはどういうところなのか、見ていきます。
▼前提(詳しくは某動画 5:06以降)
Effective 300bb
-Preflop-
CO K♡K♠ Raise x2.5bb
BTN Fold
SB Fold
BB Q♣T♡ Call
-flop-
A♠ 5♡ J♡
BB check
CO 33% bet(※頻度 0.7%)
BB 50% raise
CO Call
-Turn-
K♦
BB check
CO check(※頻度5%)
-River-
2♠
BB 300% bet
▼リバートリプルポットについて
まず、今回のようにDeep Stackの場面であったり、通常の100bbであってもポットが十分にたきあがっていない場面では、ポット対スタック比(SPR)がリバーの段階でも高すぎるという場面が相応に存在する。
ゲーム理論的には、本来ポラライズドされたレンジでは、可能な限り高いベットサイズを用いるという原則はあるが、実際においては複数のベットサイズでバランスの取れたレンジ構築をすることは現実的に難しく、
多くのシチュエーションを見ていても大体トリプルポットが限界という形になっているよう見受けられる。
今回のシチュエーションでも例にもれず、トリプルポットの大きなベットサイズが使われる場面であった。まずは概観を見てみよう。
![](https://assets.st-note.com/img/1656342405050-ajwQ4tVHeY.jpg?width=1200)
BB側の用いられるベットサイズは様々あるが、トリプルポットのレンジも20%近く存在するようだ。そこそこ無視できない程度の頻度では用いられている。
▼バリュー・ブラフ比率
では、バリュー・ブラフ比率はどのように構築されるか?
BBがリバーbet 300%を打った時のエクイティディストリビューションを見てみよう。
![](https://assets.st-note.com/img/1656342772014-tnoC0o6Vtx.jpg?width=1200)
42の部分を境に大きくエクイティが下がっていることから、このシチュエーションでは大体ブラフ比率は40%少し程度というレンジ構成となっている。
当然この比率というのはボードによって多少異なるものの、基本的にオッズの観点から、
相手はpot1 + bet3 =4 を call3で取りに行くということで、相手の必要勝率が3/7程度になるように調整するというシンプルな目安となる。
ちなみに、同じキャッシュゲーム配信で、Kuz vs souzirouにおけるリバートリプルポットのバリュー・ブラフ比率も、同様の方法で調査してみた。
![](https://assets.st-note.com/img/1656343939612-5b0TaVmFJF.jpg?width=1200)
やはりここでも40%を多少超える部分で一気にエクイティが変わることから、トリプルポットを使用する場合はバリュー3:ブラフ2くらいの割合を目指して構築していくのがいいのだろう。
巷のトリプルポットには40%どころか4%くらいしかブラフレンジがなさそうであるが。
▼レンジ構築
さて、それでは具体的にトリプルポットのベットーチェックレンジを検証していこう。
構築していく流れとしては、逆算的に考えていきたい。
(1)CO側がコールするレンジはどこか?
(2)そのレンジに対してバリューを取っていくためには、どこがベットレンジの下限となるか?
(3)バリューのコンボ数に対して、ブラフを2/3程度組み込むためには、どのようなブラフレンジとなるか?
では、300%betにコールするCOのレンジを見ていこう。
![](https://assets.st-note.com/img/1656465229179-WMb2XT7HoZ.jpg?width=1200)
といっても、実はリバーまでのラインを取るCOのレンジはかなり少なく、コンボ数としてはどこもかしこもほぼ残っていないため、フィルター機能で確認していこう。
受けるところとしては、
・セット以上
・半分くらいのツーペア
・一部のトップペア・セカンドペア・サードペア
といった構成になっている。
この中でセット以上のコンボ数というのは限られていることから、主体としてはツーペア、トップペアでコールすることでエクスプロイトされないようにしていく形になる。
そういったところにバリューを取っていくために、BB側のベットレンジは以下で形成されていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1656465563872-o7Ry10ap5f.jpg?width=1200)
下のセット・下のストレートがベットに組み込む有力な候補となり、そこにディープがゆえにコールに回していたAKo等も低頻度ながら混ぜていく、といったレンジ構成になっていた。
一方で、QT持ち上のストレートについては、トラップとしてチェックレンジに組み込むことが頻度としては多かった。
![](https://assets.st-note.com/img/1656465757970-XCvrRPtoFA.jpg?width=1200)
おそらくは、ヒット系を何もブロックしていないので、相手がベットしてくれる可能性が高くなるという観点から、これらはチェックレイズに相応の頻度を回すのであろう。
ただ、当然ながら打って間違いということは全くない。
しかしながら、これは個人的な考えであるが、実際オンライン等で打っていて、どこまでバリューがとれるのかというのは疑問である。
特に、AQなどのワンヒット系、AJ等のツーペア系はかなりたたき下ろしてしまいそうだ。人によっては、セットすらも降りるかもしれないと感じる。
なので、バリューで打つとした場合、現実的に55等をレンジに組み込んだところであまりコールはもらえなさそうなため、
Souzirou氏のようにストレートのみにバリューレンジを絞ってベットレンジを構成するというのが、現実的には理にかなっていそうである。
では、最後にブラフレンジを見ていく。
画像では、かなり頻度の分岐があった結果見えなくなっているが、以下のような要素が考慮されていた。
・ナッツ(ストレート)ブロッカーを持っているか?・・・Q持ち、T持ち
・コールレンジ(ツーペア)ブロッカーがあるか?・・・53,54等のツーペア・セットブロッカー
これに加えて、JヒットやAヒットなども低頻度でブラフに回すことになっていたが、相当難易度が高いベットレンジ構築となるため、
やはり上記のような特にエクイティが低いレンジでブラフレンジを構築していくのがわかりやすいと考える。
▼最後に
今回GTO的なトリプルポットレンジの構築を見てきたが、
こういったトリプルポットのようなとてもアグレッシブなベットに対して、一般的にはかなりバリューに寄りやすいことから、オーバーフォールドされる傾向にある。
そのため、実践的に用いる場合、バリューレンジは絞ってそもそものトリプルポットの頻度自体を下げたうえで、
ブラフ頻度は多少高くてもエクスプロイトが可能になるものと考える。
そう考えると、かなり使える場面のある作戦といえるだろう。
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