メーカー(作り手企業)神話の終わり
お店で物を売る場合、何かを仕入れなければならない。
そのために利用するのが卸売業者。
全く事情を知らない人のために説明すると、食品や雑貨メーカーが、卸売業者を通して、私たち小売業者に商品を間接的に販売するという流れになっている。
卸売の役割は、メーカーが直接集客、販売する手間をなくすこと。
そして、色んなメーカーや種類を用意し、小売がいちいち各メーカーに問い合わせたり、注文する必要がなくなる。
この2点である。
その代わり多くの種類や在庫数を抱える必要があり、なおかつロット、つまりメーカーが指定する最低セット数で大量に購入しなければならない。
小売は卸業者から販売価格の3〜5割(原価率30〜50%)程度で購入できるので利益率はその差額分、つまり5〜7割となる。
これは最終的に在庫として残るリスクを小売りが最も受けやすいからである。
一方、卸売業者はほとんど利益はない。
メーカーから販売価格のせいぜい2〜3割程度で購入するので、それを小売に売ったとしても利益率は1割ぐらいだという。
もちろん小売店の人間や、大手スーパー、ショピングセンターなど、言わば上客ばかりなのでそのお店がなくならない限りは安定的な収入となる。
数量も1店舗につき100点購入するなら、同じようなお店が100店舗あれば10000個売れる。
利益率が低くてもやっていける仕組みなのはなんとなく理解してもらえただろうか。
ここで簡単なクイズ。
このメーカー、卸業者、小売業者の中で、1番大事なのはどれか?
答えは小売である。
なぜなら、小売業者のみが一般消費に繋がるため。
正確に言うと小売業者が抱える顧客こそ、この物を売る流れに必須の存在である。
にもかかわらず、今メーカーは他に負担を押し付ける動きがある。
分かりやすい例として、完全予約生産。
各メーカーは新商品を、予約が入った数=ロスにならない数しか作らないという方法を取っている。
ここで問題なのは、その商品が発売される約半年ほど前に注文が締め切られること。
クリスマスの商品は5月ぐらい締め切られ10月以降に納品される。
夏も来てない時点でクリスマスの商品をどの程度発注するかを決めなければならない。
最悪なのが、予約数が少ない場合、その商品の生産すらやめてしまうことがある。
そうなると小売りは商品のラインナップや在庫数がめちゃくちゃになってしまう。
メーカーの横暴はそれだけでなく、卸売にも負担を強いている。
先ほど卸売業者はメーカーからロットで購入することは知ってもらえたと思うのだが、これはつまり在庫管理がしやすいというメーカー側のメリットがある。
にも関わらず、注文が間違っていたり、在庫管理ができておらずその都度小売りへの説明を卸売業者が行っている。
要するにメーカーはリスクマネジメントと称して、卸売や小売にリスクを押し付けているだけである。
そんな状況のためか、今メーカーの中で事業撤退が起こっている。
なぜリスクを押し付けているメーカー側がと思うかもしれないが、実はそのリスクの押し付けをしていないメーカーが潰れているのだ。
ロットでの注文を強制しなかったり、送料込みだったり仕入れ値が安い企業がその打撃を受けている。
ふんぞりかえって商品を生み出してやっているというような会社ばかりになってしまっている。
それはハンドメイドサイトやフリマアプリの台頭、アパレルがメーカー直販をECサイトで行っているという現状を全く踏まえていない。
いずれメーカーの強みはなくなり、D2CやC2Cが主流となれば、卸売業者がいなくなる。
すると小売とメーカーを繋ぐものがなくなり、この物の流れは消えてしまうだろう。
その前に、リスクを押し付けるのではなく受け入れる準備をしなければ、卸売業者とともに衰退していく事は間違い無いだろう。
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