【日本×マリ】ハリルホジッチ監督は何をテストしていたのか?


https://www.youtube.com/watch?v=Xfc7j4H-oew

・ザッケローニも試したダイナミズム重視の戦術

W杯に出場しないマリ代表との試合。次のカタール大会に備えて若手中心のマリ代表に1−1と引き分けたことから、メディアではハリルホジッチ監督の解任論まで飛び出しているようだ。しかし、そもそもこのマリ代表戦は、勝敗など二の次の試合である。指揮官の戦術に合う選手と合わない選手を選別する文字通りのテストマッチであった。

ハリルホジッチ監督は、マンマーク気味の守備で出来るだけ高い位置でボールを奪い、すばやく前線に縦パスを入れて短時間でフィニッシュに持ち込むプレッシング&ショートカウンター重視のサッカーを志向している。

こういったサッカーをする場合、欧州では前線に強靭なフィジカルを備えたターゲットマンを起用し、個の力で前線にタメを作り、敵陣に攻め込むのが一般的だ。けれども、日本代表には、そのようなことのできるFWがいない。そのため前の4人のアタッカーが上下動を繰り返すことでマークを振り切って縦パスを引き出す「質より量」なダイナミズム重視の戦術を採用していた。

ちなみにダイナミズム重視の戦術が日本代表で採用されたのは、これが初めてではない。いまから約8年前のヨルダン代表との試合で、ザッケローニ監督が同様の戦術を採用している。

https://www.youtube.com/watch?v=5BEwtln_y1M&t=75s

味方と連動して動くことの苦手な日本代表の選手たちには、複雑なポジションチェンジは難しい。自由にプレーさせると、どの選手もバイタルエリアでボールを受けたがり、中央で交通渋滞を起こすという問題が多発していた。

それを防ぐため、シンプルにDFラインの裏へ抜ける動きと、中盤へボールを受けに下がる動きを繰り返させる。そうしてフリーの選手をつくり、後列からの縦パスを入れるきっかけにするのだ。

とはいえ、この手の単純な上下動で守備を崩すサッカーは、対策も容易だ。守備ブロックを下げてDFラインと中盤のラインをコンパクトにするだけで、簡単に防ぐことができる。実際にザッケローニ時代にオーストラリア代表にやられて封じ込められてしまった。それによりザッケローニ監督も、この戦術を二度と採用することはなかった。

だが、次のW杯では問題ないだろう。日本代表相手に引いて守りを固めるなどということをやってくるチームがあるとは思えない。なのでハリルホジッチ監督は、本番でも同様の戦術を採用すると思われる。


・連携から孤立する宇佐美

このロングパスを多用するダイナミズム重視の戦術に合うか否かが、ハリルホジッチ監督に選考されるかどうかのカギとなる。マリ代表戦では、それが露骨に示されていた。左サイドに運動量の少なくショートパス志向の強い宇佐美、大島、槙野を、逆に右サイドには運動量豊富でロングパス志向の強い久保、長谷部、昌子を起用し、左右に対象的な選手配置を行った。

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