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禍時を払い


五月八日 土曜日


忙しく 今日の初めての食事
高速道路 18時34分
味噌ラーメンを流し込み
急いで扉を押して出る


たそがれを迎え
朱霞の備後灘(びんごなだ)が広がっていた

空・海・島

シャッターを切り終えて

何やってんだろう

肩が 落ち

己の中の禍時を感じる

重い脚 尖る頭で  車に戻る

ドアに手を掛けたが
傾いた肩が 溜息を漏らし

『ああ、疲れたなぁ。』
普段なら 口にしない言葉が
つい

気持ちの闇が なお迫るのを感じた

それでも 立ち止まれない

首を振る  払い除けようと  前にを向く

こちらに挑んできたものは
朱の濃さを携えた 備後灘

挑まれ
ガードレールまで 近づき
ファインダーを覗く

世界は闇を迎える前にして
惜しむ事なく
鮮やかさを放つのか

再び
シャッターを切る
切って
切って
切って
風景の一部を切り取って
己のどこかに焼きつけた

空に藍が見え始め
大禍時は 間もなくだ

でも
待っている時間は 私にはない
惜しむことなく
事を成したい

前に進むために

エンジンをかけ
この地を後にした。



ご覧いただき
ありがとうございます。

素乾 品

https://note.com/kyarawo/n/nffa57ca18b41

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