マガジンのカバー画像

短編小説集

14
2,000~5,000文字程度の短編小説をまとめています。
運営しているクリエイター

#怪盗

とある怪盗夫婦の日常

 「もしもし、俺だけど。ばあちゃん?」  ガチャリ。  小林はまた電話を切られていた。これで五百回目。振り込め詐欺対策の成果だろうか。最近はこんな詐欺に引っかかる人なんてほとんどいなくなった。  三百万円欲しいだけなのに、誰もくれやしない。  小林が静まり返った携帯電話を眺める。煙草に火をつけ、ため息を隠すように大きく息を吸い込んだ。  どっしりとソファーに腰かけ、仕方なく天井を見つめる。 「まあ、なるようにしかならねぇからな」  小林が俺の方を見て、困ったように笑っ