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「お兄ちゃんが帰ってこない」 仕事帰り。チェーン店の居酒屋で同じ職場の彼女の話を聞いていると、ひどい眩暈がした。 「捜索願は、出したの?」 彼女は首を横に振ると、また視線を机の上に戻す。兄、慶次の部屋に置いてあったという手紙が、事件性のなさを証明していた。 「きっと……限界、だったんだと思う」 机の上に並べられた手紙は2通。母宛と、妹宛だ。 「お母さんに宛てた手紙には、しばらく探さないでくださいって書いてた。お母さんにはまだ渡してない……探し出すに決まってるし、警