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道端ジェシ化を笑うな

「インスタグラムでだけおしゃれ」な人をよくみる。
ふだんはバラエティ番組でいじられている女芸人がインスタグラムだけはおしゃれ。ふだんは大声で下ネタとゴシップにバカ笑いする友人がインスタグラムだけはおしゃれ。そういう人を「痛い」とか「無理してる」「虚構に命かけてかわいそう」などと批判する声も目にする。

かく言うわたしも、インスタグラムの中では、おしゃれでいたい。
朝の光を浴びながらストレッチしたとか、ハワイの風をうけながら裸足の足越しに海とたわむれる息子を写したりとか、やたらデトックス効果のあるドリンクを飲んだりとか、瓶にぶちこんだサラダで満腹と言い張ったりとか、そういう、「道端ジェシカが投稿しそうなすべて」がしたい。いいねと思われたい、つまり羨まれたい。だからインスタグラムでだけは、道端ジェシカになりたい。

ネアンデルタール、北京原人、クロマニョン。
そう、これぞ、2010年代の進化。
道端ジェシ化。

道端ジェシ化は人間の根源的欲求の1つだと思う。

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赤ちゃんのとき、わたしたちはそこにいるだけで「まあかわいい!」と、もてはやされた。

3歳のとき。「上手にあいさつできるのね!」と
いい子であれば、知らない人に褒められた。

6歳のとき、「運動神経いいわね!」「絵が上手ねえ!」と
秀でたなにががあると、認められた。

15歳、18歳、22歳のとき。
「まああの有名中学に?」「まああの大学!」「まああの会社に!」と
将来有望そうであるほど、讃えられた。

30代フリーランス。
振り返れば、王道勝ちポイントさえあげればすぐにLIkeされていた世界から一転、いつのまにかそびえたつ親戚からのLikeハードル。ちょっと前までは、少し痩せているだけでカワイイ!って言われた気がする。単純に劣化しただけか?もはや身内に「その髪いいね」と言われるのも年1回あるかないか。せっかく出た大学名は、ハーバードか東大じゃないと「まあ!」は聞こえない。大人の褒められハードル、いつのまにか、高すぎ

ただし、人間には承認欲求がある。できるだけたくさんの人に認められたい。浴びるように承認されて自尊心を潤したい。つまりこのままだと枯渇する。だから!ネタではない、ガチのガチでのポジティブな「おしゃれだね」「かわいいね」「羨ましいな」が欲しい。欲しい欲しい欲しい!

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「せめて実家くらいはくつろぎたい」という欲求は誰しもあるのではないか。

「せめてインスタくらいはおしゃしたい」という欲求は、それとまったく同じものではないだろうか。自虐が基本フォームである多くの私たちにとって「無心でおしゃれでいたい」を放出できるのって、もはや、インスタくらいなのだ。

ツイッターで「パートナーとみるオアフの夕日、さいこう、ワインもおいしい」なんて書く勇気あるか?小学生時代の田舎こけし顔時代も知ってるやつらだらけのFacebookで「コールドプレスジュースでデトックスDAY」なんて書けるか?書けはしないのだ!それがなぜだろう、インスタグラムだけは、まるで無菌状態。「痛すぎ乙」「無理しすぎウザ」「演じすぎキモ」などの雑菌が届かないよう徹底管理されている。ような、「圧倒的な何かに守られているような気持ちになる」のだ。実家と同じく。

だから。
これから先、道端ジェシ化している人がいたら、どうか笑わないで欲しい。
あなただって実家では布団のあとをつけた顔を、洗いもせずこたつに入りミカンを剥きながら鼻をほじったりしていないだろうか。

それと同じだ。
インスタでは。せめてインスタグラムでだけは。人間の4大欲求のひとつである道端ジェシ化を叶えさせて欲しい。それを邪魔しないで欲しい。どんなくだらない失敗をしても最後には変わらず迎えてくれる、いつもそこにある実家の家族のように。道端家はいつだってそこに。

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