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「ホテル × 本」からどんな企画が浮かぶだろう?|ホテル妄想会議vol.3(BUNSHODOコラボ)

日々公私ともにホテル漬けのL&Gメンバーが集まり、思い思いのホテルトークを繰り広げる不定期新企画「ホテル妄想会議」。今回はなんと、はじめてのゲストが参加しました。

福岡でBUNSHODO HOTELというホテルを展開するLocal Design Holdings株式会社の濱谷洋次さんと、クリエイティブを手がけたYATAI代表の久松徹さん。ホテル妄想会議を以前から見ていただいていたということで、座談会にお越しいただくことになりました。本日のテーマは「ホテル × 本」。ゲストを交えたゆる〜いホテル妄想座談会をお楽しみください。


-愉快な今宵の参加者たち-

集治隆太郎:スポーツブランドやサッカーJ3クラブでの経験を経てL&Gにジョインした異色の人材。現在は予約プラットフォームCHILLNNを統括し、全国のホテルの声を拾い続けている。

大丸勇気:京都の設計事務所や商空間プロデュース会社などを経て、現在は外部のクライアント案件を統括する不動産開発のプロフェッショナル。癖の強い筆致に密かなファン多数。

角田貴広:ウェブメディアや雑誌の編集を経て、現在はHOTEL SHE,などの企画、HOTEL SOMEWHEREの編集などを担当する。ここ3カ月は北海道にあるHOTEL KUMOIに篭り中。

濱谷洋次:某大学建築系博士課程にてスラム研究+引き籠り活動中、ホテルに目覚める。Local Design Holdings株式会社では、プロジェクトマネージャーを担当。先祖がフィリピンで経営していたホテルの名前は、“ニッポンホテル”。

久松徹:クリエイティブユニットYATAIを主宰し、アートディレクター兼グラフィックデザイナーとして福岡を拠点に活動中。周りの愉快な仲間たちと日々あったらいいなを考え、つくる日々。あとはお酒、音楽、サウナ。

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BUNSHODOがやりたかったこと

濱谷:福岡でホテルやっているんですけど、ホテルのコンセプトやプランなど色々考えているところに、「プラン妄想会議」の記事を読んで、「自分もプラン妄想してます…!混ぜてもらいたい…」って思って。ご無理承知で集治さんにお願いして、今回参加させていただけるということで、ありがとうございます。

集治:とんでもありません。「妄想座談会」自体、突拍子もない実験企画なので。

角田:本当に。むしろ、読んでいただいて、こちらこそありがとうございます。

濱谷:皆さんがやられてるのって、ホテルだけのホテルではなく、全部丸め込んだホテルみたいなことじゃないですか。プランも、割とそういう丸め込む力があると思うんです。どんな体験や内容や媒体でも「プラン」って言えるような気がして。妄想座談会のように自由に話す方が、面白いプランが生まれるんじゃないかなと思います。

集治:ありがとうございます。そしたら今日は、雑談みたいな感じでざっくばらんにお話しできればと思います。

濱谷:お願いします。ひとり、一緒に参加させてもらいたい人がいまして。

久松:こんにちは、久松と申します。濱谷さんから声かけてもらって、BUNSHODOホテルのクリエイティブ・ロゴなどのデザイン周りを担当させてもらっています。濱谷さんとは、プロジェクト立ち上げの頃からこういうホテルになっていけたらとか、こんなイベントや企画やっていけたらいいね、みたいなこともゆるく話し合うところからスタートしました。

集治:よろしくお願いします。こちらからも、もうひとり参加する者がおりまして。

大丸:大丸と申します。実は、僕、長崎の佐世保出身でして。

久松:そうなんですか。

濱谷:僕たちは長崎市で、久松さんと私は同じ中学校出身です。

集治:うちの会社が九州方面でいただいている開業支援やコンサルティングの案件を、大丸さんが仕切っておられて。今回「これは、九州コネクション拡大するチャンスだぞ!」と(笑)。

大丸:もう、ゴリゴリそのつもりでした(笑)。

久松:僕は福岡に移住してまだ2年くらいで、繋がりもまだ出来始めたという感じなのですが、濱谷さんの方がネットワークはめちゃくちゃあるので、何かあればぜひ。

集治:御社のホームページや予約サイトなどで、「本を通じて人と繋がる アーカイブホテル」というコンセプトなど拝見していました。まず、BUNSHODOが作られた背景や、今後の展開といったことをお話しいただければうれしいです。

濱谷:もちろんです。では、プロジェクトの初期のところから。僕らは不動産業から企画・運営まで一括で提案する事業会社で、運用に困っている建物や土地に何かしらの事業提案をする、みたいなことをしています。博多に立地の良い土地があって、オーナーさんがどう活用しようかと困られていて、僕たちがホテルを提案をして始まったのが、このプロジェクトです。

もともと、戦前くらいまで、この博多の土地では書店が営まれていて、その名前が「文照堂」で。その「書店」っていうキーワードや歴史の残り香といったものを絡ませたくて、コンセプトを探っていました。個人的には本をホテルに置いて自由に読めるというだけではつまらないと思って、本の役割とかを考えているなかで「蓄積」や「アーカイブ」という言葉が思い浮かんできました。この言葉って、土地の歴史や人の思いというところにも適用できるんじゃないかなと。だから、「本」よりは「アーカイブ」っていうところから、プロジェクトがスタートしたんですよね。

そして、ホテルを作る時は、どの時代でもいいなと思えるようなベーシックなホテルを目指しました。内装は、こじんまりとした「こもれる部屋」というイメージにしたくて。旅館業法で定められている個室の広さが7平米以上なんですけど、7平米の広さでどういう工夫ができるか、色々考えていた、という感じです。

ただ、「アーカイブ」というのがコンセプトとはいえ、やっぱり本は置きたい。どういう風に本を使うかというところでは、ブックセレクターやキュレーターが選んだようなものを提供するというよりは、ホテルという人がたくさん集まる場所で、積み上げられたたくさんの本の中から見たり体験していただきたいと思っていました。長崎の五島列島に「さんごさん」という図書館があって、そこで「人生で自分が大事な本を3冊選んで寄贈してください」みたいな取り組みをされているんです。選んだ人のプロフィールとその本にまつわる感想文やエピソードを記載された用紙が入れられているんですけど、それがあるだけで、その本の見方が変わったり、本に人の思いがこもった本になるなと思いました。そういう本が蓄積されたら面白いだろうなと思って、そこからヒントを得て、うちでは「ブックドネーション」というプランで、本を寄贈してカードを書いていただけたら、その本をホテルに置かせていただき、料金を割引する、ということを始めました。そういう「参加型」のプランをこれからもやっていきたいとは思っています。

久松:その本のドネーションというのをメインに据えたとして、それ以外どういったサービスをやっていくかというのが決まっていなかったので、そもそもどーゆうホテルにするのか。というところから考えてみようかということで最初にできたのが「つながり」や「アーカイブ」でした。

今は、いろんなコンセプトのホテルがあって、お客さんの目もこえてきている時代だと思います。と言いつつも「ホテル=泊まる場所」みたいなイメージはまだまだある気はしていて。そこを、「泊まるためのホテル」ではなく、「別の何かをするための第三の場所」みたいに言い換えることもできるのではないかと考えました。本が読めるホテル、だけではいくつもあるので。またホテルというところが、特別な場所ではなく、日常の延長線上で気軽に利用するための仕掛けができないか、を軸に考えています。

たとえば寄贈という形でも図書カードみたいなものを作る。個人的には誰が借りているのかが見えて、どういった感情になったのかシェアできると楽しいなと思うんです。それって別に有名人でなくても、そこらへんに住んでいたり、世界中を旅する人かもしれないけど、同じ場所にいた人たちの繋がりを生々しく感じられる。昔よくあったホテルに置いてある落書き帳みたいなもの。

ドネーションをやっているところって結構あると思うんですけど、さらに、物々交換とか、本を1冊持ってきて2冊持って帰れるとか、そういうこともやっていけたらいいなと思っているところです。他にも本には関係ないですけど、ちょっと時間を寝かせたいもの。遺書とかラブレターとかフィギュアでもなんでもいいんですけど。家には持って帰りたくないようなものや、秘密基地のように、隠してたまに取り出したいもの。を「預かって保管する」ようなサービスはどうだろうとか。またオリジナルのZINEを「つくる」とか、文章や詩や小説などを書きたい人が「学べる場」とか。やってみたいことを、始めからあえてガチガチにコンセプトを決めこまず「何ができる場所なのか」色々出して広げていきましたね。

濱谷:こういうことを、1年前くらいからあれこれ話してたんですよね。

集治:もう、アイディアめちゃくちゃありますね。


ホテルやゲストを介して、偶然本と巡り会う体験を作りたい!

大丸:角田さんは以前BUNSHODOさんに泊まりに行ってましたよね。

角田:そうなんです。オープンされたのが6月で、ちょうど7月に集治さんと一緒に福岡に行く機会があって。延泊して、勝手に1人で泊まらせていただきました。

濱谷:集治さんは泊まっておられないんですね。

集治:僕は帰ってしまったんです。角田さんだけ延泊で。

角田:ホテルに泊まってしまう癖があるんです(笑)。

濱谷:(笑)。本当は4月くらいにオープンする予定だったんですけど、ちょうど緊急事態宣言とかそういう話が出てたので、6月19日に遅らせたんです。

集治:すでに色々と考えられていて、アイデアフラッシュも一巡二巡されてるんだろうなと思います。実際に、半年近くやられてきて、どういうお客さんが多いんでしょうか。

濱谷:博多駅から歩いて5〜6分の場所なので、ビジネスホテル需要があるんですね。なので、当初は20代後半〜30代後半の若年層ビジネスパーソンをターゲットにしていました。本当はインバウンド層もちょっと狙っていたんですけど、この通り崩壊してしまったので。実際には、どこのホテルもそうかもしれないんですけど、地元の方々がリフレッシュがてら泊まられたり、試験前に集中して勉強したいという方も来らていますね。

集治:カップルとか女子旅のお客さんも来られますか。

濱谷:来られますね。ユーザーの6割以上が女性です。ここは多分、近隣のビジネスホテルとは違うところだと思います。

集治:なるほど。勝手なイメージですけど、あの辺って、御社みたいな世界観とか雰囲気でやられているホテルってそんなにないのではないでしょうか。

濱谷:そうですね。福岡自体、あんまりないかもしれません。3年くらい前、福岡はホテルバブルで、不動産会社がソリューションの1つとして、レジデンスにもできるようなホテルをどんどん建てまくったんです。僕もその時民泊やってたんですけど、100万円くらい投資したら大体3カ月で回収できて、その後は自動的に月30万円入ってくるみたいな感じの、出せば売れる時代でした。

でも、逆に、コンセプトとかブランディングが弱いホテルも多く生まれてしまった。今、ホテルバブルが終わってしまった上にコロナもあって、それらのほとんどが危機に瀕してしまっています。なんだか現実的すぎてすみません。妄想から離れてしまいましたね(笑)。

集治:いえいえ、ぜひ、妄想の方もしていきましょう(笑)。パッと思いついたことなですけど、一時期、僕とか角田さんがいくつかの施設さんに声をかけて、選書と宿泊のパッケージ売りみたいなのをしたことがあったんです。本とホテルをパックにして、宿泊券を作って。実際にお客さんがどういう風に過ごされていたか分からないんですけど、本を置いておこもり読書を楽しんでもらったり、お客様の入れ替えの時に本のギブアンドテイクみたいなのがあったり、2人で来られた方が交換し合えたり、そういうことがあったら面白いなと思っていました。


角田:一応補足しておくと、僕、馬鹿みたいに本が好きなので、この企画はほぼ僕が勝手に選書して作ったようなものでした。

集治:たしかに(笑)。僕自身、本は結構読むんですけど、自分で選ぶのは得意じゃないんです。数多ある中から選ぶのって大変で、読書家のような人が選んでくれたものを読む方が楽だなと思って。

濱谷:いい企画ですね。僕らが前考えてたのは、お客さんが本を持ってきてくれてうちの本と交換できるみたいな感じだったんですけど、今のお話聞いてて、その日泊まってるお客さんがそれぞれ本持ってきて隣同士の部屋同士とかで交換して読むみたいなのもいいなと思いました。すごい美人な女性が意外な本持ってきてて、ちょっと驚きながらも気になって読む、みたいなこととかありそう(笑)。

角田:昔、一時期「ブックトラップ」っていう謎の集団がいたの、ご存知ですか。女性3人組だったかな。突然街中の交差点でぶつかってきて、本だけ落として逃げて行くんですけど、気になるから絶対その本読んじゃうんですよ。そういう感じですね。…そういう感じじゃないか(笑)。

集治:それ、めっちゃ面白いですね(笑)。

浜松:よく映画とかドラマとかで、積み上げられた本をワゴンで運んでて、ぶつかるやつが絶対いるんですけど、ドワっと崩れちゃって、1冊パッと手に取って、「これ!」みたいな感じのシーンがあるように思うんです。そういうのを再現できてる感じがしていいなと思いました。

角田:でも、ジャンル作ってやるのいいですよね。「今夜はSFが好きな人が集まる日」みたいな。

大丸:もう実行している本絡みの企画もありますか。コロナの関係でなかなか難しいかもしれないんですけど。

濱谷:色々妄想は広がるものの今のところ出来ているのがさっきのブックドネーションだけで。本を寄贈していただいた方は、安くで泊まれます。1階のカフェでも、本を寄贈していただくとワンドリンクという物々交換のような形にしてます。

大丸:僕、福岡の「ブックスキューブリック」がめっちゃ好きで、仲良くさせてもらってるんですけど。「夜と霧の読書会」っていうのやっているんですよ。そういう感じで、1週間泊まりこんで、昼間は各々仕事とかして夜ホテルに帰ってきて読書に浸るというのはどうでしょう。「古典を読む1週間」なんて面白いと思います。「興味あって読みたいけど、1人で立ち向かうのはちょっときついな…」みたいな本、僕は結構あって、そういう本を勢いに乗って読める企画とかあったらいいなと。うちの湯河原でやれよっていう話でもあるんですけど、BUNSHODOさんの方がもっと合うなと思って(笑)。

濱谷:うちのホテルで、外部の方の読書会は週1で開かれてるんです。それを宿泊に結びつけたくてアプローチしてるんですけど、なかなか話がまとまらなくて…。百物語みたいなノリで、1冊読み終わるとロウソク消していくみたいな、面白い読書会やってみたいですね。

集治:湯河原とかってそれなりにもう色がついてしまってるんですけど、BUNSHODOさんは、建物の雰囲気とかお部屋の雰囲気とかすごいニュートラルな印象だったので、デイリーとかウィークリー、マンスリーでコンセプト変えてもいいんじゃないかなと思います。


「泊まれるストーリー」と「整わないサウナ」

大丸:「泊まれる本屋」じゃなくて「泊まれる本」ってどうですか。「泊まれる古典」みたいな。

角田:「泊まれる本」いいですね…!それで言うと、めっちゃやりたいことがあるんです。僕が実際に関わっている企画から着想得たんですけど、その企画っていうのは、東京の日本橋に、もともと寿司屋だったところを改装したコミュニティスペースがあって、そのオープンに際して、7人の作家の人がその寿司屋をテーマに小説を書くというもので。その1人として僕も書いてるんです。作家じゃないんですけど。


集治:作家みたいなもんですよ。

角田:いやいや(笑)。それで、前半はオンラインで読めるんだけど、後半はそこに行かないと読めないっていう形になっているんです。こういう、オンラインとオフラインを物語で繋ぐみたいなことは、今後もやっていくらしいです。そういうプロジェクト、ホテルでもやりたいなって思って。オンラインで前半が読めて、後半はホテルに泊まらないと読めないみたいな。あと、ストーリー自体が分岐していって、どのストーリを選ぶかで泊まる部屋番号が変わるっていうのもありだなと考えてました。うちで、イマーシブシアターという体験型の演劇を取り入れた「泊まれる演劇」っていうのをやっていて、お客様が一晩で色々なストーリーを体験するんですけど、それにもちょっと近いかなと思います。大丸さんの「泊まれる本」っていうの聞いて「泊まれるストーリー」みたいなのも面白いなと。

濱谷:「泊まれる演劇」ってそんな感じなんですね、すごい。「泊まれる本」で、違う部屋に行ったら違うストーリーが読めるとかめちゃくちゃ面白い。

角田:「泊まれる演劇」ってまさにそれで、好きな部屋を選んで、その時どこにいるかによって起こることが違う。同時多発的で、一晩で観れる演劇は1つだけなので、連泊されたりリピーターのお客様もいらっしゃいます。

濱谷:もう、妄想が現実化してるじゃないですか。話ちょっと脱線するんですけど、僕の出身の長崎に雲仙地獄があります。今、雲仙の旅館周辺ってかなりダメージ受けてるので、デスメタル企画とかどうかと思っていたんです。デスメタルバンド呼んで地獄テーマに1曲書いてもらって、最終日にデスメタルフェスをやって、お客さんは温泉浸かりながら鑑賞する、みたいな。

集治:できそうじゃないですか、それ。

濱谷:同じようなものあるかなと思って探してたら、フィンランドで、サウナに入りながら北欧メタルを聴く「メタルサウナフェス」みたいなのがあるそうです。めっちゃ面白そうだなって思いました。

角田:面白い。けど、整わなさそうですね(笑)。

大丸:「整わないサウナ」いいじゃないですか(笑)。

濱谷:いつか、雲仙でデスメタルフェスやりたいです。地獄が4つあるので、4つのデスメタルバンド呼んで。

久松:今、屋上サウナとかも企画してるよね。

濱谷:そうなんです。現在運営している別店舗に何も色がないので、屋上でサウナとかできないかなと勝手に思ってます。

大丸:そうなんですね。「九州とサウナ」(九州に住むサウナ愛好家たちがサウナに対する偏愛をひたすら綴っていくWEBマガジン)って知ってますか。主催してる人が僕の親しい後輩なので、なんか手伝わせますよ。

濱谷:知ってます!本当ですか、お願いしたいですね。

集治:次のホテルの場所はどのへんなんですか。

濱谷:博多区の中洲川端駅の近くです。

大丸:ご存知、「らかんの湯」で有名な御船山楽園ホテルとか熊本の湯ラックスさんとか、サウナツーリズムっていうと九州方面っていう認知も出てきてブランド化もされてきているように思います。屋上サウナも、その一連の流れに乗っていけるなと。さっきの「雲仙」の話とかもめちゃくちゃインパクトあるし、デスメタルやって、ネオ温泉ツーリズム的な感じでいけますよ。

濱谷:デスメタルバンドとコネクションとかってありますか。

久松:ないでしょ、なかなか(笑)。

大丸:デスメタルバンドとは、ちょっとないですね…(笑)。

久松:もう雲仙の人たたちで結成する方がいいんじゃないですか(笑)。

濱谷:雲仙の人たちは、「キャンプと温泉でみんなでまったりしましょう」みたいな感じなので、デスメタルしてくれなさそうです…(笑)。僕としてはもう、「地獄っていう名前がついてるんだからここはデスメタルしかない!」って思ってるんですけど。

大丸:濱谷さん、なかなかぶっ飛んだ発想されますね(笑)。

濱谷:すみません、僕今ちょっとテンション上がってて(笑)。


可能性を秘めた「ラブホテル」的コンテンツ!?

大丸:その、屋上にサウナ作ろうとしてるホテルの方は、これからオープンですか。

濱谷:これは、すでにやっている、2店舗目のホテルの話なんです。もともとラブホテルが廃墟化している物件があって。うなぎの寝床のような土地だったんです。ただ、BUNSHODOにはデザイナーが入ったんですけど、その前の2つに関しては、コンセプト先行の設計ができなくて、ただの箱になってしまっている。それに何か色つけたいということで、屋上サウナを考えています。今、福岡にはホテル計画がストップした事例がいっぱいあって。建てたはいいものの運営できていないとか、土地を取得したけどホテル計画出してもうまくいかないとか。そこに対するコンサルというか、「どうにかして動かせないか」みたいな話はちょくちょく来ます。だから、福岡に乗り込むなら今かなと思っています。

大丸:5〜6年前とか、不動産活用って言ったらもう、ホテルにするかサービスアパートメントにするって感じだったけど、それが今、全崩れしてるじゃないですか。これから、そうなった箱たちをどうしていったらいいと思いますか。考えるんですけど、これ、本当に見えてこないなと思っていて。

濱谷:そうですね…。町に点在している小さいホテルをまとめ上げて町ごとホテルにするみたいな、エリアで勝負するというようなことは考えたりしています。今、ビジネスホテル需要もないし、供給多寡なので、それよりも、町おこしの拠点としてホテルを点在させて、それらをネットワークで結ぶ、っていう方法も1つあるのかなと。

大丸:それって10〜20室単位のホテルを繋ぐというイメージだと思うんですけど、経済効率で建てた40室くらいのホテルの活用って難しくないですか?

濱谷:そこのソリューションは、僕もまだ見出せていなくて。外国人需要とかあったりするのでしょうかね。僕たち、外国人学校とか日本語学校とかともコネクション築いてて、今、留学生の隔離施設としてなんとか存続させている状態なんですね。外国人の雇用者も多い中、日本語学校とかと提携してシェアハウス的な糸口も作ろうとしています。あと、彼らも今働き口がないので、「うちで雇うから借りてくれ」という話を日本語学校とかに出したりもしていますね。全然答えになってないかもしれないんですけど。

集治:結構皆さん似たようなことやってますよね。東京のライフスタイル系ホテルとかでも、ウィークリー・マンスリーで貸し出したりされてて。でも、やっぱりまだ戻らないって、みんな言ってます。

濱谷:やっぱり、どこもそうなんですね。

集治:うちとしては、さっき言ってたイマーシブシアターを一種のテーマパーク化してホテルでやるとかを、多分これからやっていくんじゃないかなと。あと、角田さんもやってくれてるんですけど、ホテルを広告として活用する事業も拡大してけると思いますね。

濱谷:それは強いですね。まだまだ僕らは、いわゆる「ホテル」の領域から抜け出せていないなと思います。福岡で無人チェックインが合法になって、そういうシステムを作っている人とも色々話してたりしてるんですけど、ホテルだけど2回転3回転できるラブホテルとかって割と最強じゃないかって言ってるんです。

集治:そうなんですよね。コロナの最盛期頃に、結構大きいチェーン系のシティホテルの方とお話しすることがあったんです。彼らはラブホテルではないんですけど、ワーカー向けにデイユースを初めても、結局入ってくるのはほぼカップルだったそうです。

大丸:それで面白かったのが、中高齢のカップルが多かったそうで。その年齢層って一般的なラブホに入りづらいから、そういうところに集まったんだろうと。

集治:人間の心理ですね…(笑)。

濱谷:それはある気がします。そもそも、ガチなラブホって誰でも入りづらいイメージあるじゃないですか。老若男女誰でも気軽に使えるような場所になってもいいなとは思っていて、現状のホテルを焼き回したりすることでそういうのができそうだなと。福岡に「HOTEL&SWEETS」っていうラブホテルがあるです。いわゆるインスタ映えするような真っ白い空間で、その名の通りスイーツビュッフェがついてて、女子会とかにも使われてたりして、これがめちゃくちゃ人気らしい。こういう方々の参考にすると、糸口見つかったりするかもしれません。

大丸:昔、長坂常さんとかひと部屋ひと部屋デザインして、イケてるラブホテルを作った「LLOVE」っていう企画があったんですよ。まだホテルというのがカルチャー化してなかった当時にしたら、めちゃくちゃ新しかったし面白かったな、というのを思い出しました。

濱谷:調べてるんですけど、それって「ロイドホテル」ですかね。記事が出てきました。

大丸:それです!個人的に、ホテル企画の金字塔というか、追随を許さないくらいの最高の企画だったなと思いますね。

濱谷:結構名だたる建築家が入っておられたんですね。中山英之さん、永山祐子さん、中村竜治さんとか…。なんかめっちゃ長いベッドとかあって、面白い。

大丸:そうなんです。BUNSHODOさんは、ニュートラルな感じのホテルなので、本をテーマにそういう感じの雰囲気とか纏わせたりできそうだなと思います。

濱谷:すごい勉強になります。

大丸:ちょっとは記事っぽくなりましたかね(笑)。


「泊まれる物語」を作ろう

久松:BUNSHODOの「ニュートラル」っていうところにヒントをすごくいただいて、そこをベースに考えるといいものが出てきそうな感じがしています。目指すべきは「泊まれる本」ですね。

濱谷:「泊まれる本屋」じゃなくて「泊まれる本」。それが聞けただけで、すごい頭が定まった感じがします。

久松:読書会も、ただの読書会じゃなくて、一冊の本から感じたことや持ちよった本をもとにテーマや設定して、何か一つのアウトプットをしていくプロジェクト型の読書会とか。泊まるたびに宿泊者たちによって紡がれた物語が進んでいく本や部屋があるとか。BUNSHODO HOTELという場所が、そこに集まる本や来る人たちによって、つながりや蓄積を感じれる場所になるといいですし、本とホテルというものでどこまでできるか、を考え実際にやっていくことが大事だと思っています。

集治:うちの企画なんですけど、角田さんがやってた、最果タヒさんの「詩のホテル」あるじゃないですか。「泊まれる本」だったら「詩のホテル」のアイデアも転用できそうだなと今思いました。

角田:たしかに。「詩のホテル」っていうのをやって、ホテルの部屋を「詩」にしました。よかったら調べてみてください。ただ、これね、大変なんですよ…(笑)。やっぱり、二次元を三次元にするのって結構難しくて、かなり詰めないと企画化できなかったです。おかげで魂のこもった企画になりましたけど。「泊まれる本」、ぜひ企画してほしいですね。個人的にコラボして欲しい作家さんとかめちゃくちゃいます。


濱谷:僕は、言葉がなかなか頭に入らない人間で、どうしても映像から入っちゃうところがあるんです。おっしゃったように、二次元の文字の本を体験化するってどうするんだろう、そもそも「泊まれる本」って何なんだろうっていうところから、また久松さんと詰めていく必要がありますね。

久松:以前、それぞれの部屋にタイトルがあってその世界に浸れるみたいなのもいいねって話もしてたんですけど、それなんかも繋げられそうな気がします。季節なのか、何かしらで日々変わっていく。

大丸:最近、「泊まれる演劇」の第2弾を他のホテルさんでも開催したんですけど、ホテルの1室1室にテーマを持たせるということをやってたので、参考にしてもらえるところがあるかもしれません。

集治:ちなみに、「詩のホテル」って、これ用に書き下ろしてくださったんですか。

角田:そうです。さっき二次元を三次元にするのが難しいって言ったんですけど、めちゃくちゃ面白かったこともあって。というのが、どの場所でどういう風に読むかを僕たちで指定できるんです。例えば、壁に貼ってあったらまっすぐ読むし、上にあったら寝てしか読めない。そういう点で、どこにどういう詩や文字を置くかっていうのを全部話し合って作りました。

大丸:さっき「LLOVE」が最高のホテル企画だって言いましたけど、ごめんなさい、あれ第2位です。第1位は、圧倒的に「詩のホテル」です。

角田:ありがとうございます…!

大丸:あれはマジで凄まじいです。なかなか再現は出来ないと思いますね。

濱谷:なんか、パクリみたいになっちゃって悪いですね…。

角田:確実にパクリじゃなくなる方法は、僕らが一緒にやればいいんです。

大丸:そういうことです(笑)。

濱谷:お願いしてもいいですか(笑)。「泊まれる本」やれるんだったら、詩からさらに拡大して、物語に…。物語じゃなくてもいいんですけどね。「本」って、物語以外のジャンルもたくさんあるし、文字だけでなく写真の媒体でもあったりもするので、そういうのも丸ごと含めて考えると、もっと幅が広がって面白くなるかもしれません。

集治:今日のパンチラインは、「泊まれる本屋」じゃなくて「泊まれる本」っていうところですね。大丸さんがパンチライン賞でした(笑)。長い時間、ありがとうございました!


-過去の妄想座談会たち-


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