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龍崎翔子が描く水星の現在地と未来|水星社員総会「suisei newtown」レポート

水星では、年に一度全ての社員を集めた社員総会を実施しています。最新の会社のビジョンを共有したり、ワークショップなどを通じて社員同士のコミュニケーションを図ることで、チームとしての結束を強めていく狙いがあります。

そんな社員総会が今年も5月にHOTEL SHE, OSAKAで行われました。この記事では、「suisei newtown」と題して開催された今年の総会から、水星の現在地と目指す未来を語った龍崎のスピーチを、トピックスごとに要約してお伝えします。

01 これまでの成長の振り返り

水星のあゆみを振り返る

私たちは2015年に富良野で事業を始めました。第2~4期はホテルの展開期。京都のHOTEL SHE, KYOTO、大阪のHOTEL SHE, OSAKA、湯河原のTHE RYOKAN TOKYO、層雲峡のHOTEL KUMOIなどホテルを増やしながら、「メディアとしてのホテル」というコンセプトを掲げて、定性的な価値を追求していくようになりました。

5~8期は事業多角化の時期。もともと2020年の東京五輪を見据えて、ホテル参入企業が増え、市場の急速な飽和が起こることを想定していました。そこで、ホテルの宿泊予約SaaSであるCHILLNNやホテルのプロデュース事業のような、競合の参入やホテル市場の活性化が自社の後押しとなるような新規事業の仕込みを開始し、事業ポートフォリオの多角化を進めました。

コロナショックが起きたのが6期のタイミングです。この時点で、私たちの事業も大きな影響を受けましたが、幸いにして5期の頃に仕込んでいた新規事業のリリースが控えていたのがちょうど2020年の春先。CHILLNNのローンチやプロデュース事業部の正式発足を立て続けに行い、会社全体の収益構造をToCからToBに大幅に急転換。また、かねてより仕込んでいたエンタメ事業「泊まれる演劇」やアカデミー事業「Tourism Academy SOMEWHERE」などもこの時期に開始し、事業が急拡大。ホテル事業を主としていた会社にもかかわらず、事業構造の成果もあり、自力での危機脱出に成功しました。。7期では、悲願であったスモールラグジュアリーホテル「香林居」の開業、8期には水星への社名変更、HOTEL CAFUNEの開業などを経て、ついに過去最高だった5期の売り上げを抜き、コロナ前を凌駕する企業規模になりました。

コロナショックと「脱観光」

コロナ禍でホテル業界のレイオフや休眠が続く中、水星はひとりもレイオフせず、なんとか自力で事業を回復することができました。コロナ前の加熱する業界市場や、コロナ禍の業界への打撃を踏まえ、外的要因に左右されない宿泊業のあり方を考えた時に、2022年には本格的に「脱観光」を掲げるようになりました。HOTEL CAFUNEはその一つの大きな成果です。

宿泊業と観光業は必ずしもイコールではありません。観光業ではない宿泊のあり方として、社会のインフラとして求められる、生活や人生の中の機能をホテルが代替していくような『ライフデザインホテル』構想の一つとして産後ケアという概念に着目して生まれたのがHOTEL CAFUNEでした。こうした時代を経て、第9期を「第二創業期」と位置付け、コロナショック後の新しい事業スキームを作っていく時代に入ったと感じています。

事業ごとのつながり

事業を多角化する中で、それぞれの事業がきちんと成長をしています。ホテルを筆頭に、予約サービスのCHILLNN、「泊まれる演劇」を手がけるエンタメ事業、ホテルプロデュース事業など、それぞれの事業が絡み合うことでシナジーが生まれるような横のつながりを意識して事業をつくってきた結果、事業部ごとに価値を発揮し合うことで収益が生まれる構造になりました。


02 水星はなぜホテルを営むのか

水星の存在意義

私たちはホテルを通じて、人生の選択肢を広げる事業を作っていきたいと思っています。そもそも、人生は選択の積み重ねでできています。そこに選ぶ余白があることで自分の人生の輪郭が掘り出されていくと思うのです。水星では「人生の乾いた旅に潤いを」というビジョンを掲げ、ライフスタイルと観光における選択肢の多様性のある社会を実現したいと考えています。

なぜ、ホテルなのか

「ホテルはメディアである」と考えています。ホテルをただの旅の寝床だと捉えることもできますが、もっと広く、衣食住すべてを包括した、人が長い時間滞在することができる空間とも呼べるのです。自宅は100%そこに住んでいる人の意思が介在する空間ですが、ホテルはプライベート空間でありながら、オーナーという別人格の意思が介在する、ある意味パブリックな空間でもあります。こうした自分以外の選択や働きかけがあるというのもホテルならではの面白さです。

今の時代、情報を提供できる事業者は多いかもしれませんが、環境を提供できる事業者は多くありません。加えて、ホテルの良さは、時間の制限がない状態で人に対して環境をもたらすことができるという点にもあると思います。

メディアとしてのホテルがつなぐもの

ホテルはゲストと人、ゲストと土地、ゲストと文化という3つの観点でメディア的な役割を果たします。ゲストがスタッフと出会ったり、偶然訪れた人と仲良くなるようなこともあれば、その土地らしい空気感・コンテンツを体験することもできる。加えて、ゲストと文化が出会うことで自分の世界が広がるような体験がホテルには存在しています。

たとえば、HOTEL SHE, OSAKAでは「レコードのある生活」を提案していて、滞在を経て今後の生活の中でレコードショップを見つけたり、クラブに行ってみるというライフスタイルの変化につながるかもしれません。

自分の生きている空間に、ちょっと違和感のある文化の窓口となるものが提示されることで、自分の世界が広がるというのは、人と文化が出会えるホテルならではの魅力です。つまり、ホテルは単なる寝床でなく、価値観を提供することのできる空間であって、それは「ライフスタイルを試着する」場所だとも言い換えられます。HOTEL CAFUNEでは「産後のサポートがある生活」を提供することで、その後自宅に戻ってからの新しい家族での時間がより良いものになることを目指しています。こうした長い視点でのライフスタイル提案もホテルならではの可能性だと思います。


03 水星はどこに向かうのか

水星はこれからどこに向かうのか?

第9期を第二創業期と位置付けましたが、これから私たちが目指すのは、「ホテルプロデュースカンパニー」だと考えています。つまり、これまで続けてきたライフスタイルの選択肢を広げるホテルをより戦略的につくっていくのです。しかし、今後の大きな目標に対して、これまでのやり方のままでは辿り着かないと考えています。そこで、そもそものやり方を大きく変えていく必要があるのです。

戦略①市場のさらに外側へ

観光市場自体は拡大を続けており、ホテルの目的地化も高まっています。世界的にも一人当たりの宿泊料金は増え続けており、ホテルに対する期待値は上がっており、消費意欲も高まっています。この観光マーケットに対して、地域の空気感を織り込んだ上質なホテルをつくることは今まで通りに続けていきます。実は面白い話をたくさんいただいており、近々発表できるプロジェクトもあるでしょう。また、海外展開も視野に入れていて、ひっそりと動き始めたりもしています。

加えて、私たちが普段向き合っている観光市場というものは、健康で経済的にゆとりのある青年・壮年だけに開かれた市場であり、そこには見えざる潜在市場が存在していると考えています。たとえば、高齢の方や病気や障がいのある方、小さな子供がいる方など、現在のホテル市場では旅行を諦めざるを得ない方々に対しても、安心して楽しめるホテルを提案することが可能だと思います。

さらに、その外側の「非観光宿泊市場」という観点からは、宿泊業のポテンシャルが多く残されています。産後ケアホテルや「泊まれる演劇」のようなエンタメ型ホテルなど、一般的な観光とは異なる市場でホテルを営むこと、誰も発見していない参入していないマーケットに対して、商品開発をすること。つまり、よりそれぞれの人生のライフサイクルに寄り添ったホテルのプロデュースを通じて、社会のインフラになるようなサービスを世界へ輸出できる企業になりたいと考えています。

戦略②収益モデルの変化

加えて、収益モデルの変化が必要です。HOTEL SHE,をはじめ水星の運営施設の多くは自前で物件を仕入れて運営するというスキームを続けてきましたが、どうしても投資回収までの時間軸が長く、加速的な成長を志すには難しい側面がありました。

起業初期は、自前で物件を仕入れて運用するしか手段がありませんでしたが、これからはより高付加価値での売却モデルを取り入れていこうと考えています。用地の仕入れから売却まで、宿泊業にまつわる全ての分野で価値を高めていくとともに、あらゆる分野からの資金調達・提携も強化し、水星にしかできないホテルの事業運用スキームを構築していきます。


最後に

水星は、人生の選択肢を広げるホテルづくりに取り組んでいきたいと思っています。想像してみてください。好きな土地で、自分が泊まりたい素敵なホテルをつくる。それが皆さん自身の仕事です。私たちの取り組みに対して少しでもワクワクしていただけたら嬉しいなと思いますし、みなさんとともに頑張っていきたいと思います。まだまだ小さなスタートアップですが、もっと面白くなっていく将来を是非一緒に楽しみましょう。

よろしければ、ぜひサポートをお願いします💘いただいたサポートはホテルのさらなる満足度向上のために活用させていただきます🙇🙇