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未来の故郷に繋がる拠点をつくる|HOTEL in HOTEL連載vol.3「HUB INN」

「HOTEL SOMEWHERE」というオンラインのホテルへ、いろんなホテルが出向いていただく「HOTEL in HOTEL」連載企画。

ここでは、CHILLNNに掲載されているおすすめホテルの方々に、「HOTEL SOMEWHERE」へと来ていただき、「HOTEL in HOTEL」を実施します。と言っても実際に空間はないので、この記事こそが「HOTEL in HOTEL」。この記事の中だけはオンラインに存在する別のホテルなのです。
「HOTEL SOMEWHERE」の中で語られる日本中の素敵なホテルの物語。是非ご堪能ください。

今回は広島県で地元のハブを体現する宿「HUB INN」が登場します。

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2018年9月8日。
因島出身のポルノグラフィティさんの地元凱旋ライブ。
僕は雨の降りしきる尾道の野外ライブ会場にいた。

『しまなみのことを、因島のことを、誇りに思ってほしい。』

全国から集まった沢山のファンの前で2人が伝えてくれたことは地元である因島が、しまなみが、素晴らしいところだということだった。

あの日見た地元の先輩たちの姿が、僕を突き動かした。

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あれからもうすぐ3年の月日が経とうとしている。

相変わらず、僕の胸の中にはあの当時のままの純粋な想いがある。
ふと、そのことを少し誇らしく思う。

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僕は『因島』という小さな島で育ちました。
遊ぶ場所といえば、海、山、学校のグラウンド。

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この島のことしか知らない僕は大きくなるにつれ、次第に外の世界に思いを馳せるようになりました。
当時は田舎の島で育ったことに恥ずかしさみたいなものがあったのかもしれません。

『高校を卒業したら、絶対に因島を出る。』

その言葉通り、高校卒業後は京都の大学に進学。
就職後は大阪や東京といった都会で働いていました。

都会での生活はとても楽しいものでした。

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果てしなく高いビル群、どこへだってすぐに行ける電車、行き交う人の多さ。
おしゃれなカフェも、美味しいごはん屋さんも、最新のファッションも、遊ぶところだっていっぱいある。
見るものすべてが新鮮でした。

都会での暮らしを謳歌する一方で、都会に触れる時間が増えれば増えるほど、故郷である因島のことを鮮明に思い出すようになりました。

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穏やかな海、柑橘畑の広がる風景、空いっぱいに広がる満天の星空、いつも温かくしてくれた島の人々。

自分が何もないところだと思っていた場所は、こんなにもたくさんの魅力にあふれている。
都会には無くて、「因島にしかないもの」が沢山あることに気づかされたのです。

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そして、きっかけとなったあの2018年のライブを迎えました。
先輩たちが全国から集まったファンの皆さんに伝えてくれた想いが僕にとっての大きな分岐点に。

『自分も、故郷の美しさを自信を持って伝えられる人になりたい。』

そんな想いを抱き、因島の魅力を伝える発信地となる宿を作ることを決意しました。そのときの決意を胸に、1か月後には当時勤務していた東京の会社を辞職し、因島に戻りました。

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宿泊業の経験がなかった僕は、尾道市内のホテルで客室清掃やフロントの仕事をしながら、同時に因島で物件探しを始めました。

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物件探しでは島の人たちと沢山の出会いがあり、活動を支えてくださいました。

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半年間の物件探しの末、最終的に決めた場所は土生(はぶ)町。
かつて造船業が盛んだったころに賑わった土生商店街という場所は、今では空き店舗が目立ちます。

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この場所に少しでも活気を取り戻すことが因島の未来に繋がるかもしれない、そう思いました。

宿の名前は、土生町にあるということ、未来の因島に繋がる拠点(HUB)になりたいという想いから『HUB INN』と名付けました。

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リノベーションは自分でできることは全てやりました。

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解体、壁・天井への漆喰塗り、コンクリート床の研磨、外階段の錆び取り・塗装、屋上の防水、とにかく自分の手を加えながら工事を進めていきました。

慣れない作業もあり時間はかかりましたが、職人さんたちと一緒に作り上げた空間にはとても愛着があります。

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開業準備中、工事費が不足したためクラウドファンディングにも挑戦しました。
全国から230万円もの温かいご支援をいただき、工事を進めることができました。

ホテルがどのような過程で作られるかはそれぞれだと思います。
たとえ、すべてをプロの職人さんが作り上げようと、自分で手を加えた範囲が多かろうと、汗と沢山の方の想いが込められた空間には温かさがある。
僕はそう信じています。

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そして、2020年12月4日。
沢山の方の支えのおかげで、因島に無事HUB INNをオープンすることができました。

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『因島に来てくださる方に喜んでもらえる、拠点となる宿を作りたい。』

今では、この夢を口にし始めたあの頃とは比べ物にならないほど、地元の方々をはじめ、全国の因島を大切に想ってくださる方々がHUB INNの活動を楽しみにしてくださっています。
僕にとっては、かけがえのない、本当に宝物のようなご縁です。

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この場所は、僕一人が作り上げたものではなく、応援してくださる皆さんがここ因島に作ってくださった場所だと思っています。

沢山の方たちに支えられていることを噛みしめながら、丁寧に、誠実に、これからも歩んでいきます。

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僕は、この島に育てられました。
性格も、考え方も、言葉も、すべての根っこがここにあります。

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育ててくれた因島への恩返しができるとすれば、この地に根ざして覚悟を持って事業を続けていくことだと思っています。

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ありのままでいい。
誰かの真似ではなく、自分にしかない想いで、これからも。

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あの日、地元の先輩たちが教えてくれた大切なことを胸に。

文:松本 恭平(HUB INN)


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