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突然電話が来て有識者会議に呼ばれた話

先月、首相官邸に呼んでいただいた。

世界的な危機が訪れている最中、日本を今後どうしていくのか、どのように国民の健康と生活を守るのか舵取りをしなくてはならない大事な時期に、まさか国政の中枢にお招きいただき、行政のトップの方々に自分の意見を聴いていただく機会をいただけるとは夢にも思っていなかった。

まだ創業して5年あまり、個人としてもホテルとしても企業としてもまだまだ未熟で道半ばで、自分自身が学ばないといけないことが圧倒的に多い状況だと思うのだけれど、身の丈に余るまたとない光栄な機会であり、実際にコロナショックの打撃を受けている事業者としての声を届けるためにも、永田町へと赴いたのだった。


突然電話が来て私は首相官邸に行くことになった

ある日、観光庁から電話がきた。

パンデミックの影響で長らく休止され、観光業の再開に向けて半年ぶりに開催される観光戦略実行推進会議に招聘される有識者として私の名前が挙がっており、連絡をとっていただいたのだという。

この観光戦略実行推進会議とは、菅官房長官以下のほとんどの閣僚が参加し日本の観光政策について議論する場であり、具体的には観光庁が選んだ有識者(曰く、大企業ではなく現場の声に近い中小事業者を意識的に選んでいるのだという)が自らの事業に紐づく政策提言を行うことができる。さらに、有意義な提言に関しては菅官房長官の意思で実行が決定するのだという。

話を伺うと、観光庁では現在、コロナショックによる中小観光事業者の経営破綻を懸念しており、その対策を検討しているのだという。

ある程度歴史と格式のある名の通った旅館・ホテルであれば、仮に経営破綻したとしてもファンドに買収され資金注入を受けて適切にリノベーションをすれば、元からあった"のれん"を活かしてなんとか再建するビジョンはあるのだが、そういった無形資産のない無名・無個性の中小の施設はそうはいかない。

今後日本の主要産業として育てていかなければならない観光業のダメージを最小化するために、中小事業者の廃業を防ぐことが重要ミッションであり、その観点から、今まで地方の比較的マイナーな観光地で、廃業した宿泊施設を経営再建してきたL&Gに白羽の矢が立ったのだという。


マルチタレントな観光人材が活躍するために

今まで、私たちのホテルや企業の取り組みを多くの方に評価していただく機会に恵まれており、大変ありがたく思っているのだが、世界観を持ったブランドとしてマネジメントするだとか、モデルを起用してキービジュアルを撮影してプレスリリースを打つだとか、他のブランドとコラボイベントをするだとか、社内・社外にこだわらずホテルにまつわる魅力的な情報をキュレーションしたメディアを作るだとか、ある意味他の業界で普及しているノウハウや価値観をホテル業界にインストールしているのだと思っている。

今、観光立国に向けて観光人材が必要だと叫ばれている中で、必要なのはホテリエ養成スクールでカトラリーの扱い方をみっちり学んできたプロフェッショナルなホスピタリティ人材だけではなくて、クリエイティブやマーケティングなど多様なバックグラウンドや異業種のノウハウを持ちながら観光業に従事するマルチタレント型の人材でもあると思う。

実際、全国に観光系の学部を持つ大学などはあるけれど、どの人に聞いてみても大学で何を学んだのかはっきりした回答は返ってこなくて、結局多くが観光に全く関係のない業界に就職する。それに、仮に観光業界に入ったとして、年次でポストが決まる大手ホテルとか、長老の鶴の一声で全ての意思決定が覆るDMOや自治体とか、旧態依然とした年功序列型ヒエラルキーに投げ込まれることもザラで、組織の中で発言権を持つ頃にはトレンドから取り残された存在になってしまう。

中小のホテル事業者を経営破綻から救うのは、


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