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意味も理由もなく惹き寄せられた、瀬戸内のゆらぎ|なくならないでほしいホテル Vol.8

「HOTEL SHE,」などを運営するL&G GLOBAL BUSINESSで働くスタッフや、いつも応援してくださる皆様と一緒に「なくならないでほしいホテル」という連載をはじめました。絶対になくなってほしくない推しのホテルを主観たっぷりでお届けします。

「なくならないでほしいホテル」、というお題をいただいて、これまで行ったホテルをずーっと思い返していた。どこも素敵で選べない・・・し、そもそも、ホテルに限らずどこかにどうしてももう一度行きたい、という欲求があんまりないことに気づいた。

私は昔から、一度見た映画をまた見たり、一回読んだ漫画や本を読み直したり、ということをほとんどしたことがない。

人生でできる限り色んな場所に行きたいし、いろんな経験をしたい。好奇心旺盛とも言える。

が、もっと正直なところ、「ここだ」とか「これが本当に好きだ」という感情があまり沸かない。それがコンプレックスだったりもする。そう、器用貧乏というか、飽き性と言うか、広く浅く、共感の範囲も広い。何かに熱狂する人、職人気質な人が羨ましい。

そうだ、そんな私が最近、何度も呼ばれてしまう場所がひとつあった。

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瀬戸内の海。

尾道、直島、豊島、倉敷、児島・・・、ここ5年くらいで、不思議なほど何度も瀬戸内に行っている。もう一度、という欲求のない私が、なぜか何度も。わざわざ行くというよりは、仕事や縁があってということも多いので、惹き寄せられている、という方が正しいかもしれない。

転勤族の子どもだった私は、太平洋側の海沿いに住んでいたこともあるし、福岡の日本海のすぐ近くに住んでいたこともある。育ちは横浜で、みなとみらいや江ノ島もよく行った。

けれど、社会人になって初めて見た瀬戸内の海は、これまで見た海と全然違った。
海って、こんなに優しい表情をするんだ。
静かにゆうらりとろけていて、心が洗われる。

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そんな瀬戸内海のゆらぎを、一日中見ていられるのが、岡山県・児島にある「DENIM HOSTEL float」だ。すみません、やっとホテル名を書きました。

児島は岡山の南端で、瀬戸内海にせり出した半島。海岸から1分ほど坂を上がった小高いところに、このホテルはある。つまり、目の前が海で、海の向こうに朝日も夕日も見れて、すぐに海辺へ遊びに行くこともできるという最高なロケーション。

児島のデニムブランド「EVERY DENIM」の拠点でもある、このホテル。EVERY DENIMのデニム兄弟、山脇くんと島田くんは4年前くらいから友達で、それこそ「HOTEL SHE,OSAKA」にポップアップイベントのために一緒に行ったり、デニム工場に行ったり、いろんなところに連れ回してもらった。

彼らの、児島のデニム工場のおっちゃんたちとの癒着具合はびっくりするほどで(とっても仲がいいということね)、本当に信頼関係を築いてきたんだなあと感心する。ただデニムを売りたいのではなく、それをつくっている人たちや、瀬戸内の景色を伝えたいんだと。もともとデニムを通して伝えてきたけれど、一番は来てもらうことだから、ということで、泊まれる場所を作ったそう。それは正解だ。来ないとわからない空気がここにはある。

内装は、畳の淵をデニム生地にしていたり、和室にデニムの掛け軸がかけられていたりと、こだわりがすごい、らしい。というのも、実は、去年9月にオープンしてから、まだ行けてないのです。(本当は3月行く予定だったのだけど、この状況で叶わなくなってしまった・・・)

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けれど、完成前の工事真っ只中に、ひとり、和室に泊まらせてもらった。そのときに、みんなでSUPをしながら日の入りを見届けた凪の海、起きた瞬間から目の前で朝日がきらきらゆらめく海、空とグラデーションになった青い海を、忘れられないのだ。

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なんなら、泣いた。海が優しすぎて。

ずうっと見ていると、子どものころ咲き乱れていた感性が、情緒が、戻ってくる気がした。私なんてこの海からしてみれば本当になんてことはない一瞬の存在なんだなあという気持ちにすらなった。

「float」の名の由来は、「浮かぶ・浮かれる・浮かべる」というコンセプトから。(最初聞いたときは、プールの浮き輪を連想して、はて?と思っていたんだけど)たしかに、この場所にいると、そんな気分がよく分かる。瀬戸内のゆらぎのなかに、自分をゆっくり浮かべて、そのまんまずっと浮かんでいたい。そして、東京にいても、彼らのデニムを履くと、あの景色が思い浮かんでしまう。

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それにしても、なんで最近まで行ったことすらなかった瀬戸内に、こんなにも懐かしいような親しみや、得も言われぬ安心感みたいなものを感じるのか、私にも分からない。

ひとつ縁があるとすれば、兵庫育ちの父と福岡育ちの母が出会い、学生時代を共に過ごした場所が、岡山。

細胞が何かを覚えているのかもしれない。

けれど、理由もなく何かに惹かれていること、そしてその良さを言語化しきれないことは、むしろそのままでいいやと思う。好きってそういうことなんだろう。

早く安心な世界で、floatへ旅に出たいな。

あ、ちなみに、こちらで、未来の宿泊券も買えるみたいです。

文・写真:若尾真実(編集者)


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