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1カ月におよぶHOTEL KUMOIトライアルの成果とその後

この秋、私たちは北海道にあるHOTEL KUMOIのコンセプトをリニューアルするためのトライアルを実施しました。4泊5日の長期滞在のみ、滞在中には食事やアクティビティーを全て体質に合わせてカスタマイズしてご提案するという、これまでにない宿泊体験を作るべく準備をし、想定を大きく上回る方からの宿泊希望のご応募をいただくことができました。

そこで、1月より、今回の発見や反省を生かして、さらにパワーアップしたトライアル第二弾を実施することにいたしました。お客様の体質に合わせた食事やドリンク、アクティビティの処方はもちろんのこと、今回は東洋医学をベースに、漢方医とのコラボレーションなどを実現します。

まずは、1月以降の宿泊の応募を本日開始いたします。もしも新生HOTEL KUMOIが気になるという方は下記のフォームに詳細がありますので、是非ご覧ください。


そして、今回の記事では、1カ月におよぶトライアルの成果と今後の展望について、私龍崎とHOTEL KUMOI支配人の池田が語らせていただきます。東洋医学をベースにした新しい体験についても紹介をしておりますので、これまでの経緯と合わせて、是非読んでいただけると幸いです。(今回の記事は、途中まで無料にしてあります!)。


※これまでの経緯はこちらをご覧ください。


一番の思い出は「人との出会い」にある

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龍崎:秋シーズンのトライアルが、無事終わりました。今日は、まずその振り返りからしたいと思います。当初、人が集まるのかなと心配していたにもかかわらず、ありがたいことに定員をはるかに上回る方々にご応募いただきました。本当に一部の方しかお招きできず心苦しかったのですが、少しでも多くの方をということで、もともと2週間だった予定を4週間に延長しての実施となりました。提供する内容を少しずつ変えて、雰囲気も毎回異なっていたのですが、中でも最終週は一番印象的だったんじゃないかなと思います。

池田:そうですね。最終週で「これからこの形でやっていけるんじゃないか」という手応えを感じました。

龍崎:私も「自分たちがしたかったソーシャルホテルって、これだったのでは?」と感じました。お客様も、はじめはグループごとにそれぞれで食事をしていたんですけど、最終日には全員で食卓を囲んだり、お客様同士で小旅行に出かけたりと、少しずつ距離を縮めて仲良くなっていかれるのを見て、何だか感慨深かったです。レビューも、本当に泣きそうになるくらいすごく良いことを書いて頂いていて。

池田:帰り際、お客様でグループLINEも作っておられましたよね。「またこのメンバーで会おう」みたいな約束もされていて。

龍崎:個人的にもとても思い出深いですし、「この方向でやっていけそうだ」と今後のリブランディングへの気持ち的な後押しにもなりました。もちろんリトリートの内容もあるとは思いますが、それ以上に、人との出会いによってメンタル的にすごい浄化された、デトックスされたというのが大きいのかなと想像しています。普段生活している環境とは全然違う場所で、普段会っている人とは全然違う、いわばお互い一切関係のない人たちと出会い、返って正直になれて語り合えたりすることってあるよな〜と私も思いました。

池田:そうですね〜。もともと、来年もまた来てもらえるリトリートにするためのコンテンツ作りとして、ボディメンテ・メンタルメンテのような体験を構想したところから始まりましたが、実際に4週間やってみると、やっぱり強いと思ったのが「人」でしたね。もちろん、体験の内容は大切ですし、カスタマイズされる特別感や秘境ならではのデトックス効果なども感じてもらいたいんですけど、そこで出会った人たちとのコミュニケーションが、お客様にとってもこのリトリートでの何よりの産物になったのではないかと思うんです。

1回の滞在でお招きしたのが約10名という人数にも要因はあって、30人や40人を同じタイミングでお招きしていたら、人間関係はもっと希薄なまま帰る形になっていたと思います。「こうやって人は分かり合うんだ」みたいな、人と人のコミュニケーション像をずっと眺めながら、それを手助けさせていただけていることを強く感じることができました。あらためて「接客って、いいなぁ……」と実感しましたね。最後のフィードバックとか、ちょっと本当に泣きそうでした。何とか涙を堪えてたレベルで……(笑)。

龍崎:本当に、心に残るトライアルになりました。今回「他の人と話したい、仲良くなりたい」と来てくださった方はきっとほとんどいないと思います。そういう方々が、結果的に、他者を通して新しく自己を発見するようなプロセスを経験することができた。それがすごい印象的でした。これって、再現性を持たせるのが難しいと思うんですけど、私たちはその空間というか光景に立ち会うことができたので、今後来てくださるお客様にも同じような経験をしてもらえるよう良い空間作りをしていきたい、というのはありますね。このように考えても、やっぱりトライアルの収穫はすごい大きかったです。単純にフィードバックをいただけただけでなく、お客様に私たちが目指すべき指針を見せていただけたというのが良い体験になったなと思います。

池田:本当に、お客様に色々教えていただきました。


物理的な距離がホテルにとってのメリットに変わる

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翔子:振り返ると、私ははじめて層雲峡を訪れたときから、「層雲峡って仙人が住んでそうだな」と思っていて(笑)。中国の水墨画の中の世界のようだと表現されることも多いんですけど、不老長寿の妙薬があると語り継がれてそう感というか・・・。層雲峡のような光景を見られる場所って、日本ではほとんどないんじゃないかな。

池田:層雲峡という土地の持つ力、すごいあると思います。たしかに、めちゃくちゃ遠くて、今まではその物理的距離がマイナスになっていた部分もありました。でも、それも捉え方の問題で、今回の場合はプラスに作用しているんですよね。飛行機に乗り、電車やバスに揺られ、どんどんどんどん奥地へ、未知の世界へ入っていくような感覚が、めちゃくちゃいいんです。千と千尋の神隠しの、パッと開けるシーンと同じ感覚というか。

龍崎:分かります。サービスだけとれば、例えば熱海や城崎のような近場でもできますよね。でも、この遠い道のりが、いわば憑物を落とすためのプロセスとして、このリトリートの一部分でもあると捉えています。誰もが、衝動的にとにかく遠くに行きたい気分になったことがあると思うんですけど、そういうときこそ、このリトリートに来ていただきたいなと思っていて。HOTEL KUMOIに辿り着くまでの時間に、自分のモヤモヤを整理してみたり、元いた場所から遠く離れた異世界に向かうようなわくわくした感覚になってもらえれば嬉しいです。

池田:行きだけじゃなく帰りの道のりも、HOTEL KUMOIでの生活を振り返ったり考えを整理したりする時間になりますよね。

龍崎:あと、知らない街でその日のホテルを見つけるまでって何だか心細いんですけど、ホテルを見つけて入ったとき、すごく安心するじゃないですか。そういう意味で、お客様には、HOTEL KUMOIに辿り着くまで「大丈夫か…?この道合ってるのか…?!」ってめっちゃ心細くなってもらって、私たちが温かくお迎えしてめっちゃ安心してもらいたいです(笑)。ともかく、そんな「層雲峡」という街や名前が持つ他の場所にはない力を、もっと引き出せるようなサービスができたらいいな、と以前から漠然と思っていました。

あと、実は、古性のちさんのnote記事で、スリランカにあるアーユルヴェーダ治療院っていうリゾートを知って、すごいインスパイアされたんです。

スリランカとかインドとかでは、そのエリアの持っている健康とかウェルネスに関する思想や哲学が、一種の観光商品として世界に広まっているじゃないですか。一方で、日本を含む東アジアには、東洋医学という数千年にわたって体系化され根付いてきたこれまた独自の思想や哲学があるのに、それを体験できるような場がほとんどなく、観光資源としての活用もされていない。それがとても勿体無いなと、それこそアーユルヴェーダリゾートの東洋医学版みたいなものが出来たらいいのになと思っていたんです。だから、HOTEL KUMOIのメンバーが「ウェルネスリゾートにしたい」と言ってくれたとき、「HOTEL KUMOIはその方向性で変われるポテンシャルすごく高い!やりたい!」って思いました。


トライアル第二フェーズに向けた新たな挑戦

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龍崎:ということで、次はもっと東洋医学的な健康思想をもっと体現できるような形にホテルを作り替えたいと思っています。

池田:具体的なコンテンツ構成としては、まず、漢方専門相談員の問診を通してその方にあった漢方薬を処方したいと考えています(もちろん、薬事法に乗っ取って医薬品の登録販売者によって行われます)。秋のリトリートでは、国際中医薬膳師の塚本さんに監修していただき、お客様一人ひとりの体質に合わせたお食事を朝昼晩とご提供したのですが、それがすごく評判が良かったんです。出てくる料理がそれぞれ違ったり、なぜそれが自分の体に良いのかを知ることができたりして、パーソナライズされてるからこそ「しっかり自分の体と向き合う機会になって良かった」と言っていただけることが多くて。

それをさらに深める形で、今度はお客様の体調やお身体の悩みに合わせて漢方を処方し、実際に飲んでいただいて、心身の変化の兆しを感じていただけたら嬉しいですね。あとは、鍼灸。これも、ベースにある考え方は漢方と同じですが、お客様一人ひとりの体の不調の箇所にピンポイントに対応できます。そんな形で、お客様にご自身の身体に向き合い、整え、そしてご自宅に持ち帰っていただけるような体験をご提供していきたいと考えています。

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龍崎:生薬・鍼灸・推拿の3つが東洋医学の基本で。次のトライアルでは、漢方専門相談員の問診をベースに、お客様のお食事、漢方薬、薬膳茶、ボディトリートメントなどが全部デザインされたオールインクルーシブの体験にしたいと考えています。毎日足湯に入って足ツボをして鍼灸をしてよもぎ蒸しをして温泉に入る、みたいな贅沢なルーティンでお身体を整えていただけたらと思っています。

池田:僕、今回のリブランディングの考えに至るまで、正直、東洋医学に全く触れたことなかったんです。鍼を打つとか、漢方とか、昔からの実験とフィードバックの積み重ねによって導き出された医学という感じじゃないですか。で、ちょっと胡散臭いなあなんて昔は内心思っていたところがあって。

でも、はじめて鍼を体験してみて、これがすごかったんです。めちゃくちゃ効くんですよ。悩みを抱えている体の部分のコアを、こんなにピンポイントで刺されるとは思いませんでした。僕、本当に首がダメで、つねに凝ってたんですけど、鍼を打ってすごい軽くなった。しかも鍼刺さってるところって、指で届かないところだから、もう心臓ギュッとされてるような感覚で、ちょっと感動しました。

龍崎:触られたことないやん、そこ!って感じですよね。

池田:僕の中ではそれこそ新体験でした。東洋医学って、もちろん言葉は耳にしますし、関心があるって人も少なくないとは思うんですけど、実際体験したことがある人とか、その効果を芯まで理解している人って、あまりいないですよね。そういう、新しい世界を見てもらう一助になれるっていうのはすごいL&Gらしいですし、事実、体の調子が良くなっていくという点でも、お客様にご提供する価値のある内容だと確信しています。

龍崎:私、漢方薬のお店に行ったことがあって、問診されて処方してもらった漢方を飲んでいたこともあったんだけど、湯煎して毎日飲むのって、結構ハードル高いんです。ついサボっちゃったり忘れちゃったりするんですよね。同じように、「健康的な食生活をしましょう!」「五味五色を食べましょう!」と言われて「よしやるぞ!」ってやる気はあっても、毎日3食健康に気をつけて自炊出来るかといわれると実際は出来なかったりする。あと、なんとなくいつも腰が痛いとか、浮腫んでるとか、そういう細やかな不調はあるけど、クリティカルな病気をしているわけではない場合に「どうしたらいいんだろう」ってなることって、結構あるのではないでしょうか。

そこで、東洋医学的な考え方を学んで実践してみると、フィジカル面が良くなるのもそうだけど、メンタル面もすごい整って、前向きになれたり、今日も頑張ろうという気持ちで起きれる朝が増えたりするんです。でも、自分の普段の日常生活の中でそれを始めるのってやっぱり難しい。リゾートなどで、ライフスタイルを完全にコーディネートしてもらった上で生活習慣を作って、それを自宅に持ち帰る方が、はるかにハードルが低いですよね。そういう意味で、このリトリートでは、滞在期間内で大きく変わるっていうよりは、深夜まで仕事したりコンビニ食ばかりだったりと自分の心身を労る時間を全然作れないでいた人が、生活習慣を整えるきっかけにしていただければと思います。

池田:お客様とは、滞在後もLINEでコミュニケーションを取り続けられようにしています。いつもの生活に戻ってからもHOTEL KUMOIで体感したライフスタイルや知識を実践していただく中で、やっぱりどうしたらいいか分からないということもあると思うので、そんな時に相談していただければなと思って。トライアルを通して、僕たちも、スタッフとお客様の関係に留まらない、人と人としての近い関係を築けたと思うので、出会えた方々とずっとコミュニケーションを取り続けていたいですし、心身や生活をより良くしていただくお手伝いも続けていきたいです。そして、いつかまたお顔を合わせることができたら、すごく嬉しいですよね。あと、LINEで繋がっていることで、お客様の頭の片隅にずっとHOTEL KUMOIの存在や層雲峡での生活の記憶を置いておいていただける。それこそ、「ここが私のアナザースカイ!」みたいに思ってもらえたら、なんて願いもあります(笑)。

龍崎:層雲峡をアナザースカイにしてもらえるなんて、最高です(笑)。


ホテルが選択肢を提示することの意味

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