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音楽で旅に出よう。竹田ダニエルさんによるプレイリスト“Trip (Find Yourself)”|幻のなつやすみvol.3

いつもと違う夏がやってくる。それは、今までのように気軽には遠くへ行けない夏。いつもの「夏休み」は幻となってしまいました。そんな中、日本中の素敵な観光地は今どうなっているのか。そもそも「旅行」はこれからどうなってしまうのか。「HOTEL SOMEWHERE」では、見えない観光の未来を少しでも考えてみたくて、「幻のなつやすみ」という連載を始めます。ここでは、いろいろな理由で旅をする人、観光地に関わる方々のリアルな声をお届けします。

第3回となる「幻のなつやすみ」企画では、様々なアーティストのエージェントやAWA公式キュレーターなどを務め、HOTEL SHE, でも関わっているSustAimの発起人でもある竹田ダニエルさんによる「音楽の旅」をテーマにしたプレイリストをご紹介。気軽に旅に行けない中、音楽を聴くことは、ある意味で別の空間へトリップするかのような高揚感が得られるはず。今回は竹田さんに「旅をテーマにした選曲」と文章の執筆を依頼しました。架空のホテル「HOTEL SOMEWHERE」で聴いてほしい至極の曲たちを堪能してみてください。


音楽で「自分を知る旅」に出よう

音楽は、潜在的な感情を呼び覚ます効果があります。「好き」な感情もあれば、「嫌い」な感情もありますし、自分が持っていることにさえ知らない潜在的な感情もあります。あなたの中のその感情には、本質的に良いか悪いか、正しいか間違っているかという価値観は存在しません。だからこそコントロールしようとせず、揺さぶられるような感情も、深く沈んでしまうような感情も、そっと抱きしめてあげることが大切です。

例えば「マインドフルネス(『この瞬間』を大切にする生き方)をすることにより、ストレス軽減や集中力の強化などの効果が得られるとされています。ありのままの瞬間の感情を受け入れるという行為をサポートするために音楽作品を用いることで、自分の心の中へと意識を戻すことができます。

音楽は「手段」として、踊らせてくれたり、楽しせてくれたり、失恋を乗り越える力を与えてくれたり、逆に思いっきり悲しい気持ちにもさせてくれます。しかし、「ある感情」を音楽から「受け取る」のではなく、自分の内側で潜在的に渦巻く感情に目を向け、そっと受け止めることで、安らぎと安心感を得ることができます。音楽を聴くことで、あなたの心の中の世界を浮遊する旅に出かけて見てはいかがでしょうか。

「音楽とストレス軽減・精神安定の向上」については、科学的な研究も多く行われています。好きなアーティストの曲でなくても、いわゆる「ムード系」のプレイリストをディグしてみることで、新たな音楽の楽しみ方、または新たな感情の一面を見いだすこともできるかもしれません。


音楽と健康の科学的な関係

音響機器メーカーのオーディオテクニカは、音楽と身体・精神の健康の関連性について以下のように述べています。

音楽は脳内の様々な化学反応を誘発し、リラクゼーションに貢献します。ストレスホルモンの減少から幸福感の刺激に至るまで、音楽は多くの場合において、瞬時に良い気分に切り替えさせてくれます。このような『気分を良くする』効果は、ストレスや不安レベルの低下、睡眠パターンの改善、総合的な健康と幸福度の向上など、身体にとっても長期的にプラスの効果をもたらします。

(参照元:https://blog.audio-technica.com/science-behind-relaxing-effects-music/)

1995年に発起された、インターネット上で最大かつ最古の独立系メンタルヘルスオンラインリソースであるPsych Centralは、音楽の持つ「ストレス解消のための音楽の力」について特集の記事を組んでいます。

音楽の持つ癒しの力は定評があります。音楽は、私たちの感情と特別なつながりを持つため、非常に効果的なストレス管理ツールになり得ます。

音楽を聴くことは、心と体をリラックスさせる効果があります。特にゆっくりとした静かなクラシック音楽が効果的で、この種の音楽は、脈拍や心拍数を遅らせたり、血圧を下げたり、ストレスホルモンのレベルを下げたりと、私たちの生理機能に有益な効果をもたらします。

音楽は私たちの意識を引きつけると同時に、気晴らしとしても機能し、感情を探究するのに役立ちます。つまり、心の迷いを防ぐために、瞑想の大きな助けとなることを意味しています。

音楽の好みは個人によって大きく異なりますので、あなただけが好きなものとそれぞれの気分に適したものを選んでみてください。普段クラシック音楽を聴かない人でも、心を落ち着かせる音楽を選ぶときには試してみる価値があるかもしれません。

人はストレスが多いときには、積極的に音楽をあまり聴かないという傾向があります。もしかしたら、それは時間の無駄で、何の役にも立たないと感じているのかもしれません。しかし、ストレスが軽減されると生産性が上がることは既に研究で知られているので、これも大きな報酬を得ることができる分野の一つです。最初はちょっとした努力が必要です。

忙しい生活に音楽を取り入れるには、車の中でCDを流したり、お風呂やシャワーの時にラジオをつけたりしてみましょう。犬の散歩にはケータイに音楽を取り込んだり、テレビの代わりにスピーカーをつけてみましょう。臨床的うつ病や双極性障害の人は、最悪で最低の気分の時に音楽を聴くとよいでしょう。

また、歌いながら(または叫んで)歌うことは、緊張をほぐすのに最適です。就寝前の心を落ち着かせる音楽は、平和とリラクゼーションを促進し、睡眠を誘発するのに役立ちます。

(参照元:https://psychcentral.com/lib/the-power-of-music-to-reduce-stress/#:~:text=Listening%20to%20music%20can%20have,the%20levels%20of%20stress%20hormones.)


プレイリスト“Trip (Find Yourself)”

暗くした部屋の中で優しい香りのアロマに包まれながら、深呼吸をする。このプレイリストには、そんな「自分だけの、自分のための時間」の時にぜひ聴いてほしい曲たちを選びました。


Borderline (Jordan Rakei) 
オーストラリア出身、ロンドンを拠点とするマルチ・プレイヤー、ジョーダン・ラカイのアルバム『Origin』より。UKの最旬ポップとネオ・ソウルのハイブリッドであり、美しく、宝石のように光を放つ歌声のショーケース。アルバムのデラックスバージョンに収録ということで後から発表されたが、控えめなトラックの上を浮遊する声の自由度がボーカリストとしての彼の実力を大きく示している。暖かく包んでくれるような歌声に深く溺れてみて。

While We’re Young (Jhené Aiko)
全米3位ヒットを記録した2014年デビュー・アルバム『Souled Out』でブレイクを果たしたロサンゼルス出身のR&Bディーヴァ、Jhené Aikoのセカンドアルバムより。このアルバム「Trip」のコンセプトは、大麻、LSD等による幻覚的な高揚感を音に変換しようというもので、まさにこのプレイリストにぴったりな曲たち。自己治療や悲嘆に暮れた心の中を旅するだけのものではなく、むしろ、現実や自分自身から逃避するための自由を音楽で与えてくれている。

Line of Sight (ODESZA)
シアトル出身の2人組、ODESZAによる、幻想的な世界観の中でも重みのあるビートの効いた曲。「チル」と表現されることの多い彼らの音楽は、自宅のソファや自然のある公園、または広大な自然の中でゆったりとリラックスするためにぴったりなものが多い。EDMにも通ずる、ポップに輝くシンセのメロディが特徴的で、伸びやかで大きなスケール感を内包した歌のメロディとロマンチックな局長が印象的。WYNNEのキャッチーなヴォーカル・メロディに、Mansionairのヴォーカルが加わり、ラストのコーラスでは、感動的な映画のラストシーンような雰囲気を醸し出している。また新たな日が昇り、その度に記憶は蘇る。そんな広大な地平線を想像させてくれる、電気ショックのように痺れる音楽。

Nyhavn (TAMTAM)
東京を中心に活動するフィール・グッドな、ダブ・レゲエ要素を取り込んだバンド、TAMTAM。彼らにとっては珍しい打ち込み曲なのでライブで聴けないのが、それがまたレアな宝石ぽくて最高。2018年に発表されたアルバム「Modernluv」は日本の音楽界の中でも驚異の音作りであり、かなり挑戦的でありながらも「TAMTAMらしさ」が炸裂していて悶絶もの!ミステリアスな空気感の中で歪に揺れる声のレイヤー、得体の知れない音が渦を巻き、まるで煙に包まれたような感覚になる曲。

Overdose (with HONNE) (SG Lewis, HONNE)
「心揺さぶるダンス・ミュージック」の作り手である、イギリスをベースに活動する若手エレクトロニックDJ、プロデューサーSG Lewisと、クリーンなエレクトロポップを生み出すデュオHONNEによるコラボ曲。個人的な2019ベスト10に間違いなく入る、SG LewisとHONNEの二組の音楽性の良い部分の化学反応によって生まれた、奇跡のような曲。スモーキーな歌声にハーモナイザーをかけ、何重にもバックコーラスを重ね、サビ前のビルドアップでリスナーを錯乱させるようなパンニングをぶち込み、何から何まで「恋に落ちる高揚感と幸福感」を演出している。この曲を聴けばいつだって恋愛気分に浸れる。

On The Go(POPS研究会)
POPS研究会は、日本でポップ・ミュージックを研究し、世界に向けて提案していくアーティスト・溝口真矢(starRo)による音楽プロジェクト。「作りたい音楽と純粋に向き合い、伝えたいメッセージで日本語歌詞で書き、ポップ・ミュージックという現代音楽のパッケージに変換することを目的としている。特定のジャンルに縛られることのないその「気持ちのいい音」に、全神経が溶けていく。男性的でも女性的でもない歌詞の言葉遣いや「音楽への愛」が伝わる高揚感は、まさに内面と向き合ってきたアーティストから贈られるメッセージである。

Prayed Up (Summer Walker)
ジョージア州アトランタ出身のニューディーバ、サマー・ウォーカーが2018年にリリースしたミックステープより。部屋を暗くして、目を閉じて、ビートに心を任せよう。神秘的な歌声に心を酔わせ、自分の奥深くに潜っていく。心が落ち着くような、内在的なエモーショナルな曲が多いアルバムの中でも、特にセラピー的要素の高い曲。

Fly - FKJ Remix (June Marieezy, FKJ)
アンビエント・ソウル・ジャズを自在に織り交ぜることで定評のある、「フレンチ・エレクトロの最終形態」FKJと妻のJune Marieezyによるコラボ曲のセルフリミックス。魔法をかけてくるようにキュートなボーカルと、ファンタジーの世界へとトリップさせるような楽器のアレンジ。タイトル通り、好きな人のところまで飛んで行きたくなる心境を表現した、愛の結晶のような、あまりにも美しい曲。

Anxiety (Shin Sakiura)
プロデューサー兼ギタリストであり、SIRUPをはじめとするのアーティストなどに楽曲提供を行っているShin Sakiuraの新アルバムより。初夏の朝、爽やかな太陽が暖かくて時折吹く風からは海の香りがほのかに感じられる。この曲を聴くだけで、そんな海辺の町にトランスポートされる。タイトなパーカスとベースラインの上でおどり、膨らむメロディラインの開放感、そしてブラスを取り入れてきたのは特に新鮮!聴くたびに、リスナーの”Anxiety”(不安症、不安感)を受け入れつつも、光のある方へと導いてくれるような曲。


こちらの記事で紹介した曲、そして同じテーマで是非一緒に聴いていただきたい曲を合計で25曲まとめたプレイリストがこちらです!お仕事や勉強、コーヒーブレイクのお供にぜひ。


文章・選曲:竹田ダニエル


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