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渡り鳥のように。夫婦で営む京町家コテージkarigane|偏愛、わたしのホテル #7

L&Gで働くスタッフや、いつも応援してくださる皆様と一緒にお届けしてきた「なくならないでほしいホテル」から派生して、新連載をスタート。ホテルの中の人を執筆者に迎えた「偏愛、わたしのホテル」をどうぞお楽しみください。

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「下岡さん、決まりましたよ。オッケーですって!」

不動産屋さんの営業マンである浜田さんから電話があったのは、今からちょうど4年前の6月6日、僕の誕生日のことだった。


■ 町家との出会い

2016年。世界一周の旅から帰った僕と妻の莉香は、京都で町家の宿を始めると心に決め、3か月にわたって物件探しを続けていた。

当時はインバウンドブームが最高潮の時期で、物件探しは難航を極めた。しかしついに僕らは、ある一軒の町家に一目ぼれし、浜田さんに賃貸契約交渉を依頼した。

それが今、僕たちが運営する宿、京町家コテージkariganeです。

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偶然前を通りかかったときに、カフェ閉店のお知らせが入口に貼ってあった。「こんな可愛い町家が借りられるといいのにね」と話していたそのときは、まさか本当に借りられるとは思ってもみなかったのだった。


■ 職人さんとの出会い

僕たち夫婦は、いつも行き当たりばったりで生きている。
冬の寒いのは嫌だからアフリカへ行こうとか、そろそろ夏だから涼しいフィンランドへ行こうとか。

まるで渡り鳥のように。

「町家を改装して宿にする」と言ったって、工務店で見積もりとって発注して…みたいな、教科書通りなことは何だか面白くない。

そんな僕らに、神様がやきもきしたんだろう。

僕らは偶然、大工の「龍ちゃん」と、左官の「ぱいせん」に出会った。プロの2人にリードされつつ、まるでジャズセッションをするかのように、町家の改装を成し遂げた。

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借りられる町家を探してお散歩をしていたときに、改装している町家を発見。気になって覗いていると、にこにこしながら中から大工さんが出てきた。それが風来坊の大工さん龍ちゃんとの出会いだ。旅する左官職人さんも仲間に加わり改装すること9か月。みんなであーだこーだアイデアを出し合いながら作った町家は遊び心にあふれている。

おかげで京町家コテージkariganeは、ど真ん中にクラシカルな日本建築でありながら、素人っぽい遊び心を散りばめた、僕ら好みの宿になりました。

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■ 茶の湯との出会い

「あんたら、お茶習ってるんか?」
「お茶?習ってません」
「そらあかんがな!明日と明後日、うちでお茶のお稽古あるから、来なさい!」
「はぁ」

と、近所のお寺の和尚さんにすごまれたのが、僕らと茶道の出会いだ。

茶道、か。堅苦しいのは嫌いだ。しかし「堅苦しいのが嫌い」と決めつける自分は、本当につまらない奴だ。

いいだろう。世界一周の旅を通して、南米のマテ茶、エチオピアのコーヒー、トルコのチャイなど、世界各地で固有の喫茶文化が面白いなと思っていたところだ。日本の茶の湯がどれほどのものか、見極めてやるぜ!

和尚さんもまた、神様が僕らのために遣わせた使者だったのかもしれない。

おかげで京町家コテージkariganeは、すっかり茶の湯がコンセプトの宿になりました。お客様がチェックインの際は、美味しいお抹茶とこだわりの和菓子でお迎えいたします。

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■ 「出会いを楽しむ」旅を

人生は旅、旅は人生です。

「絶対に成功するための人生の攻略本」がないように、「誰でも満足な旅ができるガイドブック」はありません。

もちろん、素敵な旅をするために、計画を作ることは大切です。しかし旅くらい、偶然に期待し、予期せぬ出会い楽しんでいただきたいなと思っています。

京町家コテージkariganeは、金閣寺や二条城といった世界遺産も遠くありません。しかし、有名な寺社仏閣を一つでも多く巡るスタンプラリー!みたいな旅には適していません。
かわいいtokyobikeの自転車をこぎながら、公園でネコの写真を撮りつつ、パン屋さんやカフェに立ち寄って、有名な観光スポットもひとつかふたつ。そんなゆるめの旅に最適です。

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■ こんなときだからこそ

「こんなときに旅するなんて馬鹿げている」。世界中で多くの方が、そう思われているでしょう。

しかし、こんなときだからこそ、出会えた人々がいる。HOTEL SOMEWHEREも、noteも、今これを読んでくださっている貴方も。本当にありがたいことです。

CHILLNNの「未来に泊れる宿泊券」にも参画中です。クラウドファンディングも始めました。宿の存亡をかけて、いろんなことやってます。

ご支援いただけるのは、本当にありがたいです。しかし、実際に貴方にお会いできるならば、それが僕らの一番の喜びです。

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長い文章をお読みいただき、ありがとうございました。

まるで渡り鳥ような、ジャズセッションのような貴方の旅に、僕ら夫婦が参加できる日を、楽しみにしております。

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文・写真:下岡広志郎(京町家コテージkarigane)


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偏愛、わたしのホテル|過去の連載一覧より



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