『無花果の実り』

けして振り向いてくれない人に
恋をしました。

どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして
どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして
ーー振り向いてくれない、不幸に
どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして
ーー溺れて。

「君には、見どころがあるね」
はい、なんのお話か分かりませんが
「なかなかいいと思うんだ」
どういうこと。冗談はやめてくださいな
「買ってあげよう。いくらなんだい」
タダでいいから、抱きしめて。

失恋した日の 夜のことでした
見も知らぬ人に 抱かれたのでした
涙を流しながら 押し寄せる快楽
後ろから突かれて 声をあげるばかり

「気持ちいいのかい 淫乱な奴だ」
そんなことない。ただ今日は
「失恋でもしたのかい」
どうしてわかるの
「ここに来るやつは みんな そうさ
失恋した その日に 他の男に 走るのさぁ!」

それから夜通し 抱かれ続けました
髪をふり乱して 喘ぎ声は叫びに
男が煙草を吸うといい わたしから離れました
顔を拭いたハンカチはあのひとの匂いがしました

「失恋しちゃったんだって」 みんなが心配してくれます。
「もっといい人いるよ」いい人なんていません
「あンたの身体良かったぜ」 例の男からメール
イヤ、嫌、いやなのに、 堕ちてゆく、快楽。

どこに…いってしまったんでしょうね
思い出してみましょうか、昨日までの私を。
指先が触れれば、うれしかったぁ…
「おはよう」の一言も春の日差しのようだった

「おいお前何考えてる」聞こえないふりを しました。
失恋は彼と私の関係を 神聖なものへと 変えたのです
「こっちむいて しゃぶれよ」 身体は素直に感じます
それがどうしたというのです 私の心は彼のもの

どうして、どうして、どうして、身体は快楽の人形
それでも、それでも、それでも、 心は純潔の乙女
嫌、やめて、お願い、 偽りの拒否で遊んで
心だけバージン やめてやめないでお願い

「君には、見どころがあるね」
はい、なんのお話か分かりませんが
「なかなかいいと思うんだ」
どういうこと。冗談はやめてくださいな
「買ってあげよう。いくらなんだい」
タダでいいから、抱きしめて。

失恋した日の 夜のことでした
見も知らぬ人に 抱かれたのでした
涙を流しながら 押し寄せる快楽
後ろから突かれて 声をあげるばかり

「気持ちいいんでしょう 淫乱な子ね」
そんなことない。ただ今日は
「失恋をしたのね」
どうしてわかるの
「ここに来る子は みんな そうよ
私と 傷を 舐めあい ましょう!」

知っていますか?女の子のハートが傷つくと
甘い甘い蜜が出てくるのです
貴女にも、貴女にも、甘い蜜が隠されている
みなさんは皆その蜜をあふれさせるために生きている
不幸の味は蜜の味。失恋?蹂躙?差別?孤独?奴らは私たちの調味料

振り向いてくれない不幸からは、追いかけ続ける切なさを
甘美な苦しみに身をよじる、悲劇のヒロインの陶酔を
味わうために生きている。さあその傷口を開いて
私に見せてちょうだい。その赤い果実を
私たちのお茶会は、今始まったばかり。

どこに…いってしまったんでしょうね
思い出してみましょうか、昨日までの私を。
指先が触れれば、うれしかったぁ…
「おはよう」の一言も春の日差しのようだった
「あらあなた泣いているの」 聞こえないふりを しました。
胸の傷はあの日の 忘れたくない思い出
「口を開けて 飲みなさい」 身体は素直に感じます
それがどうしたというのです 私の心は彼のもの

どうして、どうして、どうして、身体は快楽の人形
それでも、それでも、それでも、 心は純潔の乙女
嫌、やめて、お願い、 偽りの拒否で遊んで
心だけバージン やめてやめないでお願い

失恋した日の 夜のことでした
見も知らぬ人に 抱かれたのでした
涙を流しながら 押し寄せる快楽
後ろから突かれて 声をあげるばかり

振り向いてくれない不幸からは、追いかけ続ける切なさを
甘美な苦しみに身をよじる、悲劇のヒロインの陶酔を
味わうために生きている。さあその傷口を開いて
私に見せてちょうだい。その赤い果実を

貴女は今、不幸ですか?
それは誰かの処為ですか?
貴女の話、聞きたいな
私はね、不幸でいたいから

悲劇は煙草みたいなものだと
私は知っているのです。
全部自分の処為にしたら
それはね、きっとおいしい果実。

貴女は今、不幸ですか?
それは誰かの処為ですか?
貴女の話、聞きたいな
ひそかに熟れる、無花果の実り

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