それみくちぇいんず 脚本(ポエトリーリーディングタイミング指示付)

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■夏の残り香

「おはよう」
おはようございます。 …あの!0:06

0:07あなたに出会ったのは…
0:10十年前の、私でした 0:12

あの時の、私は、ずいぶんと絶望、していて、 0:15
自分のことは、なんでも、投げ出したい、気分でした 0:18
貴方に会って、わたしは、生きている意味を、みいだし、 0:21
迎えた夏、灼熱、胸を焼く言葉溢れて 0:24

ねえ、私を抱いて、私を抱いて、お願い。0:27
今すぐに、私の熱を、この魂が、消える前に 0:30
消えてしまうの、すぐに、大人になれば、忘れてしまうから0:33
今の私を、覚えていてください0:35

書くから、私、言葉を、書くから。0:38
消えないように鮮やかに、恋を愛を体温を 0:41
いつか私は、貴方も、この熱を忘れる、日が来ます0:44
-そうなる前に抱きしめて、この私の、真実を0:47

踊り、歌い、狂いましょう?0:50
青春という名の、神の、もとで0:53
おかしいヒトと、笑われてもいい0:56
どうか、どうか、奪わ、ないで 0:59

愛して、いるのは、あなただった、でしょうか、1:01
それとも、私の、激情、でしょうか。1:04
蝶が舞う、南国。ここはただの、教室なのに1:07
夢が覆う、現実。世界はすべて、彩られ。1:09

狂ったように、ノートに向かう、全部全部消える前に!1:12
狂ったように、ノートに向かう、明日の私に、託すバトン1:15
妄想を、描いて、想像で、くるんで、 0:18
都合のいい、貴方を、紙の上に、作りました 0:21

許してなんて、言わない。1:24
これは皆に、赦された罪。1:27
青春という名の、神のもとで、1:30
あなたがいないと生きていけませんと
高らかに謳うの!1:33

狂ったように、ノートに向かう、全部全部消える前に!1:36
狂ったように、ノートに向かう、明日の私に、託すバトン1:39
狂ったように、ノートに向かう、恋よ愛よ涙の滴よ 1:41
狂ったように、ノートに向かう、今すぐに私を抱きしめて! 1:43

1:44愛していたんです1:46
それって本当だったんです1:49
同じ孤独を知りながら1:52
響きあうような、恋だったんです。1:55
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■九月の雨と雲の切れ目

(以下、各行小節(約4秒)内でちょうどいい位置で言う)
9月だ 0:04
夏はどこへいったんだろう 0:08
空が青いなあ 0:12
もう秋の風が吹いている 0:16
あれ、雨 0:20
雨だ。0:22 … 0:24
濡れてしまいますね 0:28
あなたも、おひとりですか。0:32
私?私ですか。0:36
私も一人に、なっちゃったんです。0:40
いいえ? 0:44
自分から一人に、なったんです。0:48

(以下から、4秒1小節を埋める形となる)
0:52 大人になるのなんて、あっという間でした。0:56
さよならなんていつでも、簡単に言えるようになりました。1:00
たとえ嵐が吹いたって、私は強くなったので 1:04
折れることはないですし、倒れることもないんです。1:08

昔が懐かしいですよ、すべてが鮮やかだったころ1:12
青春時代の、特権ですよね。毎日ポエムを書いたりもして1:16
戻りたいかですって?戻りたいとは、思いません。1:20
だって弱い私は、弱い私は、嫌いなんです。1:24
『嫌い』だなんて。久しぶりに言いました。1:28
感情的な言葉なんて、使わない、ですものね。1:32

(ここから、泣き声のような弱さを入れて)
雨が、雨が、雨が降ってきましたね。1:36
全部を洗い流すような、雨が降ってきましたね。 1:40
この空は続いて、あの人のところにも 1:44
雨は降っているのでしょうか。空の上にも、降るのでしょうか。1:50

えっ、1:51 虹が。1:52

-----(虹をぼんやりと見上げながら久しぶりに少女の心で)
1:53 私はここにいるよ 1:55
私はここにいるよ 1:57
雨に降られても立ってるよ 1:59
弱いだけじゃ、もうないよ。 2:01
きっと今の私なら 2:03
貴方を支えることもできるよ 2:05
----

嵐の夜も、越えてみせるよ 2:08
あなたの心の嵐も、2:11
いっしょに、越えてみせるのに。2:14

-----(虹完全に消えて)
2:22 戻りたいかですって?戻りたいとは、思いません。2:26
大人になるのなんて、あっという間でした。2:30
さよならなんていつでも、簡単に言えるようになりました。2:34
たとえ嵐が吹いたって、私は強くなったので 2:38
折れることはないですし、倒れることもないんです。 2:42

ねえ、そうでしょう、2:44
ねえ、そうでしょう、2:46
あなた。 2:50
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あなたのいない日

(目をつぶったまま語る)
老婆 ここは、どこですかの。あんたは、だれ、ですかの
死神 死神さ
老婆 しにがみ、へええ。それでは、あたしは、死んだのかね
死神 (0:17)死ぬ前に会いにきたんです。あなたの魂を見定めに
老婆 魂。たましいね。あたしの魂なんか、そういいもんじゃありゃんせん。
   まぁ、見るっていうなら、どうぞ見ていってくださいな
死神 ばかに気風のいいおばあちゃんだ。
老婆 あたしゃね、これでもね、若い時は情熱家で通ってたんだよ。
死神 へえ、どんなふうだったんです
老婆 そうさね、(0:48)恋かね
死神 恋?
老婆 恋をしたよ、そりゃあたくさん。あ、いやいや、ウワキモノだったわけじゃあ、ないんだよ。
   両手いっぱいからこぼれだして、胸から熱いものがいっぱいあふれるみたいな恋を
   そうさね、1:05ゆたかな恋をしていたんだ。
死神 ゆたかな恋。それって、どんなふうだったんです。
老婆 暑い夏の日のように焦がれる恋もあったねえ。
   それがすうっと引いて、夕立の中泣いたこともあった。
   それから、台風が過ぎるのをじいっと待っていたこともあったねえ 1:30
死神 焦がれて泣いて嵐の中へ、なんだ、ちっともしあわせでないじゃないか。
老婆 1:37 ばかお言いでないよ。いちばん楽しいところでないかい。
死神 楽しい。
老婆 そうさね。みのらぬ恋ほどたのしいものはないんだよ。
死神 1:49 相変わらず変な女だ
老婆 変な女とはなんだい。失礼な奴だね
死神 あはは。変わらないな
老婆 ったく。あいつにそっくりだよ。あんたのその笑い方2:00
死神 あいつって誰だい
老婆 言っただろう、恋をしていたって。
死神 だからあいつって誰のことなんだい。
老婆 あいつは、あいつさ。私を置いて先にいってしまった
死神 2:17「迎えに来たよ。」
(目をあける)

語り 2:23空に一瞬光が差したように見えました。
   老婆となった少女の前に、何十年も前にいなくなった彼が
   2:30むかしの姿のまま立っているのでした。2:33

老婆 私のほうがすっかり年上になってしまった。
   ほら、待たせすぎだよ。あれ、おかしいね。手をとれないよ2:52
   あれ、おかしいねえ。そこに手があるのに。
   3:01はて。どうして、私の手はこんなにしわくちゃなんだろうかね
   手が、とれないよ、あんたに、さわれないよ。3:16

娘  おばあちゃん、おばあちゃん
老婆 うん?ああ、お前かい
娘  おばあちゃん、3:31こんなところで寝ていたら風邪をひくよ?
老婆 ああ、そう、そうだね。
娘  もう、暗くなってきたもの
老婆 3:45そうだね、それに雨も降りそうだ。
娘  何を見ていたの
老婆 昔の思い出を見ていたんだよ
娘  昔のおもいで?
老婆 3:55そう、あたしがあんたくらいだったころの
娘  わたしくらいだったころの?
老婆 あんたがわたしくらいになったら4:06わかるだろうさ
娘  4:10わたしが、わたしが、あたしが、あたしが、(娘がきょとんとしたような声からだんだん大人になり老婆の声へ)
   4:18このとしになってわかったことはねえ4:22

(切り替えて、娘が大人の女性になったかのような気づきの声へ、そしてだんだんと、演者自身の声へ)
4:24教えてもらったのは、世界はすべてそのまんま在るのだということでした。
喪うことも出会うこともすべてがとてもちっぽけで世界はわたしのために何一つ変わることなどなくて4:35
4:38それでもそのちっぽけな私ごと、いとしいのだということを、伝えたくて。4:46
4:49それを教えてくれたのは貴男であり、貴女であり、あなたでした。

子供 4:59ねえ、おばあちゃんはどこへいったの?
娘  5:06私が越える、5:09あなたのいない日。5:14あなたが越える、5:19わたしのいない日。

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