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【『藝人春秋』書評】「浅草キッドはいつだって俺を14歳にするのだ」BY・スタイリスト・伊賀大介

『ケトル』2012年12月号 Vol.10より

 や…やりやがった!!
 どこまでスクロールしても終わる気配がない(マジで)、メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』を読みながら、ボクは、心のずっと奥のほう©the blue heartsが、ビリビリ着ているのを感じていた。
 大人のコロコロコミックを標榜し、豪華13大連載!を引っさげ11月に発行されたばかりのこのメルマガ、一号目が12万字、二号目16万字!と兎に角尋常ではないボリュームである。勿論内容は言わずもがな最高。
 五十歳になった大人が、十四歳の感性を持って働き、遊び、子を育て、様々な人に出会っていく様と、興味の行末をリアルタイムで読めるってんだからこれほど楽しいモンはない。職場や学校で朝から目がランランと輝いている奴がいたら、このキラーコンテンツに瞬殺ならぬ旬殺されたやつなんだろう。とにかく危険なブツである。
 常日頃から浅草キッド・キッドを公言しているボクでも今年の博士の活動を追っかけるのが困難なほど「2012年の水道橋博士」はビンビンに精力的であった。ブレーキの壊れたダンプカーならぬ、スイッチの入ったハカセに怖いモノはない。
 今を感じるのがメルマ旬報なら、水道橋星雲の歴史はこの『藝人春秋』で綴られる。元々はアプリから始まった壮大な実験が、生誕五十年を(自分で)記念する、渾身の一冊!となって刊行された。
 内容はいわば、お笑い男の星座・外伝とでも言うべき、コクとロマンとペーソスが溢れまくった逸品である!!
 勿論、本クレイジーの博士の事、アプリで読んだからいいや、なんて口が裂けてもいえない印刷物ならではの“仕掛け”があちこちに散りばめられている。福井利佐さんによる見事な切り絵の装丁も、アッと驚く帯文の面子も、全ては繋がっているのだ。
 同級生・甲本ヒロトとの邂逅、古舘伊知郎や石倉三郎等の人生の先輩達とのイイ話、爆笑問題との因縁に絡めたイジメ問題、そして殿・ビートたけし論、そしてコレが一番書きたかったのでは?と思える、グッと来るあとがき。全ての今と過去が交差し、現在を作っていく。
「出会いに照れるな」
 とは、故・百瀬博教氏の言葉であり、現在の水道橋博士を動かす推進力になっている名フレーズである。
 シャイな野郎共にとって、なんて勇気づけられる言葉なんだ!と自分にも言い聞かせていたのだが、遂にそれを自ら実践する日が来てしまった。なんと、スタイリングした人の対談相手が博士その人だったのである。声を掛けさせて貰うか、散々ウジウジしている内に滞り無く収録は終わった。
 出逢うには、まだ早かったか。そう思った瞬間、目の前の廊下を氏が通り過ぎた。何処からか「照れるな、俺!!」と、声がした。
 氏は、とても優しかった。この人が好きで良かったな、と思った。その夜帰宅して子供のように第一声「俺!博士に会ったよ!!」と言ったら、嫁は「良かったね!」とニッコリ微笑んだ。

 まるで憧れのレスラーに会った中学生みたいだったのだろう。
 そう、浅草キッドはいつだって俺を十四歳にするのだ。

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【『藝人春秋』は永く読み継がれて欲しい一冊】

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『藝人春秋①』文庫版 


 (ボーナストラック)
 
・『2013年の有吉弘行』


 (文庫解説)
 
・オードリー・若林正恭
 

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