見出し画像

47 グッドリッチ 剛力彩芽

 この連載も残り数回、いよいよラストスパートだ。
 挿絵の江口寿史先生は当代きっての美人画の名手。
 「博士に毎週、爺いを描かされる」との本人のクレームもある。出来ることなら、先生の画力が遺憾なく発揮される、夢現(ゆめうつつ)の境に揺蕩(たゆた)う美女をご提供したい。

 なので、今回は、剛力彩芽だ!

 彼女は、韓国風オルチャンメイク美女の粗製乱造のご時世において、デビュー以来、剛力無双な「美」を誇り続ける国民的アイドルだ。
 芸能界の剛力ファンと言えば、明石家さんま師匠が有名だが、実は、我が師匠・ビートたけしも彼女に魅せられたひとりだ。

 2015年4月27日、日テレ『しゃべくり007』に殿が出演した際、好きな女優やアイドルについて質問され、しばし考えた後に、「あ、最近、可愛いと思ったのは剛力さん。……スゴい可愛い目をしている」
 と、剛毅果断に言い放った。

 弟子としても驚いた、この殿のアンビリバボーなこの発言。
 『奇跡体験!アンビリバボー』の共演者ゆえのリップサービスかと最初は勘ぐったが、番組では普段、殿と剛力はブロック撮りで顔合わせすることがないはず。

 合点がいったのは、その後、島田洋七師匠から話を聞いた時だった。
 現在、洋七師匠は剛力と同じく、米倉涼子、上戸彩、菊川怜、武井咲ら〝オスカー美女軍団〟と呼号される美女タレントを数多擁する圧倒的女性上位事務所のオスカープロモーションにおいて、〝♂(オス)部門〟に何故か所属している。
 そんな洋七師匠が、殿と会食中、偶然居合わせたオスカーの会長に、挨拶に向かったところ、その場で会長から殿に剛力を紹介されたという。
 その時の彼女の美しさが、いまだに、殿の目に焼き付いているようだ。

 ボクは毎週、MXテレビの生放送で共演している洋七師匠に、この日の詳細を確かめた。
「剛力ネェさんやろ? おーたよ」
「ネェさん?」
「事務所の先輩やから、ネェさんや! 言うとくけど、メチャメチャ、綺麗かったよ!! あれは現実に存在せんくらい綺麗や。あれはウソや、幻やで! ホンマ!」
 と、いつもの洋七節で答えた。

 そして、その剛力彩芽、御年25歳が、4月29日、インスタグラムで突然の交際宣言をした。
 お相手は、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する「スタートトゥデイ」の前澤友作社長、42歳!

 彼女は熱愛を認め、交際に至るまでの経緯を明かし、「温かく見守っていただければ嬉しいです」と綴っていた。
 この前澤社長のモテ遍歴、剛腕ぶりはつとに有名だろう。20代で会社を立ち上げ、2007年に東証マザーズに上場した際の時価総額は366億円だったが、昨年夏には大台の1兆円を突破。

 たった一代でここまで成し遂げた前澤社長は、現在、千葉の100億円の豪邸に住む独身なのだから……そりゃ、モテるに決まっている!
 さんま師匠は、今回の一大事に、
「ZOZOTOWNの社長はモテはんのやろなあ。けど、俺とどこが差があるねん? 俺、仕事もできるもんなあ。金あるぞ!」
 と、大阪のMBSラジオ『ヤングタウン』で大いに嘆いた。
 一般の多くの人は何処で、こんな運命の出会いがあるのか、憧憬と共に疑問に思うであろう。
 が、何を隠そう、実はこのボクも、かの前澤友作から口説かれたことがある!?

 それはもう10年も前のこと。
 2009年7月22日に収録された『地頭クイズ ソクラテスの人事』というNHKの疑似面接試験、就活バラエティでの出来事だった。
 番組趣旨は、毎回、企業3社の人事担当が実際に面接試験で使うような難問をタレントに出題し、即興で答える形式。
 面接企業には、NHKでありながら実在企業が実名で出演。
 それどころか、ライバル局である日本テレビも登場し、その担当官として『電波少年』でお馴染みの土屋敏男が出演する異例ぶり。
 詰め込みの知識や常識では太刀打ちできない、まさに〝地頭〟の良さが試される番組だった。
 司会は、南原清隆、高田純次、ほしのあきの3人。
 回答者にはボクの他に、青木さやか、スピードワゴン小沢、劇団ひとり、中谷彰宏、やくみつる、ローラ・チャンがいた。
 その日の面接企業は、「ミズノ」「日本テレビ」「スタートトゥデイ」の3社。
 そして件の前澤社長本人からの出題は、以下のようなものであった。

「某大手製薬会社が今まで不可能とされてきた新薬の開発に成功。ノーベル賞を受賞しました。その新薬とは一体どんな薬だと思いますか?」

 ボクは制限時間の3分間でフリップに「あらゆる薬の副作用をなくす薬」という回答を記入したところ……。
 なんと審査員からダントツの高評価を受けたのだ。

 前澤社長は選評を求められ「この問題で、『某大手製薬会社』『ノーベル賞』はリアルなので、回答者には現実的に考えていただきたかった。しかし、自分の欲求・欲望・願望を薬にしたいと思われている方が多かった。自分の実体験に基づいたものでも良いのですが、正直、ノーベル賞は世の中の人が必要としているものでないと獲れません。世界的な視野がどれくらいあるのか、リアルな医薬品の効能でないといけないと思ったので、その観点から水道橋博士を選びました」
 とボクを大絶賛してくれたのだ。

 そして、番組の最後に各社からの合否が伝えられ、ボクは「ミズノ」と「スタートトゥデイ」の2社から合格通知をもらった。

 前澤社長からは総評として
「すべての回答に、想像性、そして、話を組み立てる創造性があって、当社が求める『想像力と創造力』に水道橋博士が一番秀でていると思いました」
 とボクの芸能史上、かつてないほどの称賛をいただいたが、それはもはや、いたたまれない気持ちであり、むしろ、ただただ恥ずかしいほどの経験だった。
 嗚呼、あの時、お誘いを本気にして、途中入社していれば……。
 今頃……。

 選ばれし者と選びし者──。
 剛力彩芽は、2002年、オスカープロモーション開催の第8回「全日本国民的美少女コンテスト」で予選敗退した過去を持つ。
 それでも、その場でオスカーにスカウトされ、今に至る活躍だ。
 その剛力が自らの心を捧げられる男性を一人選ぶ立場になった時、これまで多くの就活生を篩(ふる)いにかけてきた前澤社長は、逆に剛力から奇跡の確率で選ばれた。
 17歳の歳の差を超えて、剛力彩芽に選ばれる前澤社長は、どれほどの天に選ばれし果報者か!

 馬鹿野郎ォ! 正直、羨ましいゾ!!!
 
 ここに、島田洋七師匠が、佐賀のがばいばあちゃんから言われたという、人生の格言を引こう。

「人間死ぬまで夢を持て。その夢が叶わなくても、しょせん夢やから。
 誰でもスタートトゥデイや(嘘)」


【その後のはなし】
 
 今回のタイトルは、格闘家・故・“豪腕”ゲーリー・グッドリッジの二の腕の入れ墨「剛力」にちなんだ。
 まさに“豪腕”のグッド・リッチたる前澤社長は、会社を手放したり、新たに起こしたり、お金を配ったり……。
 この後も、次々と世間を沸かせる矢を放った。
 で、剛力とは別れたり付き合ったり……。
 今はふたりの関係がどうなのかは、田代まさしが入っているのか、入っていないのか、と同じくらいわからない。


画像1

          (イラスト・江口寿史)

サポートありがとうございます。 執筆活動の糧にして頑張ります!