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翠曜日

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疲労の溜まる週の真ん中に、あえて。 ルーティンが苦手な二十歳による、綴る習慣をつけるための時間
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2023年6月の記事一覧

惹かれる不可逆性 《翠曜日》vol.3

惹かれる不可逆性 先日、現代美術を扱う授業のとあるディスカッションで 「純粋って、一度汚れたらもう二度とその状態には戻れないことなんですよね。…だから惹かれるんだと思うんです。」 と言った人がいて、ふーんなるほど…と考えさせられた。 彼女が集めているアート作品は「純粋」をテーマとしているらしく、子どもや宝石、さらには鹿(聖書に出てくるらしい。調べてみよう)といったモチーフの絵画が多くまとめられていた。   宝石と言えば、少し前に放送されていたテレビ番組で、鉱石学者を

粋な車掌 《翠曜日》vol.2

粋な車掌 湘南新宿ラインにて 次の駅で席が空くことを期待しながら揺られていた午後三時ごろ。 池袋を出て少しした頃に、唐突に車内アナウンスがかかった。 穏やかな声だったが、やけに長く話しているので片耳のイヤホンを外した。 「今から、満開の紫陽花がご覧になれます。よろしければ左手の窓の外にご注目ください」 運よく私が体を向けていた方向はその左手で、アナウンスが止んだ瞬間、目の前に紫陽花青が広がった。 この路線は急行列車みたいなものなので、相当のスピードで走っているは

珈琲西部にて  《翠曜日》vol.1

珈琲西武にて この空間に溢れるレトロは、本物っぽくてとてもいい。タバコの匂いはしないのに。 働いているおじさまたちがなんせ本当におじさんなんだもの。 お客さんは若い人もたくさんいてさまざまだけど、私が一人でいて緊張しないのは、適度な薄暗さと、ゆとりのある広さのおかげだろうか。 中身説明する気ある?って思うこのメニュー表も、なぜか落ち着く。 (あ、でも実はちょっとだけ緊張している、なぜならあと40分で出なくてはいけないのにこんな素敵な喫茶店に来てしまったから。せっかく