さびしいダービーの観客数
本日は日本ダービーということで、競馬の記事。その1。
今、流行っている「ウマ娘 プリティーダービー」には、昭和最後のあの競馬ブームの馬名が並んでいる。オグリキャップ、イナリワン、スーパークリーク、タマモクロス、バンブーメモリー、メジロアルダン、サクラチヨノオー。その頃はネットがなく、馬券を買いに行かなければならなかったこともあり、GⅠレースや人気馬が出るレースがある日は、10万人を超す人が競馬場に入った。場内の実況は聞こえず、どんなに背の高い人でも人の壁に邪魔をされてレースを観るのが困難だった。
今でこそキャラクター上のアイドルだが、当時は本当にアイドルで、彼らが出るGⅠレースのときは競馬場が暴動の場と化していた。ファンたちはとにかく一目その雄姿を見ようと、ポールや柵によじ登ったり、大きなゴミ箱をスタンドに引っ張ってきて、のぼって観たりした。今やったら確実にガードマンにつまみ出されることも、観客全員がやっていたので注意すらされなかった。今ではどのスポーツにも、コンサートにも例えられない熱狂度合いだった。きっと初期ビートルズなど、あんな感じだったのだろう。
そんな競馬場の状態だったから、食べ物もよく売り切れていた。今では考えられないことだろう。ちょっと人気のから揚げ屋など、準オープンの頃に「完売」の札を店頭に置いていた。
馬券を買うのがまた大変で、とにかく、どこに並べばいいのか分からないくらいの混雑ぶり。満員電車並みの混雑ぶりで、スリも横行していた。ネット時代となり、人が混雑しなくなって(特にギャンブル場)スリというひとつの稼業が廃れたのではないか。
「ウマ娘 プリティーダービー」には、平成に入ってすぐの名馬のキャラクターも並ぶ。アイネスフウジン、メジロライアン、メジロマックイーン。この世代にも競馬ブームが続いていて、彼らがクラシックレースを走った年の有馬記念は、上記、昭和のアイドルホースたちとの対戦となり、あの狭い中山競馬場に15万人以上のファンが詰めかけた。スタンドが重みで落ちそうになっていた。
ひとつ間違ったら惨事が起こっても不思議でない、狂った時代。でも過ぎ去ると、あの熱気がうらやましく感じる。競馬場に足を運ぶ人はネットで馬券を購入できるようになってから、ぐっと少なくなり、さらにコロナで観客ゼロにまでなった。仕方ないが、臨場感という点では地に落ちてしまった。
ダービーでの勝者も、大歓声に包まれながら検量室に戻ってきたいところだろう。調教師も、厩務員も、オーナーも。
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