見出し画像

「国際化」に挑む老舗酒蔵

1.(株)南部美人(岩手県二戸市)

2020/06/30(火)には、完全菜食者向けのビーガン認証を日本酒で初めて取得し海外での認知度向上を目指している(株)南部美人(岩手県二戸市)を紹介しました。

同社の輸出先は現在約50カ国輸出は売上高全体の2割を占めるそうですが、原点は現社長が高校時代にホームステイした米国人家庭で日本酒が好まれるのを見て「世界で通用する」と気付いた経験にあるそうです。

1998年の米ニューヨークでの試飲会がきっかけで輸出を始めますが、「訪日経験などがない人には売れない」という限界も感じていました。そこで着目したのがユダヤ教の戒律に沿う食品を認証するコーシャ。認証された食品はアレルギーフリーなど健康食の側面もあり、認証を受ければ、日本を知らなくても買ってもらえ、潜在需要を掘り起こせるのではないかと考えて、認証取得のために生産体制の改革に取り組みました。2013年にコーシャ認証を取得、2019年にはビーガン認証を取得しました。

2.老舗酒蔵の国際化戦略

日本酒を製造するメーカーには、創業100年を超える「老舗企業」が少なくありません。全体的に日本酒の消費量が減少傾向にあるなか、地域で育まれた素材と伝統の製法を活かしつつ、独自の販路を開拓して販売先を国内のみならず海外にも広げていこうとする企業が少なくありません。

これまでご紹介した【すごい会社】のなかですと、「社長の酒」というユニークな商品名で人気の吟醸酒を6月からタイに輸出し、アジアの他の国や欧米にも販路を広げている松岡醸造(株)(2018/07/06)、「地域の歴史と文化を伝える酒蔵」として貴重な資料を残す資料室を開設するなど地域から世界に向けて日本酒文化を発信する橘倉酒造(株)(2019/12/27)など、米ニューヨーク州に大規模な酒蔵を新設し米国産の食用米を使って純米大吟醸酒などを製造する旭酒造(株)(2017/12/22)などが、興味深い会社として挙げられます。

こうした会社の取り組みは、人口減少や消費者志向の変化に伴う日本酒需要の減退への対応策、という企業経営面での危機意識から現れている行動であることは間違いありません。しかし、闇雲に国際化を目指しているわけではなく、自社の強みを活かしつつ、地域との調和を大切にした「地に足の着いた」「身の丈に合った」経営戦略を展開している、との印象を持ちます。こうした【すごい会社】の国際化への取り組みに、今後も期待しつつ注目していきたいと思います。

20200216子持ち罫線

3.今週の【すごい会社】

この会社を含め、今週は以下の【すごい会社】をご紹介しました。

★No.2056☆新東工業(株)(名古屋市中村区)。鋳物や金型を製造する中小企業向けに設備の稼働状況を遠隔で監視するサービスを始める。スマートフォンなどで安価に確認でき、生産停止や故障を防ぐ。
★No.2057☆(株)南部美人(岩手県二戸市)。1902年創業。日本酒の輸出に力を入れている。海外での認知度向上を目的に完全菜食者向けのビーガン認証を日本酒で初めて取得、ワインを好む富裕層らに売り込む。
★No.2058☆(株)Nano Wave(東京都八王子市)。LEDを使って細菌やウイルスを分解する空気清浄機を開発。触媒の表面積を広げることで除菌力を高めた。新型コロナウイルスの感染防止需要を見込む。
★No.2059☆(株)かめびし(香川県東かがわ市)。製造工程を体験できるツアーを今秋以降に始める。全国的に珍しくなった伝統の製法を体験してもらうことで、品質やこだわりを重視する消費者の需要を掘り起こす。
★No.2060☆(株)GRA(宮城県山元町)。高級ブランドイチゴ「ミガキイチゴ」の生産・販売を手掛ける農業生産法人。夏栽培を本格的に始める。冬に収穫するイチゴと合わせて通年での出荷体制を整える。

20200216子持ち罫線

次回もまた、【すごい会社】の数々をお伝えしていきます。どうぞお楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?