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第10回飲茶先生の本について語ろう4

フランケンとの対談
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主題3-1 14歳からの哲学入門
この本には、様々な歴代の哲学者が登場しますが、ひときわ目立っているのが、ニーチェパイセンです。
神は死んだ、永劫回帰、超人思考、大いなる正午。ニーチェパイセンの言葉はロックだ。ひとつひとつ解説したい。

神は死んだ
昔は神様が人間を作った。だから当然人間が作られた意味、生きている意味があると考えられていた。
ニーチェは、「神は死んだ。神は死んだままだ。そして我々が神を殺したのだ」と言った。科学の進歩、宗教戦争、聖職者の汚職などを繰り返すうちに、みんなの信仰心が失われていった。神が死んだと同時に人間に生きる意味を与えるような絶対的な価値観が失われた。ニーチェ哲学において、一番重要なこととして、「世界には固定された絶対的な価値観(神、常識、事実)は存在しない」というメッセージ。

これほど有名なセリフもないと思います。
ニーチェは知らなくても、「神は死んだ」はだいたいみんなどこかで聞いたことがあるでしょう?

「深淵を覗き込む時、深淵もまたあなたを覗き込んでいるのだ」もニーチェですよ。深淵って、もはやパイセンご自身のことでしょう。
哲学家の言葉って、中二病の濃縮液が結晶化したみたいなものだから、パワーが篭りすぎてる。

人生に意味はない
「人間はニヒリズムに陥って、生の高揚を失ってしまう」とニーチェは言った。そして、虚しくなった結果、人間は末人になると。なんの目標も夢もなくトラブルを避けて、ひたすら時間を潰すだけの人生を送る人間。
前回、ニュータイプの時代の中で、「今は、モノが溢れて、意味が失われている」という指摘があった。その中でも特に「自分が生きる意味とは?」とか「働く意味」を見つけられず悩む人が増えている。ニーチェパイセンの予言のとおり、末人が増えているのだろう。
アドラー心理学をとりあげた「嫌われる勇気」という本の中にも「一般的な意味でいうなら人生に意味はない」と指摘されている。
では、意味のない人生を我々はいかにして生きていくべきなのか?ニーチェは、その問いにどのような光を当てたのか。

ニーチェって150年くらい前の人なんだけど、行き着くところまで行っちゃってますよね。悪い方向に洞察が深い。人生なんか意味ない。どうせ100年経ったって、人間は起きて食って仕事して寝るを死ぬまで繰り返すようなくだらないことを繰り返すだろう、世も末。末っ子。末人と名付けよう。
イケてる。イケすぎてますパイセン。

永劫回帰
人生に意味はなく、死にも未来にも意味はない。ニーチェの哲学を学ぶと絶望する。ニーチェと同じ黒哲学(実在哲学)で、始祖であるキルケゴールは「絶望は死に至る病だ」と述べた。死に至るとは、死ぬまで続くという意味。ニーチェはそんな絶望的な時代を生きるための最強の哲学を作ろうとした。その哲学をつくるためには、「最強最悪のニヒリズムの世界を考え、その世界を生き抜くための哲学をつくればよい」。この最強のニヒリズムを説明するのが永劫回帰という言葉だ。

絶望してるくせに、ワーストケースから解決を探ろうと。なんか、PMDAみたい。すいません。

「おまえは、これまで生きてきたこの人生をもう一度、さらに無限に繰り返し生きなければならない。そこには何一つ新しいものはなく、あらゆる苦痛と快楽、あらゆる思念とため息、おまえの人生のありとあらゆるものが寸分たがわずそのままの順序で戻ってくる。永遠に繰り返されるのだ。」永劫回帰の価値観の中では、死でさえも絶望から抜け出す方法にはなりえない。石を山頂に運ぶ。転がって落ちた石を追って下山する。それを山頂に運ぶ。これを無限に繰り返すのだ。この永劫回帰という考え方が最悪のニヒリズムの世界。

これは思考実験ということらしいです。ビリヤードの台みたいに、宇宙の全ての粒子がいつかは同じ状態になる。そのあとは繰り返しでしょう、という文脈らしい。この頃はまだ量子論がなかったのでそういう思考実験が成り立った。ただし、これは思考実験だから、成り立たなくても話は矛盾しない。仮にそういう最悪の世界だったとして、お前どうする?という話だから。

末人と超人。永劫回帰と今を生きることの意味。
でた、超人!

永劫回帰する人生。今回生きた人生が無限に繰り返される絶望の人生。永劫回帰を前向きに生きていく方法とは?「今、この瞬間を力強く肯定して生きよう」。無限ループの中に、強烈に良かった!と思える一瞬の点をみつけて、それを肯定する。この一瞬を何度も味わいたい。今この瞬間で良いから、生を肯定する強い意思を持つこと。それこそが最悪のニヒリズムを吹き飛ばすきっかけになる。ニーチェは、こんなふうに、「今この瞬間」を肯定できる人間のことを超人と読んでいる。
永劫回帰を否定せよ。末人にならず、「今この瞬間」を肯定できる超人になれ。これこそが最強のニーチェ。

そして、ニーチェの哲学は、「価値(意味)のあるものは、常に未来にある」という価値観をぶっ壊した。人は未来に対して、希望を持ったり、不安を感じたりする。人生は始まりから終わりに向かって一直線に進むものという価値観。

ニーチェがぶち切れちゃったのが、このキリスト教の終末思想というおめでたい考えに対してだったんですよ。終末に救いなんてこないじゃん。神は死んだし。そもそも、人生が「未来のゴールに救いがある」ゲームだとしたら、ゲームの最後にたどり着けない人の人生はどうなるのさ。不治の病になったら、そこから先の人生なんて意味はないの?
という問いに対して、「最初から意味なんてない」ってぶつけたんですよ。どうせ永劫回帰で回ってんだから。
だから、「今が最高!」ってニッコリできる超人が強いよ。と。

…なんか、この「ニッコリ」って、絵にすると、背景が黒ベタだったりしそうな狂気を感じるけどね。。

永劫回帰という価値観では、人生は円のようなものにたとえられる。
過去でも未来でもなく、今この瞬間にスポットライトをあてよ。そして、その瞬間を肯定できる超人になれ。それが唯一、最強最悪のニヒリズムを乗り越える方法である。

最終的にニーチェは、大嫌いなキリスト教の聖書に変わる本を書こうと頑張ります。
それで書いたのが「ツラトゥストラはかく語りき」ですよ。
パイセン、もともと大学教授だったのに、あまりにキワモノになっちゃって首になって、この時は無職。マジでロックすぎます。

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