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第9回ニュータイプの時代6

フランケンとの対談
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フランケンのポエム説教

・流浪の勧め?
この本では、あらゆる意味で1つのことを死ぬまで、みたいな硬化したキャリアプランを危険だって教えてる。

『「腰が据わらない 」 「節操がない 」 「一貫性がない 」と批判的に揶揄されてきたような生き方 、つまり 、何が本業なのかはっきりしないままに複数の仕事に関わり 、節目ごとに仕事のポ ートフォリオを大きく組み替えていくようなキャリアを志向する』
のがニュータイプだと、そのフェノタイプを表現します。

これ、ここだけ読むとなんだかわからない人物像ですよね。極端に言えば、そんな人、西成あたりにいっぱいいるんじゃ無い?って気がしますが、そういうこと言ってるんじゃないんでしょう。
ここで大切なのは、「ジョブに不要とされて弾き出された結果としてジョブチェンジを繰り返さざるを得ない」という人物像では無いですよ。
「ジョブに対する優位性が本人にあり、本人がジョブを切り捨てて新しいキャリアを自分に加えていく」っていう強さが条件になってます。
そう考えると難しいですよね。

果たして、単純な転職を繰り返すだけの職業人生は、自分の有り様にプラスに働いているのか?
このラジオのリスナーのほとんどは医療者なわけですから、毎年毎年新しい職場に移動したり、大学院に行ってみたり、教員になったり辞めたりを繰り返すような人生を歩むわけです。あるいは開業して固定化された事業に自分を放り込むかどうかを迷ったりするわけです。

コネクティングドットの話にも通じるのですが、まずは自分がやりたいことを追求してみる。最初は、人の役に立つ、必要とされる小さな専門家になってみる。その小さな専門家になる過程で、マーケットのニーズにさらされて、自然と進むべき道が修正されていく。だから、結果的には、自分が当初描いた目標とは別の場所に着地するのです。その過程では、一貫性がない、節操がないというのは、「フットワークの軽さ、多様性を許容する柔軟性」といった強みに対する、コモディティからの愚痴であることに気付かされます。小さな小舟で大海原を進む。でも、人生の軸となるべき指針や哲学。ワンピースでいうところの海賊旗を掲げないといけない。進路は自由でもいいけど、海賊旗に掲げる哲学にはブレがあってはいけない。

・コモディティからの脱却
僕らが考えなければいけないのは、キャリアを複雑にするなんて即物的なことではなく、「自分の有り様を定義しない、誰からも定義されない」、この価値観を維持できるかどうかということに尽きるんだと思います。
誰かから定義された瞬間にあなたは「コモディティ」であり、コモディティである限り、「一緒の箱に突っ込まれた他のコモディティと一緒に、限界効用ゼロへ目掛けてダンピング競争をする」ことになるからです。

じゃあどうすれば?
そう思いますか。

それに答えを与えることができたとしたら、その瞬間にその答えはコモディティです。
そういうことなんですよ。
自分で考えないと。
それだけが自分の価値を担保します。
そのためには自分の価値観も日々アップデートが必要になるんです。

医療というものは基本的に「固定化された価値観を画一的に提供する」という行為に国が予算を切るという構造で成り立っています。
ですから、医療制度という枠組みからひきだされる常識っていうものは全て定義可能なコモディティになっていきます。
だからこそ、いろんな人に合わないとダメなんですよ。
同じ科でも違うグループ。
医療でも違う科。
違う国。
同じ国でも違う職種。
違う国の違う職種。

こういった人たちとつながることはとても大切です。
自分のキャリアの中でこういった人たちと、ビジネスパートナーとしてどうやって繋がっていくのか、それをマネージメントする。これができるようになったら一人前なのかな、と今の僕は思います。

今の若手医師たちの悩みって、「いったい今の時代、何をすればいいのか?」ということに尽きるんですよね。この道を進めば成功できるというレールが存在しない時代。でも、それは、必然であって、「これをやれば良い、この道を進めば良い」という道が示された途端にそれはコモディティに向かう、行進の第一歩になってしまうわけです。人生をいかにして生きるか?という正解のない課題と向き合うことこそが、人生最重要のタスクになるわけです。我々が今、哲学をテーマにラジオを作っているのも、ある意味必然なのであります。

具体的な話をすると、
業界、特に医療業界のほとんどのエラい人っていうのは、医療が持つ莫大な予算を振りかざして上から目線で周辺の世界を蹂躙してきました。
「分かりやすい価値」ってやつを無理やり提示させて、「それを買ってやる」みたいなことをやってきたんですよ。やってきたんです。
それって、目新しい自販機にコインを突っ込んで見たことないジュースを一本買った、みたいな繋がり方なんですよ。
全然有意義じゃない。
医療者が上からぶつけるWin-Win、実にふざけてるんですよ。「俺は金を出して欲しいものを手に入れた。お前は商品を売って金を得た。」あのね、自販機にジュースを並べた人間にとっては、このやりとりは大した価値のあるものじゃないんですよ。誰が買ってくれてもいいものをたまたまアンタが買った。それだけです。お互いに何も残るものはない。
賭けてもいいですが、あなた同じジュースが隣の自販機で10円安く売ってたら、そっちに金突っ込むでしょう?こんなのは単なる金のやり取りなんです。

・意味の抽出とビジョンの共有
僕らがやらなきゃいけないことは、この自販機に入ってるジュースを作っている人に会いに行って、どういう哲学でジュースを作っているのか、僕たちとどういうビジョンが共有できるのか、共有したビジョンからどういった事業を立ち上げることができるのか。
こうした活動を繰り返すことで、段々と自分の持つビジョンや常識が変化して、職業人としての枠組みが変化していく。
この変化が外部から観測すると「理解不能な流動的なキャリア」として認識されるっていうことなんですよ。
それがニュータイプってやつだと認識されるんでしょう。

目の前に提示されたわかりやすい課題を手当り次第解決してしまうのって、受験エリートにありがちなことですよね。今のお話は、まずは課題の定義を疑え?ということですね。

・ニュータイプはニューなのか?
僕はこの本はすごくためになる本だと断言できます。でも、一点だけ違和感を覚えるのは、果たして、この本で取り上げられるような「ニュータイプ」っていう人種は、取り上げられている「6つのメガトレンド」が初めて作り出した人物像なのか、っていう部分です。
昔からこういう訳のわかんない人達って、いたんですよ。
ニュータイプ。過去にも生息してました。古い地層から化石が発掘されています。ただ、今までこれらのよくわかんないオーパーツみたいな化石を分類する概念がなくて、ひとまとめに「変人」枠に突っ込まれてたということでしょうね。

この本の内容からちょっと逸脱するけど、いわゆるニュータイプって、オールドタイプより優れた才能かっていうと、ひょっとして違うんじゃないかな?って思う。
ただ単に「終末期の資本主義」にマッチした特性なんだろうってことだと思う。
この前、フィンランドに行ったんだけど、バイキングの時代はもうただひたすら動物的な強さが人間の価値だった訳でしょう?問題はすべて腕力で解決みたいな。その時代にはニュータイプは真っ先にぶち殺されてた可能性がある。

だから、僕の直感としては、オールドタイプにできてニュータイプにできないことっていうやつを切り分けてチームを作ることが、ここから先は大事になるんじゃないかな、って思うんですよ。
多分、ニュータイプって、問題を解決する能力があんまり高くない。興味ないから適さないんだよ。職場のルールに無頓着だったり、単純作業をため込んだり、そういうタイプかもしれないな、って思う。僕の周りのいわゆる天才たちをみてるとそう思う。

優劣ではなく、時代のトレンドにフィットした人材であることに価値がある。というのは重要な視点ですね。資本主義の定義からして、希少なものが価値を持つわけです。先程バーベル戦略のところでも述べましたが、医師というのは明らかに、プロブレムソルバーという働き方。それを自分の人生に100%当てはめるのではなく、10%くらいは、真逆に振りましょう。そうです。10%変人戦略です。

そういえば、私達の知り合いにも、PBP(パリブレストパリ)という4年に1回開催されるロードバイクのイベントに参加して、1200km完走した愛すべき変人がいますよね。彼の人生は、僕はすごく注目していて、真面目に医師の仕事を続けながらも、10%は変人として立ち振る舞う。まあ、本人は至って真面目に1200km完走しているのですが(笑)
こういう生き方、戦略は、これからの時代で輝くためのキーワードになると思っています。

この三年くらい、僕がいるチームでは奇しくもこの本でいうところのオールドタイプ向きな仕事と、ニュータイプ向きな仕事をきっちり分けて、お互い向いてない仕事を全くやらずに効率を上げるって言うハンドリングを試している。これがビッタリハマるんですよ。
アジェンダシェイパーは無尽蔵にアイデアとプロブレムを垂れ流す。プロブレムソルバーはこれらに最速の正解を与えて、プロジェクトとしてエフォートを注入する意味があるかどうかを算定する。
出来上がった提案を再びアジェンダシェイパーがプロジェクトプランを俯瞰して、よりニッチで奇抜なモデルを提案する。モデルを返されたプロブレムソルバーチームは外注を含めて最適なスキームを組み上げる。

これを僕らは学術、医療サービス、病院経営、機器開発販売に至るまであらゆる領域にアプライしてきた。
これは、いわゆるニュータイプジョブでもなんでもなくて、タレントのマネージメントの力。
はっきり言ってしまえば、ニュータイプって、多分単体では役に立たんし、ニュータイプ/オールドタイプ比率が大きくなる、つまりニュータイプが多くなると運用面が不安定になるだろう。僕の感覚では1:5〜10くらいが妥当なんじゃないかな、と思う。

このスキームには1つ限界があって、このやり方は仕事の枠組みを根底からバラバラにして、仕事に人を、じゃなくて人に合わせて仕事を組み替えていくことになっちゃうから、人事経営のイニシアチブを掌握してなきゃできない。会社組織であれば、少なくとも社長クラスをハンドリングできるポジションにいないと何もできないってことだよね。必ずトップダウン戦略になるので、ミドルマネジメントクラスがボトムアップでできる戦略じゃないってことです。
これは結構致命的。
下からやるなら強烈なレバレッジが必要。野心的な二代目社長をたぶらかすくらいの覚悟は必要です。
でも、できる。だから、やろう。

締めの言葉
冒頭で述べた、資本主義の脱構築の意味するところ。資本主義を共産主義にリプレースしてもうまく行かなかった。新しい時代への転換は、オールドタイプがかつて目指したような 「ファンファーレを伴ったシステムのリプレース 」によってなされるのではなく、誰もが気づかないうちに「人間の見方 」が変わることで起きます 。人それぞれの思考・行動様式が、オールドタイプのそれからニュータイプのそれへと変換することで 、新しい時代への転換が起きるのだ。

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