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第9回ニュータイプの時代5

フランケンとの対談
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主題4)フランケンの注目ポイント
3章5
限界費用ゼロ
「作りたいもの 」が貫通力を持つ

オールドタイプ ▼スケールを求めて市場におもねる
ニュータイプ ▼自分がやりたいことにフォーカスを絞る

メジャーとニッチ、ローカルとグローバルの話をちょっとしておきましょう。
今出てきた大量生産大量販売のモデルは、メジャー商品をグローバルに展開するという考え方です。もちろんハマればでかい。
スケールのメリットの減少について考えましょう。ローカルで獲得できた顧客層の割合、これが大きい、すなわちローカルメジャーというものを、グローバルに拡大したら何が起こるか?
顧客層の割合は維持できないっていうのがこの本の論旨です。
ローカルメジャーというのは、様々な要因から他の選択肢が無いという種極的な理由による顧客層が含まれている。グローバルなマーケットでは、この層がゴッソリいなくなる。この話はクリステンセンのイノベーションのジレンマに出てきます。
さて、じゃあ、ニッチって何?って話です。
ニッチって、簡単に言えば大きなトレンドから外れた小さなこだわりを持つ消費領域とでも言いましょうか。一言で言えばマイナー、ただ、単に数が少ないっていう意味ではなく、少ない代わりにそれを選択するモチベーションが強いニーズって言うべきでしょう。メジャーサービスでは満たされないニーズ。マニアックな何か。
マーケットサイズとしてはニッチは小さいと言えます。ローカルニッチなんていうのは相当に小さいので、大きな企業はあまりそこを重視しない。
でも、ニッチなニーズは、それじゃなきゃダメだという強いこだわりに立脚しているので、市場貫通力が強い。全体の1%しかいない顧客層である代わりに、その1%はそれ以外のサービスを求めない。
さっき出てきたタバコの例はいい例で、「タバコはタバコだろ、マルボロでいいだろ」って言ったところで、「ワシは若葉しか吸わん」っていうジイ様のニッチな要求を変えることはできない。
このニッチの市場貫通力の強さは、グローバルメジャーが失うスケールメリットっていうやつを保持しうるっていうのが、この章の骨子です。
これはシャープなんですよ。
ローカルメジャーがローカルでは持っていた50%というシェアを、グローバルにスケールアップすると30とか20%とかにシェアを失っていくのに対して、ローカルニッチが持つ1%はグローバルにスケールアップしても1%のシェアを維持しうる、すなわちスケールメリットが保持されうる、そういう理屈です。

これはガツンときますよ。
これね、実体験に基づく話なんで僕にはストライクです。

日本の中でのローカルニッチを熟成して、世界展開してグローバルなニッチマーケットをゼロから形成する、っていう仕事を進行形で複数手掛けていて、そんな時にものをいうのはやっぱりニッチユーザーがニッチデマンドを発生させる根源的な意味を理解することなんですよ。彼らが感じているコレジャナイ感を理解して、ニッチな彼らが潜在的にもとめている「ニッチな彼らにとってのあるべき世界」ってやつを想定する。
最初に出てきた通り、このあるべき世界とコレジャナイ感の差分が「問題」な訳だから、ニッチだろうがなんだろうが、ここに対する「答え」はサービスとして価値を持つ。市場貫通力を持つ商品になる。

これは別に具体的な商品だけの話じゃなくて、学術領域でも、人材でも、運用でも、すべてに当てはまるロジックだって痛感する。だから、なにかのチームを率いて結果を出さなきゃいけない立場の人は参考になると思います。

各論と深掘り3
ワークスタイルとモビリティ。
博士とフランケンが非凡な生き方をできているとすれば、ここに明確な意志を持っているからだと思う。
ここで取り上げたいテーマは2つ。バーベル戦略とモビリティ、言ってしまえばマルチポジショニングについてです。

第3章6
意味のポジションを取る

『経済学者のロナルド ・コ ースは 、なぜ経済活動のほとんどが市場による取引ではなく 、官僚的な大企業による管理と統制のもとになされているのかを研究し 、市場よりも 、企業内の方が情報流通のコストが低く 、より効率的に経済活動の調整ができるからだ 、と結論づけた 。今日 、コ ースが指摘した情報流通のコストは急速に低価格化が進んでおり 、労働市場で企業に所属せずに働くことのデメリットは相対的に小さくなってきている 。このような世界にあって 、従来通り 「オ ーガニゼ ーションマン 」として組織に所属する生き方は 、リスクばかりが大きく 、リタ ーンの小さいものになりつつある 。今後の世界は 、大企業による市場の寡占化と 、個人に代表される小規模組織の多様化 ・乱立という二極化が進むと考えられる 。このとき 、どちらの立場で仕事をするかが大きなオプションとなるが 、最もリスクが低いのは 「両方の立場にポジションを持って働く 」というバ ーベル戦略になる 。』

バーベル戦略については博士の真骨頂でしょう。
このバーベル戦略のポジショニングっていうやつが理解できない人がすごく多い。

基本的な考えとしてはブラックスワン、アンチフラジャイルで出てくる、90%の弁護士と10%のロックスターってやつですね。
この話は博士お願いします。

ナシーム・タレブ「アンチフラジャイル(反脆弱性)」の中で、バーベル戦略を提唱。90%医師、10%ロックスターという生き方。簡単に言えば、アップサイドとダウンサイドのリスクに非対称性のある仕事を組み合わせること。医師という職業は安定しているが、報酬が10倍に跳ね上がることはない。ロックスターのような生き方は、成功確率は低いが、成功すると報酬が青天井。ある程度安定した職業を片手で持ちながら、どこかで大化けするアップサイドのリスク(不確実性)を人生に盛り込んでおく。ちなみに、このラジオは私の中で、ロックスターに分類されるものです。失敗のリスクが限定的で報酬、マイクロインフルエンサーになる?は青天井です。ロックスター的なキャリアは、インターネットとの相性も良いですね。


山口さんがこの本で解いているバーベル戦略は、バーベルの左右に同じ業界を絡め取ってしまおうって言う、ややテクノカルなものになってる。
マーケットシェアは2極化する。
「役に立つ」の価値観では、GAFAのようなグローバルメガプレイヤーが独占寡占マーケットを形成する。
「意味を持つ」の価値観では、グローバルバルニッチがマーケットを分散・多様化させる。
こんな2つの山が1つの業界に現れる。
僕らが取るべきポジショニングは、グローバルニッチのポジションを取りつつ、「役に立つ」価値観の根源的なピットフォールである「コピー問題」にコミットするというバーベルポジショニングだ。
役に立つサービスはコモディティの中の最大資本が総取りする、でもその優位性は絶対的なものにはならない。価値をコピーされることで優位性が簡単に揺らぐ。それに対して、「意味」はコピーできない。マルボロを吸っている人はマルボロだから吸っているのであって、マルボロっぽい何か、が安かろうが意味を見出さない。

これは記号消費資本主義って言う別の閉塞した問題につながる命題なんだけど、今その話題はおいときましょう。興味が有れば、ボードリヤールでググってよね。

さて、まとめると、
ニュータイプのバーベル戦略としては、メガプレイヤーに「意味を付加する」ニッチな価値観を提供するというものになる。
これはなかなかに難しいですよ。

でも、考えれば頭ひとつ出る人って、みんなこういうバーベルポジショニングが上手い。
医療業界なら、学会って言う独占的メガプレイヤーにニッチミーニングをぶつける形でクレジットを構築している若者って、いっぱいいるでしょう?
教授レースをポクポク最下段から登るなんて戦略じゃ、スライドできない小山の頂上に閉じ込められて人生終わるよ。

努力が報われる、はミスリーディング。
個人が適性や置かれた場所におおいに影響を受ける。
これを無視する害念が1万時間の法則では、と山口さんは述べる。

『1万時間の法則が通用するのはルールが厳格化している分野に限る。楽器、スポーツなどがこれにあたる。知的専門職では費やした時間と成功の相関が極めて低いことが証明されている。』
また、1万時間の法則は形式論理学上の誤りがある。
命題:天才モーツァルトも努力していた
が正しいとして、
1万時間の法則が進めるのは対偶ではなく逆命題である。
逆:努力すればモーツァルトのような天才になれる。

逆は真ならず、対偶は真なり。

この命題の対偶は
対偶:努力しなければモーツァルトのような天才にはなれない

ここまでしか言えない。
努力は否定しない。でも、努力が成功を担保する、っていうのは間違い。
これはよくある若者の心理的甘えで、「スタートに必要な条件を揃える行為を、ゴールへの約束だと誰かに言って欲しい」という願望を垂れ流しているに過ぎない。

山口さんは、「正しい努力」を勧める。
1。努力の方向と、自分の適性が一致している。
2。技術に結びつく正しいやり方になっている。
この2つが無ければ徒労に終わる。

日本の教育が美徳とする「一所懸命」という価値観は、場合によっては意味のない筋トレになる。
「体験の質」「仕事の環境」が整ってなければ成長、成功できない。この「場」を得るためにポジショニングを変化させることがニュータイプの成長スキームである。ノマドワーキングにも通じるかもしれない。

これについて肯定的な本を読みたければ、「13歳からの世界征服」中田考(なかたこう)が最近では面白かった。
逆に、けちょんけちょんのして欲しければ「だから日本はズレている」古市憲寿(ふるいちのりとし)が面白い。
参考までに。

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