令和6年度 京都大学法科大学院再現答案(商法)

第1問

1, 第1決議について
(1)第1決議おいて取締役会が開かれていないことが会社法298条4項に反しないか。
ア. 会社法298条4項
イ. P社は取締役会設置会社であるため、株主総会招集事項を決定するときは、取締役会の決議による必要がある。しかし、第一決議の株主総会はBが取締役会決議を経ずに開いたものである。したがって、会社法298条4項に反する。
(2)また、本件株主総会の招集通知が株主であるAに送られなかったことが会社299条1項に反しないか。
ア. 会社法299条1項
イ. AはP社の10%の株式を有する株主であるため、株主総会の2週間前までにAに対して通知を発する必要があった。しかし、Bは子会社Q社の管理をめぐってAと対立していたため、Aに対して株主総会の招集通知を送らなかった。したがって、本件第一決議は会社法299条1項に反して招集された株主によって決議されたものである。
(3)以上より、本件第一決議は法令違反があり、会社法831条1項1号により取消事由が存在するといえる。
(4)ここで、AはP社株式の10%を有するにとどまるため、Aが仮に招集通知を受けて株主総会に参加していたとしても、第一決議の決議内容は変わらなかったようにも思われる。しかし、株主総会において個々の株主の発言の影響力が高く、1人株主の発言によってほかの株主の意見が変りうる。
 本件では、AはBと異なる意見を有しており、Aが議場で発言することでほかの株主が影響され、議決の内容が変わっていた可能性がある。したがって、Aに対して招集通知を発しなかったことはなお取消事由であるといえる。

2, 第一決議が第二決議にどのように影響するかについて
(1)本件第一決議においてBが取締役に再任している。そして、第二決議の内容である本件契約は、取り消されるべき株主総会決議によって再任されたBが主体となって契約したものである。仮に第一決議において適法に招集がなされAが再任していたならば、Aが本件契約についての反対意見を述べて第二決議は成立しなかった可能性が高い。したがって、第二決議は無効であるといえる。

3, 第二決議の無効を取引の相手方であるR社に対して対抗することができるかについて
(1)会社内部の意思決定の瑕疵によって契約が当然に無効とされると、相手方の信頼を害することになる。本件ではBが違法に取締役に締結されたことにつき、第三者であるR社が悪意・重過失である場合にのみP社は本件契約の無効をR社に対して請求することができると考える。

感想:ロープラかなにかで絶対似た問題を見たはずなのに、思い出せなくてもどかしかったです。第一決議の瑕疵が第二決議にどう影響するかについて上手く書けず、残念な答案になりました…

第2問

問1

(1)会社法130条、132条1項
(2) 本件では、Q社は市場から買い集める方法でP社株式を取得している。したがって、P社に対して株主名簿に記載することを請求することができる。そして、その手続きが完了すれば、Q社がP社株式を取得したことをP社に対して対抗することができる。

問2

(1)ア. 会社法433条1項
イ. 本件では、Q社はP社の総株主の議決権の10%に相当するP社株式を取得している。したがって、「総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する」といえる。また、本件においてQ社が閲覧謄写を求めている有価証券元帳は会社が取得した株式の銘柄や取得時期、株式数、単価などを記載した帳簿のことを言うため、計算書類に該当すると考える。したがって、Q社は会社法433条1項により、有価証券元帳の閲覧謄写請求をすることができる。
(2) P社はQ社の請求に対して「Q社はP社が株式の持合い工作を進めていると主張するものの、そのような事実が客観的に存在することが明らかにできていないこと」「Q社がP社と実質的に競争関係にある事業を営んでいること」を理由にQ社による閲覧謄写請求を拒絶している。このような理由により拒絶することは許されるか。
ア. 会社法433条2項3号
イ. 本件においてP社は放送法による放送関連事業を目的とする株式会社であり、Q社はインターネットを利用した通信販売事業を営んでいるため、競合関係にあるとは言えない。また、Q社は近い将来放送関連事業に進出しようと計画しているが、これは計画でしかなく、3号に該当しないと考える。したがって、「Q社がP社と実質的競争関係にある事業を営んでいること」を理由に閲覧謄写請求を拒むことはできない。
ウ. また、P社は持合い工作を進めているという事実が客観的に存在することが明らかでないという理由で閲覧謄写請求を拒んでいるところ、このような事由は会社法433条2項各号に存在しないため、認められない。
(3)以上より、Q社による閲覧謄写請求は認められる。

感想:問1は最初見たとき何も浮かばなくて頭が真っ白になりました。でも、冷静さを取り戻して問題文をもう一度見たときに、「自らが株主であることをP社に対抗」とあったので、名義書き換えか…?と思い条文を示してあてはめました。あってるんでしょうか…?閲覧謄写請求もあまり自信がないです。有価証券元帳は会計帳簿なんですかね…あってたとしても433条2項3号のあてはめが怪しいのでどっちにしろダメなんですが……


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