見出し画像

何故Arizona Cardinalsは5月末にDeandre Hopkinsをリリースしたのか(前編)


まえがき

このnoteを書こうと思いながら1ヶ月ほったらかしましたが、2023年5月27日、Arizona CardinalsがエースWR Deandre Hopkinsをリリースしました。

この件については、チームとHopkins双方の落とし所として仕方ないか、というのがいちCardinalsファンとしての心境です。 ただ、「何故絶対的なエースWR2年契約が残った状態トレードではなくリリースしたのか」という状況が掴みにくいとは思います。

なので、私見ではありますが今回のリリースに至った背景をまとめます。

※読むのがめんどくさい人へ


理由はおそらく以下の通りです。

①23年シーズン前だけでの再建が不可能なほど、アリゾナのロースターが崩壊している。
②GMが23シーズンを捨てており、おそらく25年以降に勝負できるチームづくりを目指している。
③25年に33歳になるHopkinsと契約延長をするリスクが高い。
④23年シーズンにタンクする場合、リーグTop10級のWRはいても仕方ない。
⑤Hopkinsのトレード後の残契約は年$20M弱、かつ翌年の契約もあり、FAがひと段落した後ではトレード先のキャップ負担が大きい。
⑥リリースする場合、24年のシーズンにデッドマネーを発生させるよりは、23年の捨てシーズンのうちにデッドマネーを精算しておきたい。

1)23年オフ時点でのArizona Cardinalsの状況について

端的に言えば、23年シーズンのFA開始前の時点でArizona Cardinalsのロースターは1年で再建できないほどに崩壊していました。

原因は前GMによる主力選手とそうでないFA組のキャップヒットの先送り、偏重気味のドラフト戦略の度重なる失敗、そしてDE J.J. Wattの早すぎる引退です。
結果として、今期のFA解禁前、Cardinalsは大型契約下のベテランを複数抱えながらもオフェンスラインとディフェンス全域にスターターを確保できていない状態となっていました。

※個人的にまとめたFA開始前の補強ポジションは以下の通り()

幸いにもFA開始前のキャップスペースは$36Mとそれなりの枠はありました。しかし、上記の補強ポジションすべてを埋めるには不十分です。

そして何より、QB Murrayの前十字靭帯断裂&半月板損傷からの復帰時期が読めません。キャップ上無理をして選手を揃えてもエースQBが開幕に間に合わない可能性すらあります。

こういった状況のなか、アリゾナの再建を任された新GM、Monti OssenfortのFAに関する動きは静かなものでした。

まず、複数年契約で獲得した選手は7名のみ。
このうち、先発級の選手はLB Kyzir White、RG Will Hernandez、RT Kelvin Beachum、K Matt Praterの4名。
かつ外部から獲得した選手は新HCのGannonと伝手のある前PHIのWhiteのみです。

23年オフの複数年契約選手

そのほかの3選手についても複数年にしては非常に安価($3M未満)なデプス要員です。

一方で、引き留めたかったはずの昨年の主力、DE Zach Allen(現DEN),CB Byron Murphy(現MIN)は他チームに引き抜かれてしまいます。

こういった状況から、アリゾナ界隈の記者からひょっとして23年シーズンは捨てているのではないか、との噂が立ち上がってきます。

その方向性を決定づけたのが、今年のドラフトです。

今ドラフトのトッププレーヤーであるWill Andersonをスルーする一方、全体3位をHOUとトレードダウンするなどして来年の1巡1つ、3巡2つを獲得。

指名ポジションもFA後に埋められていないディフェンスを優先するわけではなく、3巡までにLT,EDGE,CB,WRというプレミアムポジションをそれぞれ獲得しています。

これらの情報から私が推測する GM OssenfortのCardinalsの再建計画は以下の通りです。

23シーズン:タンク。QBが豊作と評判の24ドラフトにて全体1位指名権を確保。併せて積極的にルーキーを起用し、OT,EDGE,CB,WRの先発を新人契約中の選手に任せる。
24シーズン:全体1位指名権を複数の1巡指名権や有力選手とトレードダウン。それと同時に複数の1巡指名権を含む上位指名権でロースターを補完。さらにFAでの大型契約の解禁、QB Murrayの完全復帰によりチームの再建を完了させる。
25シーズン以降:数年にわたり複数の1巡指名権を確保しつつ、プレーオフコンテンダーに君臨しスーパーボウル制覇を狙う

※もしこうなったらGMのOssenfortはアリゾナ州知事になれるはず()

この場合、23年シーズンに確実に負けきること、来期以降のキャップを温存すること25年シーズンまで主力として期待できる選手だけを確保することが重要になってきます。

前振りが長くなり過ぎましたが、これらの仮定を置くと扱いが難しくなってくるのがDeandre Hopkinsです。

2)Deandre Hopkinsの現状について

Deandre Hopkinsは長年リーグ屈指のWRであり続けると同時に、ここ3年間のArizona Cardinalsにおける絶対的なエースWRでした。おそらくスタッツを並べるより以下の動画を見た方が伝わります。

しかしながら、いくつかの懸念点もあります。
それは
1.欠場の多さ
2.多額のキャップヒット
3.年齢
です。

1.欠場の多さ
直近2年間、21年の内側側副靭帯断裂によるシーズンエンド、22年のドーピング規定違反などによりHopkinsの出場試合は減少傾向です。
ただし、21年の負傷は着地後にCBが上から落ちてきたことによる不慮の事故。また、ドーピング規定違反は怪我によるものではありません。
昨年のyard/GがリーグTOP10級であったことを考えると、懸念点として挙げましたが個人的にはこの点はそれほど心配しておらず、今シーズンもそれなりに結果を残せそうです。

Hopkinsの年度別成績

2.多額のキャップヒット
Hopkinsの契約によるキャップヒットは23年が$30.75M、24年が$24.2M。再建中のチームにとって、WR1人にあてる金額としては多大です。

かつ、24年からQB Murrayの年$46M契約とWR Hollywood Brownの契約延長が発生するため、このままでは24年にパスユニット3人だけで$90M近いキャップヒットが発生します。チームの状態として非常に苦しいことは否めません。ぶっちゃけHollywood取った前GMが悪(略

3.年齢
23年シーズンのDeandre Hopkinsは31歳。かつ、ここ2年は欠場の影響もあり成績もそれほど伸びていません。本人としてもキャリアが佳境に入ってきた中、結果を残したいシーズンとなります。

一方で、30代から成績を落とすレシーバーが多い中、33歳になる2025年まで年$30M近いキャップヒットでHopkinsを抱え続けるにはチームへの負担もリスクも大きいと言えます。

つまり、今年タンクして翌年以降勝負したいArizonaと、選手として今年が正念場のHopkins意向が一致しない状況となっています。

変な話、HopkinsさえいればMurray復帰後には多少勝てちゃうという問題。このプレーオフには到底届かないけど多少勝てるというのが特に問題。

このようにGMが再建ありきの動きをする以上、いずれ今シーズン中のHopkinsとの別れは避けられなかったものと思われます。

では、何故トレードではなく5月末にリリースしたのかという点ですが…ここからはいつ書き終わるか分からないので後編とします(ユルシテ…)。

次回、後編「みんな金がない」。

追伸
ヒントとなるのは以下の金銭的負担です。

dead money
23年:$11.3M
24年:$11.3M※5月末までにカットした場合は23年に計上

trade先の負担額
23年:$19.4M
24年:$14.9M


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?