DAVID HOLMES

何故今あなたが読んでいるミニコミがSUGERSWEETという名前なのか、その由来については誰かに聞かれたこともないし、また聞こうとも思っていないだろうけど、その誰も聞きたがらない真実を無理矢理教えてあげるとするなら今ここで言うのがベストだと思うので言わせてもらおう。SUGERSWEETとは私のフェイバリット、デヴィッド・ホームズがDJをしていた地元ベルファストにある彼のクラブ「SUGARSWEET」から取った名前である。なんで「SUGER」の「A」が「E」になっているのかは本誌8号でヒントを載せた次第だが、まぁ今だから言えるけれどバカな私が「A」と「E」を間違っただけのことで、今更変えられないよぉ、という私の小さなプライドによってそのまま「E」で続いている。でもそろそろ変えてもいいと思うんだよね、ほらよく名前を変えると運勢が変わったりするとかいうし。

デヴィッド・ホームズというアーティストを知らない人がもしいるとすれば、それは大変罪深い人だと思う。デヴィッド・ホームズというアーティストを知ってはいるけど全然好きじゃなーい、という人がもしいるとすれば、それも大変罪深い人ではあるが、まぁ人にはそれぞれ好みってものがあるので仕方ないとしても、残念ながら私と音楽を通じて分かり合う確率が低いかわいそうな人でしょう。デヴィッド・ホームズというアーティストのことは知っているし好きだったけど何か作風変わって地味になったでしょ、あれからなんかね〜、という人がもしいるとすれば、それこそ正に大変罪深い人かもしれない。確かにあなたの発言は間違っちゃいない。でもあなたの中で彼の音楽がもしそこで止まってしまっているのなら、それは本当にもったいないオバケが出るようなことだ。せっかく私達が彼のステキな音楽に出会うチャンスに恵まれる時が今またやって来たというのに。

デヴィッド・ホームズの音楽が巷を賑わせていたのは、今から3、4年前の94年頃。その一番脂の乗っていた時期の彼の作品は、時にどうしようもなくアシッドで、時にドラマチックに美しく、天国と地獄、希望と絶望が共存しているみたいな素晴らしいものだった。多くの人が魅了されていたはずだと思うし、すごい男だと期待されていた。そんな彼が作ったファーストアルバム、これが良くなかった。いくらセイバーズ・オブ・パラダイスの連中にサポートしてもらっていてもただ地味で暗く弱く、何もない救われない感じだった。批判する気にもなれないような中途半端な気持ちになり、私は彼のことをすぐに忘れてしまった(シュガースウィートだというのに!)。掃いて捨てるような気分とは正にその通りで、この時の感情が「エレ・キング」16号で三田格氏によってあまりにも的確に表現されていて、そしてそのことをきっかけにそこで称賛されていた彼の新しい作品を私は再び手に取ることになった。少し疑いながらも。

そのデヴィッド・ホームズのセカンド・アルバム「Let's get killed」を私は本当に気に入っている。映画のサントラのようなストーリー性の感じられる展開に、ニューヨークの街で拾った声がサンプリングされたスウィングするブレイク・ビーツ。陽気で陰気。無邪気で邪悪。ふざけ半分、真面目。それがぐっとくる。気持ちいい。かつての彼のスタイルではないけれど、何故だか彼を愛した私の耳を満たす。変わったということを別に口に出さなくていい、ただ何となく彼だとわかってしまう音。全然違うのに、全然違わない。それはこのアルバムを通して聴いた時、11曲目のゲンズブールのカヴァー曲「Don't die just yet」で「あ、救われた。」と思う気持ちに繋がっているのかも知れない。

このアルバムに興味を持った人は、是非買って聴いてみて下さい。全然売れてないみたいです。でも非常にいいです。そして次のページを見て、彼の昔の優れた作品を聴き直すのも素晴らしいでしょう。私はこのアルバムを聴いてから、BLOODSUGARSWEET(ウェザーオールの別名義)にはせずに当分SUGERSWEETという名前で続けようと心に決めました。彼を好きだということを残しておく為に。これだけ書いてもまだ聴く気になれない頑固者は、私がTASAKA君のDJでやたらノッてる瞬間を見た時、「この曲何?」と尋ねてみよう。「Gritty shaker!」と答えるはずだから。そして、自分の耳で判断しよう!

☆DAVID HOLMES BEST WORKS

・COSMIC BYELAW 10/THE DISCO EVANGELISTS(1993 POSITIVA)
デヴィッド・ホームズとアシュレイ・ビードルによるユニット。しかしアシュレイの欠片も見当たらない、いかにもデヴィッド・ホームズなブリブリアシッド・ベースと哀愁漂う音に微笑。でもさすがに今聴くと少しださい。

MINISTRY/DEATH BEFORE DISCO(1993NOVAMUTE)

上に続いて、ディスコ嫌いだったという彼らしいカッコいいユニット名。同じ年にリリースされたにも関わらず、明らかにぐんと成長した丁寧な仕上がり。かなり好きだったので、来日した時にこのレコードにサインを貰った。彼の曲ではないらしいが、カップリングのSCUBADEVILSの明るい曲も大好き。

JOHNNY FAVORITE/DAVID HOLMES(1994 WARP)
こ〜れはもう、彼の自作の曲の中では大作でしょう。力の入れようが違うもの。これでもか、これでもか、と延々続く、風の中を孤独に走り続けるようなビートが凄い。物悲しい、でも激しい、そして何よりポジティブ!

PATRICK KRAUT/DAVID HOLMES vs ALTER EGO(1995 HARTHOUSE)
オルター・イーゴとの合作。片面の暗〜いジャングルなんかより、圧倒的にこっちの勝利。ハードフロアーもしくはリッチーのフューズに通じるこのノリノリ能天気アシッドは、セイント・エチエンヌの「Like a motorway」のリミックスでも披露されていた路線。

【REMIX業】

・TIME TO DREAM/FORTRAN5(1993 MUTE)
デヴィッドのリミックス業の多さを作ったといわれる初期の作品。昔の作品なだけに多少古めかしさは感じるものの、彼特有のメランコリックなムードで始まり、タメにタメたあと原曲に絡むあたりがリミックス作としてなかなか優れている。とりあえず貴重品。

SMOKEBELCHII/THE SABRES OF PARADISE(1993 SABRES OF PARADISE)
デヴィッド・ホームズの作品の中でも最も有名で、最も素晴らしいと自他共に認めるこの曲。ドラマチックすぎる流れは14分にも及んで、名作、大作、傑作、どの言葉を使っても惜しくないくらい美しく、泣かす。セイバーズのコンピ「SEPTIC CUTS」にもばっちり収録された。

DO DA DOO/ROBOTMAN(1994 NOVAMUTE)

94年にテクノのクラブにいたにも関わらず、この曲を覚えていないとすれば、それはフロアにいなかった証拠だ。ベースのリッチーのサウンドをさらにバキバキの堅い音に仕上げてしまったこの音は、「やばい」という言葉がちゃんと機能していた頃の象徴的な曲。アシッド!

DIE LAUGHING/THERAPY?(1994 A&M)
パンクのテイストとかなんとか言われていたデヴィッドの、本当にロックな作品。タイトルに相応しくダークな雰囲気で、低く重く頭をはたかれるようなビートに思わず体が揺れる。男らしい、カッコいい…♡あまり語られていない割に出来が良い。MIX2の方が◎。

(SUGERSWET10号 1998年4月)

※曲名にリンクを貼ってあるので是非聴いてみて下さい。

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