シュガースウィート2号

◎GIANT TAB

大晦日、何してました?家で除夜の鐘を聴いてた、なんて人はちょっとかわいそうかも。だってあんた、GIANT TAB[※注1]ですよ!TAB!たぶ!タブ!ラブ♡んもー、94年の締めくくり&95年の幕開けに相応しく、えらいステキな内容でした。フミヤ先輩のハード極まりないプレイをはじめ、ケン・イシイ、卓球、YO-C、TOBYさん……もう全部が素晴らしくって感激。完全にブチ切れたわたしなんかは、前日のイエローでの疲れ(マイク・ヴァン・ダイクよかったよね、ライブ)も忘れ、総勢約20名で恒例のいそぎんちゃく(命名TOBY氏)[※注2]を披露し、街中の嫌われ者となる始末。楽しいなあ、もう。
その晩、関西から遊びに来ていた友達と話題になったのが、途中で効果的に使われていたシャボン玉。YO-CのDJには超ピッタリで、JONNY-Lがかかったときなんてあんまり綺麗でハッピーなもんだから思わず涙腺緩みましたが、それに比べてフミヤ氏の似合わないこと!CUTIEやFINEやHOT-DOGや花椿(!)に載ったぐらい似合わなかったぞ。なんだかシャボン玉が邪悪なものに見えちゃったりして。
「皆さん、夏には野外でレイヴやりましょう。」[※注3]と嬉しいことを言ってくれた卓球様。更に嬉しいことに春にはフミヤ座長と合同でまた何かやるだなんて♡ってことはイベント名は「パラタブスラブ」だとか?まあ今年も場所を問わず、クラブ活動頑張りましょうね。

◎ele-king

野田努氏がフロッグマンを脱退したと聞いて、「ほれ見てみぃ、やっぱり〜」と呟いたのと同じく、確か9月に本人達の口から「もうすぐ出ます」と聞いたはずのテクノ雑誌が全然出ないもんだから、「そんなもんよ」と高をくくっていたら、あらまぁ出ちゃいましたよ。何よりその作りに驚いた!全面マック仕様の丁寧な装丁。「エレキングなんて恥ずかしくて買ってられっかよぉ〜」って人のために、レコードの間にさりげなく挟んでレジまで持って行ける(かどうかは知らない)良心的な12インチサイズ[※注4]。値段はまあそれなりだけど、想像以上の出来に大満足。
デリック・メイやケン・イシイのインタビューは興味深かったし、デヴィッド・ホームズが載っていたのも嬉しいし、江口寿史さんの批評も面白いし、情報量も豊かすぎるぐらいに豊か。だけどそれ以上にぐっときたのが、ケンゴさん[※注5]のラブ・パレード(行く!行く!絶対行く![※注6])の記事。あまりのスバラシさに3回も読み返しました、わたし。テクノ関係のライターの中では、文章力は彼がいちばんでしょう。適度な情報と簡潔な言葉で受け手として得たものを送り手として与える役目を見事に果たしている。軽薄な表現かもしれないけど、本気で感動しちゃいましたよ。だてにあのひとすじの髪の毛を耳に引っ掛けて踊ってません[※注7]。
いや褒めすぎたかもしれないけど、やっとTVブロスを超えるテクノ雑誌が出来たことはいいことだよね、ホントに。

◎CISCO TECHNO SHOP

1月2日の出来事です。天国でもあり地獄でもあった3日間のおつりが風邪というかたちでやってきて、もう体はボロボロではあるものの、やっぱ悲しい性ですね、休みの日にはレコード屋に行かないと気が済まない。ということで、お年玉でホクホクの学生達に睨みをきかせ、渋谷まで足を運び、当たり前のごとくCISCOテクノ店へ。
しかしTABの前(12月31日)に来たときと品揃えが変わっているわけがなく、どれもあまりピンとこない。それじゃ店内の音をチェック!と思ったら、DJ中の店員さんが流してるのはWANTEDの1番目[※注8]。あー来なきゃよかったかも、これから買う2枚だってハズレかもしれないのにさ……と悲観的になったわたしの耳に、何やら日本語の女性ボーカルの歌声が。なんだ今の小室哲哉な音は。気のせいか、と無視したところに大音量で流れてきたのは「イェ〜イ、イェ〜イ、イェイ、イェイ、イェ〜イ、ウォ〜ウ、ウォ〜ウ、ウォ〜ウ、ウォ〜ウ!」というあの曲。呆気にとられていると、その奥から聴こえてくるバンジョーの音はもしや……。さすがテクノ屋さん、差別がありません!なんとTRFとTHE GRIDを混ぜてるぅー!とっさに店内を見回したときの、他のお客さんの平静を装った顔ったら!笑ってるのはわたしとレジの星川さんのみ。そんな状況を前にしたらなんだか気分が晴れてしまい、そのままレジで用を済ませ、宇宙百貨のあたりまで鳴り響いているTRFを背に浴びて、家へ帰りました。
うーん、いいお店だ。

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・でたっ。噂のPULSEMAN(FROGMAN・005R)はもうっ、我らがアイドル、NINJAHEAD[※注9]がズバ抜けてスバラシイ。これを聴くと体中の細胞が喜ぶのがよくわかるほど、超ガッツンガッツンな音。去年の『DRAGON』といい「恐竜戦車」(ロバート・アルマニかと思ったよ)といい、この人ホント冴えまくってるなあ。DOVE LOVES DUBもチョッキーズ・チューンからリリースするらしいし、こりゃ帝王ですね。

・日本ものでもう一つ。久しぶりのとれまからはHITIAN TWIN「JAJUVKA」(TOREMA・009)。これはもしや、話題のTRIP HOP(呼び名変えません?)というもの?A3のDRUM MIXはダスト・ブラザーズ[※注10]にも通じるバカっぽさ(失礼)が超ステキ。B面のLAST FRONT MIXもいいよん。あと現時点でまだ聴けてませんが、フミヤ番長の新曲&CONFUSIONのLAST FRONT MIXは何やらスゴいらしい。

・そしてハード・ハウス路線のレーベルまでTRIP HOP(書いてて恥ずかしい)に手を出してます。BUSHは片面1曲のみのキレイなブルーのレコード「(It's not)a mans world」(品番なし、「TEST」だって)で、音はあの辺のクールな感じでセイバーズのアルバムに入っててもおかしくなさそう。でも高い。それからFORCE INC.の「TEMPLE TRAXX」(FORCE INC.074)はやや明るめ。まあカッコいいことはいいけどオリジナルな感じで頑張ってくださいよ。この辺りを聴いているといかに「JAILBIRD」、「VOODOO PEOPLE」のダストMIXがスゴいかがわかる。でもLA FUNK MOBはいいよね。

・先月、再来日したパワフルマン・スヴェン。最初のうちは「あれ?去年より上手くなったかな?」と思ったけど、やっぱり繋がない。それでいいんだけどね。しかしこの日(20日)は多量のスモークのせいか、やたら空気が悪くて体がベタベタ。とてもフロアに長時間いられず。帰り際にトイレに入ると、外からやかましくドアを叩く人がいる。「うるさいな〜、もう」と眉間に皺寄せ顔で出てみると、スヴェンが「ハロ〜♡」と待ち構えていた。う〜、かわいい。

・暇なときはあんなにかわいくて愛おしいテクニクスSL-1200MKも、忙しいときはとてつもなく鬱陶しい。やっぱCDって便利。だから朝は某日本人アーティストのアルバムか、FORCE INC.のコンピ『RAUSHEN8』で目ェぱっちり。やはりマイク・インクさんでしょお!「RESPECT」も「NEW JACK CITY」も入ってるもんね。マイクさんは最近のPROFANというレーベルの4番もグー。仕事中に「RESPECT」をアカペラで歌いながら、足踏み鳴らしてる自分が情けない。

・プロモオンリーの2番もCISCOに再入荷してたSCRの1番、DOGTRAX「IN 2 DEEP」を入手。2番の「RIDE」と同じく過剰なまでのビヨビヨなA1は、何故か家でもクラブでもなく青空の下で聴きたいと思ったんだけど。他の曲はあまりにもシカゴを意識しすぎてイマイチかな。このレーベルはこのままずっとビヨビヨでいってくんないかしら?

・THE GRID来日ですって。「SWAMP THING」も「CRYSTAL CREAR」も大好きだけど、でも23時までで5500円って、そりゃないでしょう。夜通しやったれ。

・DISTORTION続報。1月12日は予定していたマイク・ヴァン・ダイクのライブが急遽中止にはなったけれど、割と人も多く(いつもよりね)、フミヤ師匠が6時間ぶっ通しでDJをやるという逆スペシャルな内容でなかなかでした。終了後、フミヤ会長にこのペーパーを渡したら、「なに、自分で作ったん?」と喜んでもらえたが、それは内容をよく読んでないが故。怒ったかな。ところでこのペーパー、どうも田中フミヤネタが多い。さすが母親に田中フミヤという人の追っかけやってる、と勘違い(?)されてるだけある。いっそのこと田中文也(漢字で書くとすごくフツーだなぁ……)ペーパーにしてしまおうか、と今考えてるんですが、それこそ怒られますかね?

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◎鯖


デジビ11号によると、わたしは最近超ノリノリらしいの。よくわかんないけど嬉しいなぁ。だけどもっとノリノリなのが、わたしの隣で紹介されてた木村早苗ちゃん。現在DUBにくびったけのテクノ少女で、何を隠そうわたしの文通相手。そんな彼女がロケッツ軍団仲間と共に大阪テクノを盛り上げるかの如く、「鯖」(なんて関西ちっくなネーミング!)というミニコミを始めたそうな。
内容のほうは「クラブ・ダイアリー」や「とれまイベント特集」など、全国推定1500人の田中フミヤギャル(わたしを含め)も絶叫の本場関西の味。「いいな〜楽しそうだな〜」と言いたくなっちゃう、まるで三角公園前のたこ焼き屋のようにデリシャスな匂いがプンプン。向こうは全体の規模は小さいものの、東京なんかよりよっぽど土台が出来上がってるし、独特のパワーがある。前に大阪に行ったときに感じたカルチャー・ショック……。クラブが終わった早朝5時。決して綺麗とは言えないがステキなライブハウス、難波ロケッツの前に座り込む若い男の子や女の子の集団。そこに向かって「皆さん早く帰りましょう〜」とニコニコしながら手を振るフミヤ会長。あんな光景がイエローで見れたことか!ふとそんなことを思い返してしまうような感じ。
お友達ごっこなノリじゃなく本当に面白いので興味のある方は是非。キヒラさん特集もやってね♡

◎シカゴ

素材、って言葉を最近よくテクノのお偉いさん達が使ってる。シカゴなんかのレコードはほとんど素材なんだそーな。なるほど、それはよくわかる。よくわかるんだけど、もういい加減にしてくれよおってカンジ。DJの方が言うんならまだしも、そうでない人までがみんな口を揃えて「これって素材モノだよね〜」だなんて。それってなんか、「このレコードはうちらが遊ぶ為に作られてるんだから、お前ら平民には到底理解できるわけがない代物だ。手ェ出すなよ。」と言われてるような気になるのはわたしだけ?[※注11]別にいいじゃん、料理用のチョコレート食べたってさぁ。食べ方次第で美味しく消化できることだってあるんだし。そんなこと言ってたら何にもレコード買えなくなっちゃうよ!で、これまた悪循環なことに、偉い人の言葉をそのまま自分の考えとして語り出すリスナーなんかが出てくるからうっとおしい。そんな暇あったらもっとレコード買え!クラブで踊れ!ついでにカンケーないけど、イエローの2Fのカウンターの態度の悪い店員は早く田舎へ帰れ!
だってテクノって自由な音楽だ、とか言ってませんでしたっけ?それにしてはあまりにも柔軟性が無さすぎるのではないでしょうか。その考えが、というより、それに大多数の人が素直に同意して喋ってしまうということが。DJの人にはわからない、わたしらなりの聴き方だってあるのに。それすら認めてもらえない状況じゃ、いつまで経ってもシーンなんてものが出来上がるわけがない。楽しみ方なんていくらでもあるんじゃなくて?
シカゴ情報誌こと「デジビ 」の少し前の号では、「DJの部品を音楽と勘違いして聴く異常性は私達にとって絶対必要」と述べられていました。頼もしい。その考えには大いに賛成します。

◎RICHIE HAWTIN

10月のデヴィッド・ホームズ以来すっかりご無沙汰だったクラブ・ヴィーナス。しかし待った甲斐もあり、今や時の人、リッチー・ホーティンさんをお招きってことで、ワクワクしながらこれまたご無沙汰のリキッドルームへ向かいました。しかし、どうしたもんでしょう、あの人の多さは。だってMEGA DOG[※注12]だってあれしかいなかったのにだよ?リッチー・ホーティンはSMAPのメンバーじゃないぞ!(歳は同じくらい?)わたしにはクラブ・ヴィーナスのファンが増えたとも、あれ全部が東京のテクノ人口だともとても思えません。
そのせいでわたしも色々とあり、中に入れたのが深夜2時過ぎ。既にプラスティック男はDJ中。「踊らせてくれる」なんてどこかに書いてあったけどホンマかいな、と思っていたら、いやぁほんとに踊らす踊らす。「SPASTIK」がかかったのかどうかすらわからないくらい無心で踊り続けました。オリジナルっていうのはアレですね。あんなDJ聴いたことなかったし。そしてその後のフミヤ先生のDJにドキムネ♡やっぱり一緒にプレイする人の影響大なんでしょう。めちゃくちゃ良かった。日本にもこういう人がいてくれるのはありがたいことだと改めて感激。
ところでこのフライヤーは京都のマッシュルームのものなんだけど、これが赤くてカッコいい。しかも京都はキヒラ氏&リッチーで1ドリンク付3000円!く〜、まったく羨ましいもんですわ。
(つけたし。ヴィーナス、3月デリック・メイ⁉︎久保さんやる〜)


※注1:石野卓球がリキッドルームで行っていたパーティー「TAB」の年末スペシャル版。

※注2:フロアで盛り上がりすぎたあまり、側にいる人達を巻き込んで手を繋いで輪になる現象が起きてしまい、TOBYさんから「いそぎんちゃく」と名付けられた。かなりの迷惑行為。

※注3:この年の夏に富士急ハイランドで「NATURAL HIGH」という野外イベントが行われた。

※注4:結局12インチサイズだったのは創刊号のみ。

※注5:EX.KEN=GO→。現在は渡辺健吾。

※注6:有言実行。半年後のラブパレードに本当に行ってます。

※注7:当時、前髪をひとすじだけ長く伸ばしていたケンゴさん。踊るときはその髪が邪魔らしく、耳に引っ掛けてステージ上で踊っていたことに衝撃を受けての記述。これを読んでフミヤが大爆笑してた、とエレキング誌上で紹介された。

※注8:EMPIRIONの「NARCOTIC INFLUENCE」。なーつかしー!EMPIRIONは「QUARK」もクラブヒットしてた。

※注9:石野卓球の変名。他にMANGA HEADなどもあった。

※注10:シュガースウィート1号にも書きましたが、のちのケミカル・ブラザーズのこと。

※注11:被害妄想が酷い。でも当時は電気グルーヴ経由の新しいテクノキッズ達にはなかなか風当たりが強く感じることが多くて、最後のデジビの発言には救われたことを覚えています。

※注12:94年11月にリキッドルームで行われたパーティー。エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスがDJで初来日したが、その割に空いていた。

☆この号はその後ele-kingで紹介されたこともあり、在庫が私の元にも1枚しかないレアな号です。
とにかくGIANT TABは90年代テクノにまつわる思い出の中でも屈指の出来事で、数年後にCRUSINGというサイトにてフライヤーと共に振り返っています。こちら→(https://note.mu/sugersweet0416/n/n4686307b70ef)
カウントダウン直前に卓球が「CONTE DE FEES」をかけたことも、フミヤさんが自分のDJのはじまりにTHE KLFの「WHAT TIME IS LOVE」をかけた瞬間の盛り上がりも、今でもはっきりと覚えている。

★最後の注釈以降の文章は2019年現在の追記です。

(SUGERSWEET第2号 1995年1月)

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