PORK

「PORK」なんてアホな名前ですが、打ち込みでありながら素朴かつ味わい深い独特な音をずっとリリースしているイギリスのハルのレーベル。いいチルものが揃っているところってレーベル単位ではあんまりないのですが、ここだけは毎回期待を裏切りません。どうやらこのレーベルでリリースしている作品のほとんどに関わっていると思われるスティーヴ・コビー氏、この人が重要人物です。

**Mess/Fila Brazillia **

PORKの看板、ファラ・ブラジリアの3rd。去年の夏はどれだけこれを聴いたことか…。前2作より生っぽい穏やかなムードで、曲の良さもさることながら、全体の雰囲気が素晴らしく気持ちがいい。最高傑作と絶賛された4枚目に比べてあまり評価されていない気もするが、私の96年の洋楽No.1であり、フィラ・ブラジリアのベストだと思っている。去年自分達の曲ばっかりかけるCDJライブ(とほほ…)で来日した時にサイン貰ったのって私たちぐらいだったかも。めちゃ陽気な2人だった。

Erectric Hush/Heights Of Abraham

フィラのスティーヴ・コビー氏の別ユニットで、男性ボーカルを含む3人組ハイツ・オブ・アブラハム。バンドっぽかった昔の作品よりも、ボーカルを控えめにした今作の方が歌ものの良さが引き立ち、よりリラックスできる内容となっている。ジャズの要素はもちろん取り入れられているけれど、清々しい風の吹くような透明な音なのは、やっぱり田舎発の音だからでしょうか。のんびりしたい時にはピッタリな一枚。田中フミヤ氏も勧めてました(しかしキューティーで勧めてどうする)。

How About Some Ether/Solid Doctor

これまたスティーヴ・コビー氏のソロ・ユニット、ソリッド・ドクターの93〜95年の作品を集めた2枚組CD。彼の流行に流されない確実な音作りと、そこから生まれてくるツボをおさえたグルーヴ感には絶対なにか理由があると睨んでいたら、昔ファンク・バンドをやっていたとは…。1日1曲作ってるとかなんとかだし、もういい歳だろうに、ピュアな人だ(農夫という噂はホント?)。ちなみに実験的なBより、テンポ遅めでしっとりとしたAがお気に入り。でもハイツ・オブ・アブラハムといい、何故ジャケがデザイナーズ・リパブリック?

Bridging Two Words/Baby Mammoth

Bullitnutsに続いてフィラのアルバムと、去年の冬は立て続けに暗い音をリリースしていたのでPORKはずっとその路線なのかなと思っていたら、今年の初めに出たこのアルバムはわりと明るめな印象。1曲目がPORKにしては少し速めのブレイクビーツだったりイメージ的にはフィラの3枚目と似ているが、守備範囲内で多彩なことをやるあたりがリスナーを飽きさせない秘訣だと思う。久々のヒット。メンバーのクレジットの記述はないけれど、Bullitnutsもこれもコビーさんの仕業でしょうか。


☆たまに聴くならこんな曲♪

『A Zed And Two L's』/Fila Brazillia

フィラ・ブラジリアのファンの人にフィラの曲の中でいちばんの名曲は?と尋ねたら、多分ほとんどの人がこの曲を挙げるだろうと思う。曲調もお馴染みの統一されたトーンに途中テンポの早いブレイクビーツが入ってくる文句のつけようのない出来だけれど、やはり決め手はあの民族っぽい歌声。喋っているようにも唱えているようにも鼻歌にも聞こえる小さな声が何度も現れては消え、穏やかな気分をくすぐるように心地いい。

(SUGERSWEET9号 秘密のチル・アウト特集 1997年7月)


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