コーネリアスについて話す会 後編
前編はこちら
→コーネリアスについて話す会 前編
(前編より続き)
※ここでマーコールデリの店員の大八木さん登場
大八木 様子みながらですが参加しまーす。一応いま、コーネリアスの曲を…。
(店内のBGMで“夢の中で”が流れる)
大久保 あ、ほんとだ!ありがとうございます。
大八木 本日は皆さま、当店をご利用いただきありがとうございます。今日は、あ、若い方も…。
大久保 40代も(笑)。
大八木 位置的に僕はいちばんいい位置の、たぶん真ん中の世代ですね。
うぃずやま いまYONCEの話をしてたんですよ。
照井 高校生の2人に、「当時のコーネリアスと小沢健二を今の人で例えるとどんな存在だったか」っていう話をしていて…。
マキコ うん、やっぱり近いのはYONCEな気がする!
大八木 はいはい。なるほど。YONCEは近いかもしれないですね。
大久保 そうですね。ファッション的なアイコンとしてもだし、コーネリアスもCMに出たりしてたし。
うぃずやま 象徴的なことでいうと、「HEY!HEY!HEY!」に小沢健二が出て、そのあとにコーネリアスが出たんだけど、コーネリアスの時のダウンタウンのツッコミは「おまえ誰や」と(笑)。『69/96』の頃だから、悪魔の格好をしてビデオカメラを回してて。
一同 ああー(笑)
照井 「なんかヤバい奴きたでー」って。
一同 (爆笑)。
大久保 ちょっとオタクっぽさがあるんですよね、コーネリアスは。
うぃずやま 小沢健二を街で見かけることはなかったけど、小山田圭吾はよく見かけたから。渋谷の宇田川町とか中目黒とか。
マキコ そうそう。だいたい彼女と…(笑)、
大久保 私も中目黒で1人で歩いてるのをよく見かけました(笑)。あ、そうだ。大八木さんのコーネリアスとの出会いを聞いておこうかな。
大八木 コーネリアスのソロとしては、さっきおっしゃってた悪魔の、ツノが生えてた頃に深夜のケーブルテレビで見て、あのボーダーでギターをシャカシャカやってたさわやかな人がどうしちゃったんだろう?って思って(笑)、でもあんまり興味はなかったんですけど、高校生の頃に『Fantasma』がすごい流行ったんですね。僕の高校生の頃ってみんなA BATHING APEとか裏原とかがリアルタイムで、そいつらがみんな一斉に『Fantasma』って言っていたんですよね。僕はその頃はシューゲイザーとかトリップ・ホップに潜り込んでいたので正反対の音楽だったんですけど、『Fantasma』は一応とおっていて。“Star Fruits ”“Surf Rider”の2枚を同時にかける友達もいないから、ひとりで実験して。
一同 (笑)。
大八木 でもやっぱり僕は『Point』がものすごく好きで。『Fantasma』も聴いてたんですけど、僕の中ではドラムン・ベースがあったうえでの音楽だったので、『Point』はもう小山田さんのほうが先をいってる音楽、そんな音楽は僕の中でなかったですから。大学の英語の先生がコーネリアスを好きな方で、初めてできた大人の友達で、そういう思い出もあって好きなんです。それ以降の『Sensuous』ももちろん聴いてますし。
大久保 『Sensuous』の話がねー、あんまり出てないんですよ。
うぃずやま いちばん出てないかもね。
大八木 『Sensuous』の最後のアナウンサーの棒読みの「お時間がない場合は全曲同時に再生したこちらをお楽しみください」っていう、ああいうセンスとかは好きですね。
うぃずやま 『Sensuous』はいちばん完成度が高いとは思うんですけどね。
大久保 音を極めているし、作品としてはいいんですけど、このまま芸術家になっちゃうのかなあ、っていう雰囲気があったので。
大八木 皆さん、今日は新譜についてはどんなかんじでトークされたんですか?
③Mellow Wavesの中で好きな曲
大久保 新譜について!(よくぞ聞いてくれた、というかんじで)『Mellow Waves』はどうでした?…私はもう、まず“あなたがいるなら”ですっごくびっくりしました。『Fantasma』ぐらいの衝撃でしたね。
みい 単純にいい曲いっぱいあるなあ、みたいな。確かに“あなたがいるなら”にはびっくりしたんですけど。
うぃずやま “あなたがいるなら”は衝撃でしたよね。そうだ、みい君ってバンドをやってるんですよね?あの曲、譜割りとれます?
みい いや、無理ですよね。ライドシンバルの譜割りがおかしくて。
うぃずやま おかしいでしょ?で、さっき言った、レッドブルのイベントで、ダウのパラデータで見せてもらったんですけど、あれ結構オン・グリッドなんですよ。そんなにずれてない。要するに、リズム・ガイドになっているハットがないから、見失うんですよね。あれ?って。
大久保 なんかずれた不思議なかんじになりますよね。“あなたがいるなら”って、先にシングルとして7inchで出たじゃないですか。今までいろんな音楽を聴いてきた中でも、あのレコードに針を落として聴き始めた瞬間の感覚は、もうこれ一生忘れないんじゃないかというぐらいびっくりして。あまりにも予想してた音じゃない音がドンってきたから、衝撃的で。それに全てをもっていかれましたね。『Mellow Waves』自体もすごく好きなんですけど、“あなたがいるなら”が1曲目じゃなかったらまた違う評価だったかもなあ、っていうぐらい好きです。
マキコ うんうん。
(大八木さんは忙しそうな店頭へといつの間にか戻ってしまった)
うぃずやま 『Mellow Waves』はこの時代なのに、いやこの時代だからこそか、すごい曲順にこだわってますよね。あれ1曲目が“未来の人へ”だったらまた印象変わると思う。
大久保 この夏のライブの曲順は“いつか/どこか”から始まって、最後に“あなたがいるなら”だったから、一般的に考えたらそれが綺麗にまとまるかんじの曲順なんだろうけど、あの“あなたがいるなら”を最初にもってきて、次に全然違う“いつか/どこか”を次に置いちゃいっていうのがねえ。
うぃずやま 思ったところにこない感はアルバム全体を通してありますよね。“いつか/どこか”なんて“あなたがいるなら”を聴いたあとだと結構ふつうに聴こえるけど、あれはあれで譜割りおかしいでしょ、っていう。『Fantasma』の頃はあからさまに人間じゃできないフレーズを出してたけど、『Mellow Waves』はできそうなんだけど、できない(笑)。「サウンド&レコーディング・マガジン」のインタビューで言ってたけど、最後の“Crepuscule”もギターで弾けないフレージングを狙ってやってるらしくて。弾こうとすると、いま響いてる弦をもう一回弾かなきゃいけないらしい。
一同 へえー。
うぃずやま あと、パラデータを聴かせてもらった時に思ったのは、歌うまいんだなって(笑)。そう、この機会に若い2人に聞きたいんだけど、小山田圭吾と小沢健二って初めて聴いたとき、歌うまいと思いました(笑)?
伊勢 ああー。でもあんまり歌が上手いとか下手とか、気にしないんで。
みい 正直あんまり上手いとは思わなかったんですけど、音楽で聴いてたんで。特に音源になってるものはちゃんと歌ってるし。オザケンを聴いた時は声が細いな、とは思いましたけど。
伊勢 あ、でも『Camera Talk』に入ってる“Summer Beauty1990”は、最初に聴いたとき、女の人の声かと思いました。『Fantasma』の最後の曲も声が高いですよね。
うぃずやま 結構あれですよね、フリッパーズの2人は歌うまいか問題は…。
大久保 うーん、上手いかって言ったら…。でも私、“あなたがいるなら"はあんな歌い方を今までしなかったから、すごくドキッとして。
マキコ そうそう、いいよね。なんか色気がある。
大久保 最近はずっと音としてというか、わりと感情のないような歌い方をしていたので、こうきたか、こういう驚かせ方なんだ、みたいな。やっぱり自分の歌詞じゃないとできる歌い方なのかなあと思って。
うぃずやま 坂本慎太郎の歌詞はデカいですよね。坂本慎太郎の曲って結構タナトスが強いじゃないですか。コーネリアス名義じゃなくて小山田圭吾が作ったアルバムとしては『s(o)un(d)beams』が1番好きなんですけど。salyu ×salyuが歌うっていう前提があるから自分では歌わないメロディだし、作詞も他の人に頼んでるし。アルバム全体として多様な、一番のびのびやってる気がするんです。他の作品で好きなのありますか?例えば『デザイン あ』とか…。
みい 『デザイン あ』ぐらいからソロ・ワークスの主軸でやってるところ以外での音色って、一緒のが出てくるじゃないですか、水滴音とかクリック音とか。そういうのが面白いと思います。
うぃずやま それは美島さんが意図的だって言ってた。そのこころは「バイオリンは誰が弾いてもバイオリン。」だって。聴いたことのある音をコンポジションで勝負するっていう意図らしい。
大久保 へえー。なるほどね。みいさんは『Mellow Waves』の中で好きな曲は?
みい “夢の中で”が一番好きです。聴きやすくてポップっていうのもあるんですけど、僕、徳島でラジオをやってて(*アプリで聴けるそうです)、そこで流したりもしてます。左右にトレモロがバーッてくるのが、ああいう仕掛けは小山田圭吾ならではっていうかんじがしますね。でも“HELIX/SPIRAL”も好きです。あまりコーネリアス自体はちゃんと聴いてなかったんですけど。小沢健二がずっと好きだったので。
大久保 なんで小沢健二はそんなに若い人達の心を掴むんでしょうね。私がツイッターでフォローしてる方々にも若い小沢ファンがわりと多いので、そこにもすごく興味はあるんですけど、ま、今日はコーネリアスなので。
一同 (笑)。
うぃずやま じゃあ次回は小沢健二で(笑)。
大久保 いや、小沢健二ファンは信仰が強い人が多いから難しそうですよ…。そうそう、「別冊ele-king コーネリアスのすべて」にも書いてあったんですけど、どういう人がコーネリアスを聴いていると思うか、っていう質問に対して小山田君が「音楽を重度に好きな人達」って答えるんですけど、本当にそうだと思って。コーネリアスを好きな人ってコーネリアスのファンなんじゃなくて、音楽が好きな人達なんですよね、多分。そこが良くて。
うぃずやま コーネリアスって小沢健二と違って、歌詞の中にストーリー性はないですからね。『The First Question AWard』ぐらいじゃないですか、取って付けたように物語があったのは。
(残念ながらみいさんはここで退席。徳島まで帰っていきました。感謝!)
④“あなたかいるなら”の「あなた」とは誰か
大久保 そう、これが聞きたくて。“あなたがいるなら”の「あなた」って、誰だと思って聴いてます?
一同 …(無言)
うぃずやま …子供。
大久保 やっぱり子供?なんかね、私、男の人って「子供」って思う人が多いんじゃないかなと思ってて。
うぃずやま なんで俺が子供かなって思ったかっていうのは、「みんなきみをすきなんだ」って言うでしょ?そういう発想を異性に対してしないっすよ、男は。それと「あなたがいるなら」ってつまり「僕はすでにいない」っていう説があって、それは面白かった。坂本慎太郎っぽいじゃないですか。違うだろうなあとは思うけど(笑)。
照井 GREAT3の片寄さんが赤ちゃんが生まれて、この曲を聴いたら泣いちゃったって言ってて、僕もその気持ちはよくわかりますね。
大久保 やっぱりそれ、男の人の目線じゃないかと思う。私は子供に対して「せつない」みたいな感情は全くないので。むしろ疲れちゃうけど、って(笑)。
マキコ あはは(笑)。だよね。
照井 現実問題(笑)。
伊勢 “あなたがいるなら”ではないですけど、“未来の人へ”の歌詞もいいですよね。
うぃずやま 『Mellow Waves』ってジャケの中林さんの話もそうだし、元LUSHミキさんの参加っていうのもあるし、血流みたいなイメージがあって。血を継いでいくというか。“あなたがいるなら”も“未来の人へ”も、何かを残していくっていう歌だし。私小説ですよね。
大久保 …私は11年ぶりのアルバムだし、“あなたがいるなら”で心を奪われてしまってるので、完全に小山田圭吾のことだと思って聴いてるんですけど。コーネリアスがいるなら。
うぃずやま 自分で自分のことを歌ってるってこと…?(笑)。
大久保 いや、聴いてる私の捉え方ですよ。買って聴いたら私のものですから、それは(笑)。マキコさんはどう?
マキコ うーん。いろいろ考えてるんだけど、答えが出ないような。ぼんやりしてる。あいまいだけど。
照井 僕は最初、ミーハーな気持ちで、みんなが噂してる人なら小沢健二を当てはめても面白いなあって思って。あとは「あなた」がフリッパーズでも面白いかなとか。ま、でも小山田圭吾って特別な存在だなあと思って小山田圭吾かなとも思うし。自分の生活の中で考えるとやっぱり子供かもって思うので、片寄さんの泣いちゃう気持ちもわかりますね。
大久保 どうにでもとれるような歌詞ですからね。いい曲って答えがひとつじゃなくて、それぞれの解釈がありますからね。
照井 伊勢君はなにか考えた?
伊勢 いや、特に誰とかないんじゃないかと思って。っていうかあんまり、なんも考えてなかったです(笑)。
大久保 (笑)じゃあ最後に、コーネリアスは次はすぐアルバム出すと思います?
うぃずやま 多分ムービーとライブ・ツアーのパッケージは出すんじゃないかと思う。
マキコ アルバムはすぐ出る気がする。この間やってたNHK WORLDの番組で言ってませんでしたっけ?もうちょっとリリースの間隔を空けないように、みたいなことを。だから勝手に期待してる。
大久保 ああー言ってたね、11年も空けたら還暦になっちゃうからそれはマズイよね、みたいなことを(笑)。
伊勢 俺、今高2なんですけど、『Sensuous』の発売時ってまだ幼稚園とかですよ。『Point』の発売時がまだぎりっぎり0歳で、『Fantasma』の頃は生まれてないです。
大久保&マキコ わー!そっかー(笑)。
伊勢 この間の7月のリキッドルームのライブに行ったんですけど、整理番号が早くて、一番前の真ん中で観て、こういう(見上げる)かんじで、いちばん近くで観たんです。
大久保 すごい。しかもいちばん若かったんじゃないですか、その場所で。
伊勢 多分。
一同 (笑)
照井 向こうも驚いたんじゃないかな(笑)。
大久保 そうか。私たちみたいに順に追っていくんじゃなくて、そうやって違う出会いかたをしてみたいなあとも思いますけどね。
うぃずやま あと息子がデビューしそう。かつて彼女をアーティストにしたてた前科があるので(笑)。
一同 あー、しそう。
大久保 公私混同系ミュージシャンですから…(笑)。そんなかんじでしょうか。じゃあ、とりあえずこのへんで。今日はどうもありがとうございました。
★同じ内容の質問をこの会に参加していない方々にも聞いてみました。
記事はこちらから。
→コーネリアスについてのアンケート その1
場所提供:武蔵境ond(オンド) 東京都武蔵野市境南町3-2-13
こだわりの惣菜屋と珈琲屋 年明けから武蔵野市初のクラフトビール屋を稼働予定
【参加者プロフィール】
みいともき@tomoblur
2001年、徳島県生まれ。現在高校1年生。小3の頃から楽器と作曲を始め、小6の頃から宅録を始める。中2の頃からバンドを組み始め、現在はNebo、LENSのメンバーとして活動中。また徳島のコミュニティFM局、エフエムびざんにて「三居知暉のグルーヴラジオ」(毎週木曜、19:00~) も放送中。
伊勢健人@_kentoise_
2000年生。絵描き。昨年夏、THE COLLECTORS -30th Anniversary Session-「愛ある世界」のイラストレーションを手がける。
うぃずやま@wish_mountain
音楽雑誌編集(アシスタント)→ 音楽配信サイト運営。いまは音楽と関係のない分野で糊口を凌いでます。テクノ専門学校、未来型音楽レーベル講座卒業。
照井葉風@flippersblog
個人的な遊びで、ディスクガイドZINE「SOMETHING ON MY MIND」を発行している、普通の会社員。第2弾「渋谷系特集」の販売先はTwitterアカウントからご確認下さいませ。http://flippersguitar.blogspot.jp/2017/09/zinesomething-on-my-mind.html
マキコ@zakisawaaa
40代、女性。珈琲と音楽があれば幸せ。夫と娘と三人暮らし。
大八木
武蔵境ond内のマーコールデリ勤務
趣味 宅録
大久保祐子@sugersweet0416
かつてシュガースウィートというミニコミをひとりで作っていました。18年ぶりにele-kingでレビューを書いているとかいないとか。
※今回の会の飲物代は、8月に別の無料noteを公開した際に支援して頂いた方々の課金を使わせて頂きました。本当にありがとうございました。
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