JAZZY

「この曲なんかジャズっぽいね〜」という言葉を口にするということは、みんなジャズという音楽がどういうものかわかってる。優れたジャズのレコードなんて探せばいくらでもあるだろうということも。でも、私たちがジャズを聴いていないのはどうして?答えは単純。だって私たちが聴きたいのはジャズじゃなくてジャジーなんだから。

Boulevard/St Germain

各方面で話題になった、Fコミ発のサンジェルマンの95年の傑作アルバム。ジャジーもそのはず、生楽器を全体的に贅沢なほど取り入れていて、そこらのジャジーなハウスが子供っぽく聞こえるほど。ミニマルな曲やダビーな曲、最後はトリップ・ホップ風だったりと、トーンを変えずに退屈させない仕上がりが一流っぽい。クラブから帰ってきた後、ベッドに入るまでの間によく愛聴してました。このディープ過ぎないほのかに漂う洒落た香りは、やはりフランス人ならではなのかも。

Tales Of The Unexpected/Dave A ngel

デイヴ・エンジェルのいろんな音楽への憧れが滲み出ているようなファースト・アルバム。どこがジャズなんだ、と言われれば確かにそうだ。後半なんて全然ジャズじゃない。でもどこかジャジーだ。出てきた瞬間の雰囲気や、音のキレやセンスの良さとか、そういうものが間違いなくその時代の求めていたジャジーそのものだった。だけど洗練されて大人っぽい感じじゃなくて、デイヴらしいピュアな音が何より魅力的な名盤だと思う。BPM速めのものより、断然こっちが私の知ってるデイヴ・エンジェル。

Gling-Glo

詳しいことはよく知らないけど、90年頃に出たビョーク参加のジャズ・アルバムだそう。ビョークのセカンドの“I'ts Oh So Quiet”が16曲入ってると思っていただければいいと思う。しかしあの人の声ってほんとオリジナル。歌って普通、その曲の魅力を十分に引き立たせる為に使われることが多いのに、彼女の場合は全く反対。すべての音があの声を包み込んでいる感じ。ビョークの歌は一緒に歌って気持ちいいようなものではなくて、完全に聴くための歌だ。

球体の奏でる音楽/小沢健二

日本のヒットチャート・ポップスだからって、馬鹿にできるわけがない。筋金入りのジャズ・ミュージシャンを迎えて奏でられた無駄のない音作りも絶品だけど、さらりと乗せられた言葉の重要性に感嘆してしまう。歌を口ずさむことは最高のリラックスの証拠だし、歌って気持ちいい言葉の陳列の具合って絶対あると思う。そして全8曲25分の短さで聴き終えた後に物足りないと全く感じさせない充実度は、並大抵の力量ではない。でもすごくのびのびとしてて、なんかハーバートのドクター・ロキットに近い感じなんだ。

☆たまに聴くならこんな曲♪

Karafuto/Karafuto

ご存知田中フミヤ氏の、CD化が望まれる名曲。B面のタイトル通りファンキーな2曲に対して、こちらは淡々としたジャジーな渋い曲。リリースされた96年の冬、上のサンジェルマンやデイヴ・エンジェルとともによく本人が廻していて、あの頃はクラブに行っても何にも無かったけれど、この音だけは午前2時の空気の中に確かに存在していたという証拠がある。寒くなったらまたクラブでも聴きたい。樺太っつうぐらいだし。

(SUGERSWEET9号 秘密のチル・アウト特集 1997年7月)

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