ANDREW WEATHERALL

90年代の始まる頃にイギリスのスターだったアンディー・ウェザーオールがいつの間にか地味になっていた。でもそれはおとなしくなったというより、冷静な目と音楽に対する好奇心を持った者の正しい行く先だったと思う。今年(97年)に入ってウェザーオール復活、と騒がれたけれど、混沌とした時期にあのダークな音が生まれたように、今までだっていつだってウェザーオールは時代のBGMであったような気がする。

Morning Dove White/One Dove

プライマルに続くウェザーオールのバンド・プロデュース業。「エイドリアン・シャーウッドになりたい」としきりに口にしながらダブ・ミックスを繰り返していた時期の中でも特に傑作で「Screamadelica」に通じるロック〜ダブ・チル・ロックの構成に色気のある女性ボーカルがハマってグッド・トリップ。よく晴れた日の昼間に何もしないで聴くのが幸せ。アロマテラピーよりワン・ダヴ。しかしバンドは解散。

Haunted Dancehall/The Sabres Of Paradise

ワン・ダヴのアルバムの6曲目をそのまま拡張したようなしぶ〜い(くら〜い?)曲調オン・パレードのセイバーズ・オブ・パラダイスのセカンド。先に「Wilmot」が出た時はびっくりしたものだ。このテの音がトリップ・ホップと呼ばれるようになったのはここからで、ウェザーオールのためらいのない切り替えの早さと流行を自ら作ってしまう才能を妬む人もいたよう。全体的に漂う哀愁の背景を考慮して、恋人と別れた時にお勧め。

The Fifth Mission(Return To The Flightpath Estate)/Two Lone Swordsmen

96年秋に久しぶりのウェザーオールのアルバムとしてリリースされたのがこのトゥー・ローン・スウォーズメンという新ユニット。相変わらずウェザーオールならではの低めのトーンだけれど、エレクトロの要素の強い乾いたダブという新しい試みで、これがまた何でたいして話題にならなかったのかと疑問に思うほど聴ける1枚(いや、2枚組)。ほんのりと男くさくてサイコー。そしてまた、この後に出たこのCDの曲のリミックスを含んだアルバムが更に良い。ハウスで独走してます。

Stockwell Steppas/Two Lone Swordsmen

前作「Swimming Not Skimming」から間髪入れずに続くエレクトロ・ダブ・ハウス路線。俄然調子出てきてる感じで嬉しい限りです。最近の彼の音はディープでありながらも人をわくわくさせるような、何となく幸先の良さそうな匂いを醸し出していて目が離せない。ジョン・ライドンを通過していない世代にも届いた、進化し続けるロックのかたち。ウェザーオールが特別な人間であるという人ならば絶対に気に入るであろうアルバム。それ以外の人はどう聴くのでしょうか。

☆たまに聴くならこんな曲♪

Percy X Versus Blood Sugar/−3

彼女のニナと別れてSabres Of Paradiseを辞め、新しいレーベルEmission Audio Outputを始めたアンディー。もっぱら深〜いダブの海へと沈んでいた頃にポンと飛び出すように浮かんできたのがこのSOMAのPercy Xのリミックス。セイバーズとトゥー・ローンの隙間を埋めた音で、低迷期の中では文句なし。でもこれ、オリジナルもすごく良いです。ところでこのブラッド・シュガー名義はどうなったの?


(SUGERSWEET9号 秘密のチル・アウト特集 1997年7月)

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