第2話【なぜ、お前は生きている?】
おばちゃんが死んでから3年が経った時、
私は18歳になっていた。
私は東京に出て、片っ端から社長と言われる社長に会いにいった。
「俺は、ビッグになりたい!」
我武者羅にそう伝えたら、社長が私にこう問いかけた。
「お前にとってのビッグって何なんだ?」
「 、、、、、。」
その時、私は、言葉が出なかった。
「そんなんでお前どうやったらビッグになれるんだ」
そのとおりだった。
18歳の頃の私は、勢いだけで、自分の人生について、考えていたようで、真剣に、深く、考えた事がなかったのだ。
物心ついた時から、両親がいなく、唯一の母親代わりだったおばちゃんが死んで、とにかく必死で生きてきた。
何でもいいから、とにかく感謝を、何かで示したかった。
おばちゃんに、成長したところを見せたかった。
「帰っていいぞ。」
私は、カフェをあとにした。
トボトボと歩きながら、駅に向かう途中、私は涙が溢れた。
悔しかったのだ。
おばちゃんに見せる顔もない。
私は、あれから何が変わったんだ?
何か変わることが出来たのか?
何も変わってなかった。
とにかく、悔しくて、悔しくて、涙を堪えながら家に帰った。
家についてから、ひとりで考えた。
『私は何がしたいんだ?』
親がいないってだけで、私のことを馬鹿にして虐めてきた周りの奴らを見返したい。
血も繋がってないのに、私のことを自分の子供のように可愛がってくれたおばちゃんに、恩返しがしたい。
でも、私には何ができた?
おばちゃんが死ぬ前に、私は何をしてあげられた?
ただただ、迷惑をかけて、
ただただ、助けられた。
私は、おばちゃんに何もしてあげられなかった。
悔しい気持ちが一気に込み上げてきた。
『俺は何がしたいんだ?』
一晩中考えた。
だが、その時の私には全くわからなかったのだ。
【バイトの店長】
東京に出てきた私は、中華屋でアルバイトをしていた。
店長は、物腰柔らかで、とてもいい人だった。
子供が2人いて、綺麗な奥さんがいた。
私は店長の子供が羨ましかった。
休みの日には、家族で公園に遊びに行ったり、奥さんとデートしたり、
次の日必ず、店長は、嬉しそうに私に話してきた。
店長には、私の事情なんて話してもなかったし、話す必要もなかったから、その時私がどんな気持ちだったかなんて考えてもなかっただろう。
そんな店長に言われた言葉で、今でも覚えている言葉がある。
『たかし、お金はな、お金よりも大切なモノを守るためにあるんだよ。重要ではないが、必要なんだ。』
幸せそうな店長の家族の姿を見てたから、店長の言葉には説得力があった。
それを言われた日、家に帰ってから、また必死にひとりで考えていた。
「お金は、お金より大切なものを守るためにある、か…」
孤独に過ごし始めてから20年が経とうとしていた。
【家族】
店長の奥さんは、本当に綺麗な人だった。
名前は、マナさんって言った。
私にも分け隔てなく優しくしてくれた。
バイトが終わったら、マカナイを作ってくれて、いつもお腹いっぱい食べさせてくれた。
ある時、奥さんに聞いた事がある。
「マナさんはどうして、店長と結婚したんですか?」
奥さんは、少し照れながら言った。
「あの人ね、顔はカッコ良くはないけど、どんな時だって、私たちのことを一番に思ってくれてるのよ。自分のことは大事にしないもんだから、心配になることもあるんだけどね…!」
素敵な家族だなって思った。
こんな家族の子供は幸せなんだろうなって、また羨ましくなってしまって、思わず私は、
「…羨ましいです」
奥さんは、少しビックリしてたが、何かを察したのか、
「たかちゃんも、私達の家族みたいなものよ。主人、いつも言ってるのよ。たかちゃんは、俺が絶対に一人前にしてやるって」
「だから、たかちゃんカッコいい大人になってね☺️」
マナさんは本当に綺麗な人だった。
外見はもちろんだが、心が綺麗な人だった。
一点の曇りもなく、私に向けられる満面の笑顔に、私は胸が熱くなったのを覚えている。
「ありがとうございますっ、、ご馳走様でした」
私は、バイト先をあとにした。
【いつものように…】
いつものようにバイト先に行ったある日、
いつもは笑顔で話しかけてくる店長の顔が曇っていた。
「なんかありましたか?」
店長は、無言だった。
その日は、マナさんはいなかった。
その日の店内は空気が凄く重かった。
3ヶ月くらいして、
私はいつものようにバイト先へ向かった。
その日は、何か分からないけど、胸騒ぎがした。
バイト先に着くと、店長が店を開けてなかった。
店に入ると、店長が奥のテーブルで座って俯いていた。
「店長!どうしたんですか!」
店長はすぐに立ち上がり、顔を背けて、
「たかちゃんすまんな、こんなところ見せちまって」
「全然いいですよ、どうしたんですか?僕で良かったら話してください、ここ最近店長おかしいですよ」
店長は黙りこくっていた。
だが、30秒くらいの沈黙の後、口を開き、
「俺にはマナがいねぇとよぉ…」
私は、ドキッとしたが、状況が理解できなかった。
「マナさん何かあったんですか!」
店長は、また重い口を開き、
「マナ…、肺ガンなんだ。」
え…?
「3ヶ月前に発症してよ、、今は病院で治療を受けてんだ。隠していてごめんよ。でも、毎日苦しんでるマナを見てるとよお、、もうどこかに行っちまいそうで、頭がおかしくなっちまいそうなんだ、、、」
治らないんですか!?
「俺だって、治してやりてえよ。だが、今、俺にはまともな治療も受けさせてあげられる金がねぇんだ。」
私は心が張り裂けそうになった。胸が熱くなって、心臓の音がバクバク聞こえてきた。
「俺の貯金も、!全部!使っていいですよ!!!60万はあります!!何とかしてマナさん助けましょうよ!何とかならないんですか!!マナさん死ぬなんて俺、ぜったい嫌ですよ、、!」
「そんなんじゃたりねぇんだよ!!!!治療費で700万!店も赤字続きで、金なんかありゃしねぇ。俺だって、助けてやりたいよ、あんなに苦しんでるマナを見てたら、、、でも、どうする事もできねぇんだよ!!!」
僕は何も言えず、立ち尽くしていた。
その後しばらくしてから、店長は店を飛び出して行った。
【2度目の人生の転機】
あれからしばらくして、店長は店を閉めた。
私はバイトを続けられるわけもなく、店長の紹介で、他のバイト先に移った。
「私のことを一人前にしてやる」と自信満々で言っていたあの時の店長の姿は、もうどこにもなかった。
店を閉める時の店長の背中が、少し、小さく見えた。
2ヶ月後、
マナさんは亡くなった。
お葬式で、ひさびさに店長に会って、ガタイの良かった店長の姿は跡形もなく、ひどく痩せ細っていた。
凄く、しんどかったんだろう、と思う。
痩せ細った店長を遠目で見てたその時、
ふと、店長の言ってた言葉を思い出した。
『お金は、お金よりも大切なものを守るためにある』
『お金は、重要じゃないが、必要だ』
果たして
店長は、大切なものを守れたのだろうか?
店長は、後悔のない人生を歩めているのだろうか?
店長は、幸せなのだろうか?
その時、私は思ったんだ。
『確かに、世の中お金が全てではないし、お金があれば、幸せになれるわけでもない。たけど、お金があれば、お金があれば、、、”守れる幸せの数”は増えるんじゃないか?』と。
これが、私が金を稼ごうと決意した原点であり、
弱冠20歳。石油王人生の始まりである。
【お前らに伝えたいコト】
お前ら、
お金がなくても幸せって感じたことあるか?
私もある。私もあるぞ。
お金がなくたって、貧乏だって、私は幸せだった。
ばぁちゃんと出会って、、
店長とマナさんと出会って、、
私にはお金はなかったが、毎日幸せだった。
だがな、
本当にそうなのか?
って、じっくり考えてみたんだ。
お前らにも今日、一度でいい、一度でいいから、
後悔してほしくないから考えてほしいんだ。
お前の小さな幸せ
お前の守りたい幸せ
ってのは、何なんだ???
なぜ、お前は生きている?
なぜ、お前はお金を稼いでいる?
もし何かあった時に、お前は、
大切なものを守れるヒトになれてるか?
コレだけはお前らに伝えたい。
毎日通勤電車に乗って、仕事に行くサラリーマン。
旦那の帰りを待ち、家を守る主婦の方。
なんとなく学校に行きサークルで遊び呆けてる大学生
一度、考えてみてほしい。
お前が今、お金を稼ぐことに妥協したら、
お前の周りの大切な人の人生も妥協することになるんだ。
私はそれが嫌だった。
私にとっての幸せは、
私の周りの人が笑顔で、幸せでいることだ。
だから、今日も、私はカネを稼ぐ。
今日の私のお話は、
ただの私の人生の1ページに過ぎない。
だが、今の私が、
あの時の若かった私に伝えたいメッセージだ。
どのようなキッカケでお前らがこのメッセージを読んでくれてるか、それは私にはわからないが、
お前らの人生の何かのキッカケになれたら嬉しい。
私のつまらない身の上話に
最後まで付き合ってくれてありがとう。
🎰石油王🎰
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