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#2「ご冥福を」つぶやきは善か偽善か…答えを提示してくれた: i (西加奈子)

こんにちは、すがっしゅです!
マガジン『ソラニン』第2回となります。今回は、映画ではなく小説をご紹介します。

さて、ところでです。今年は本当に厄年ですね。
自然災害が立て続けに日本を襲いました。

まず今年6月、大阪(私の地元です‥)は大地震に見舞われましたね。
地面が割れ、家が崩れ、モノが倒れ…多くの被害を出しました。幸い怪我はなかったですが、私の家族が被災。実家はぐちゃぐちゃだったそうです。

そして今月は、強力な台風が近畿を襲いました。1時間で100ミリもの雨が降った地域もあったそうですね。Twitterのタイムラインに流れていた湖が、関西空港だと気づいた時は血の気が引きました。


★芸能人の「ご冥福」つぶやき、どう見ていますか?

大規模な自然災害が発生した時、SNSでコメントする芸能人の方がいらっしゃいますよね。「ご冥福をお祈り致します」と。

このSNS上のつぶやきに、
「偽善だ」
「イメージアップを狙ってるだけだ」
「災害を利用するな」
「言葉だけじゃ意味がない」
など、わざわざ批判してくる人がいます!
特に印象的なのは、「当事者でもないのに、知らない人が死んでも関係ないだろ」「被災者の気持ちなんてわからないくせに」という言葉。

被災者への祈りをSNSで発信することは、偽善なの?
という疑問を持ったことがある方へ、オススメしたいのが今回の小説、
西加奈子さんの「 i 」です。


★どれだけ自分が非力でも、心を痛めればいい。

今年の震災もそうですが、多くの人が亡くなる大規模な自然災害が起きた時、私は、この小説「 i 」を思いださずにはいられません。

「 i 」は、ニュースで報道される自然災害・戦争の死者数を毎日ノートにメモしてしまう、一人の女性が主人公の物語です。
「○○人が死亡、○○人が意識不明の重体です。」っていうあの報道ですね。この人数を、彼女は思わず数えてしまう。素通りすることができない。

紛争地域・シリアで難民の子として生まれ、日本人夫婦にすぐ拾われた後、養子として育った彼女。だからこそ、世界中の「死」を見逃すことはできなかったんですね。

不幸にも死んでいく人たちがこんなにもいて、母国シリアでは紛争でこんなにも人が死んでいる中で、「自分はたまたま選ばれてしまった・免れてしまった」という意識を持ってしまいます。
自らの幸運が、恵まれた環境が、恥ずかしい。幸せだからこそ苦しい。
でも、死んでいった人の苦しみがある中で、私なんかが苦しんでいていいのか…災害であれ、紛争であれ、渦中にいたことのない自分が?

そうやって自己嫌悪に陥る彼女に、ある時、親友が言います。
「でも世界中で起こっていることに、胸を痛めていたんでしょう?」
「誰かのことを想って苦しいなら、
 どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと思う。」と。


例えば地震なら、被災経験のあるなしなんて関係ない。純粋に自分が心を痛めている分だけ、苦しめばいい。被災者の苦しみは被災者だけのものだけど、その苦しみを想像して、思いを馳せて、一緒に苦しめばいい。

そうすれば、実際の力がなかったとしても、その苦しみ・祈りが
誰かに伝搬して、他の誰かが被災者の苦しみを考える余地になって、
被災者の心を少しだけでも救うことができるのではないか。

そんなメッセージを伝えたい作品なのかなと思っています。
そして、本当にその通りだと思いました。


★「祈る権利」は誰にだってあるはず

話を戻します。
私は、SNSで祈ることを批判することに、意味は全くないと思っています。

被災者の気持ちを想像し、寄り添おうとする意志は、尊いはずです。
その媒体がSNSだからといって、批判したり、ボランティアの方が偉いと思い込んだり、偽善だと言って逆手にとるのは、本当にやめてほしいなと思います。
実際の力がないとしても、その祈りは必ず被災者の心を救うはずです。

逆に、何も経験していない自分なんかがSNSで投稿していいのか‥とためらっているあなたには、ためらうことなんてないと伝えたいです。あなたの心が痛んだだけ、行動すればいい。
被災経験がある方が、被災者の気持ちをより想像できることは事実だと思います。ですが、だからといって心の痛みに優劣があるとは思いません。

祈る権利は誰にだってあります。


西加奈子さんの小説「 i 」。読んでみてください。西加奈子さんの文章は、力が強い、本当に。パラパラっと読み直すだけで泣けてくる一冊です‥。
うまく説明できてないので笑、もっと詳しく語りたいところですが、長くなるのでこの辺で。

以上、「ソラニン」第2回「 i 」でした。
読んでくれてありがとうです!

ではまた!

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